クルーガー氏は、ワコムで行っている製品開発フローも紹介した。クルーガー氏は「テクノロジーを先に作るのではなく、ユーザーが製品を使ってどう思うのかをまず考える」というワコムの開発姿勢を紹介する。実際の製品開発では、技術的なブレークスルーの前に、ターゲットとするユーザーのニーズを調査し、その結果から求められる機能を確定したうえで、新製品に実装する機能の検討と、その機能を導入するために必要となる技術的要素を決定する。
次いで、製品デザイン(このデザインには、使い勝手を向上させるための工業デザインの側面も含まれる)を考案して、新製品シリーズの中で主力となるモデルの試作を行う。試作品をベースにして、生産コストの抑制、動作チェック、実装する機能の確認といった検証作業を進め、その結果を反映させてシリーズ全モデルの最終デザインも決定していく。
この製品開発フローには、技術スタッフが集まる開発セクションのほかに、全世界市場の製品企画を統括する「グローバルプロダクトマネジメント」と、国や地域の市場で製品プロモーションを実施する「プロダクトマーケティング」が参加するほか、外部の工業デザインチーム「Ziba」も加わる。この中で、グローバルプロダクトマネジメントチームは、開発に関わるすべてのチームの“ハブ”として機能し、ユーザープロファイルの策定や実装する機能の検討と決定を行い、経営幹部の了解を得たのちに、初めて開発部門との技術的な検討やZibaとの製品デザインの立案段階に入る。
技術主導ではなく、グローバルプロダクトマネジメントチームが中心となってユーザーニーズから決定した製品企画をベースに技術的課題を解決していくワコムの開発体制も、「ユーザー主体」というワコムの思想を現しているといえるだろう。
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