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» 2009年11月10日 18時00分 UPDATE

次は「キーボード付けて」――クリエイターD[di:]が語る「Intuos4」活用術

従来比2倍の筆圧レベルや刷新したユーザーインタフェースを携えて登場したワコムの「Intuos4」を、クリエイターはどうとらえるだろうか。イラストレーターのD[di:]氏が、実演を交えてIntuos4の魅力や使い方を語った。

[山田祐介,ITmedia]

 ワコムが2009年4月に発売した「Intuos4」は、前モデル「Intuos3」の2倍の細かさを誇る2048段階の筆圧レベルや、ユニバーサルデザインを取り入れたインタフェースが特徴のクリエイター向けペンタブレットだ。発表から約半年を経て、アニメーションスタジオといった“プロの現場”に同モデルが導入されているのを、テレビや雑誌で見た読者もいるだろう。

 プロのクリエイターにとって、Intuos4はどのようにとらえられ、どう使われているのか。ワコムが10月27日に開催した説明会では、イラストレーターのD[di:](ディー)氏が、作品制作の過程を実演しながらIntuos4の魅力や使い方を教えてくれた。

photophoto 初代Intuosからワコムのペンタブレットを使っているD[di:]氏。普段は、MacとIntuos4を使って作品を仕上げている。ソフトはPhotoshopとPainterを利用している。デモンストレーションは、液晶ペンタブレット「Cintiq」を“単なるディスプレイ”として使うという、何とも贅沢な構成で行われた

photophoto マンガ、イラスト、小説と、D[di:]氏は幅広いジャンルで作品を生み出している。絵画や文章、そしてファッションなど多彩な手法で自分を表現するD[di:]氏の“道具”の1つがワコムのペンタブレットだ

 D[di:]氏は初代「Intuos」を購入して以来、ワコムのペンタブレットを使っており、Intuos4の筆圧感知機能は初代から「比べものにならないほど進化している」と振り返る。しかし、Intuos3と比較したIntuos4の魅力は、筆圧レベルよりむしろ“書き心地”にあるようだ。Intuos4は、“紙”の役割を果たすオーバーレイシートの表面が滑りにくいものに変更され、従来より紙に近い書き心地を実現している。さらにD[di:]氏はペンの芯に摩擦係数の高い「エラストマー芯」を使うことで、自分の好みに合わせているという。ただ、滑りにくい芯は摩耗が早いために芯の減りも早いのには若干不満があるようだ。

 Intuos4から搭載されている有機ELディスプレイも、同氏にとって重要な改善ポイントだという。Intuos3を使っていたときは、ファンクションキーに「何を設定したか」が分からなくなり、設定内容をシールに書いてそれぞれのキーの部分に張っていた。Intuos4では、キーの横に配された有機ELが設定内容を表示してくれるため、そうした必要がなくなったそうだ。ちなみに、ファンクションキーに割り当てる機能はアプリケーションごとに設定が可能で、有機ELにはソフトウェアに合わせた設定内容が表示される。こうした利便性は、自前のシールでは補いきれない部分だ。

photophoto シールの張られたIntuos3(写真=左)。Intuos4では、替え芯がペン立てに内蔵されており、この点もD[di:]氏の“お気に入りポイント”だという(写真=右)

 D[di:]氏は、ショートカットを素早く使うための機能「ラジアルメニュー」をカスタマイズし、作業効率のアップを図っている。ラジアルメニューとは、ファンクションキーを押すことで現れる円形のポップアップメニューのことだ。これを使うと、ショートカットをペンの操作で素早く行える。メニューの内容はカスタマイズが可能で、階層化することでたくさんのショートカットを利用できる。D[di:]氏は自身が多用する色調やトーンカーブ、選択ツールといった機能をメニューに割り当てていた。

photophotophoto デュアルディスプレイで作業しているときにも便利なラジアルメニュー

 カスタマイズという点では、筆圧機能の調整も重要だ。D[di:]氏はPhotoshopやPainterを「ゴリゴリに使って」作品を描いていた時期もあったものの、出来上がった作品が「どのソフトを使ったか、見る人が見れば分かってしまう」ため、現在では鉛筆や水彩といったアナログな画材で絵を描き、色の調整やコラージュなどにデジタルデバイスを活用している。しかし、デジタルデバイスでの描画が必要なときや、レタッチなどには、やはり筆圧に対する細かいレスポンスが必要だ。筆圧の感度を自分の好みに合わせて調節すれば、描写のダイレクト感も増すだろう。それだけに、カスタマイズしたペンに慣れると、「人のペンタブレットを使うとやりにくい」のだとD[di:]氏はいう。

 制作のデモンストレーションでは、D[di:]氏が多用するコラージュの手法が紹介された。まず紙に鉛筆などで描いた動物などのイラストをスキャナで取り込み、コラージュの素材として使うために対象を投げ縄ツールで切り抜く。自動選択で対象をうまく選択できないときは、手作業で選択範囲を調節するが、こうしたときにペンタブレットの繊細さが必要になるという。

 またD[di:]氏は、PCに絵を取り込み、彩度を落とした上でプリントアウトし、アナログで着色するといったことも行っている。一度プリントアウトすることで、色を塗る際に鉛筆の線が汚くにじむのを防げるのだという。

 さらに、色鉛筆で描いた部分をスタンプツールで模様のように敷き詰めていくのも、よく使うテクニックだという。デジタルでは表現が難しいアナログの質感をD[di:]氏は大切にしているが、一方で、自分がアナログで描いた作品の一部を“素材”としてコピーし、ペンタブレットを使って自然な質感を持った“デジ絵”を生み出していた。

photophoto 紙に書いた絵を投げ縄ツールで選択し、コラージュの素材にする(写真=左)。背景の模様は、スタンプツールが使われている(写真=右)

 クリエイターの想いを実現すべく、筆圧機能やユーザーインタフェースを向上させてきたIntuosシリーズだが、今後はどんな進化を遂げるのだろうか。D[di:]氏は、今後のIntuosに「キーボードがあるといい」と感じている。ファイル名を入れたり、より多くのショートカットキーを使えるようになるからだ。また、ブラックに統一されたIntuos4の本体色を変更してほしいとも。「微妙な色を扱っているときに、コントラストの強いIntuos4のボディが目に入ると、引き寄せられてしまう」のが、その理由だという。

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