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第1回 キヤノン「PIXUS」の売れ筋プリンタ3台を比較するプリンタ09-10年モデル徹底検証(5/5 ページ)

» 2009年12月18日 18時45分 公開
[榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia]
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プリント/コピーのスピード

印刷速度テストの結果
製品名 MP990 MP640 MP560
PCからA4普通紙モノクロ印刷(JEITA J1)
標準:3 4秒3 6秒3 6秒9
速い:4 3秒4 3秒7 3秒8
PCからL判写真フチなし印刷(独自画像)
詳細設定:1 1分30秒2
きれい:2 34秒1 37秒9 1分07秒5
標準:3 15秒7 15秒8 30秒1
L判写真フチなしダイレクト印刷(独自画像)
きれい 41秒0 47秒1 1分14秒1
標準 21秒3 21秒5 35秒8
A4普通紙カラーコピー(独自画像)
標準 27秒3 28秒5 29秒4
PCからA4普通紙自動両面印刷(JEITA J9)
標準:3 2分58秒1 3分00秒1 3分31秒2
速い:4 1分58秒4 1分59秒8 2分48秒3
テストに使用したPCのスペック CPU:Core 2 Duo E8400(3.0GHz)、マザーボード:ASUSTeK P5KPL-CM、チップセット:Intel G31 Express、グラフィックス:チップセット内蔵(Intel GMA3100)、メインメモリ:3Gバイト、HDD:Seagate ST3500320AS(7200rpm)、OS:Windows XP(SP3)

 プリンタの快適さに直結する出力速度をテストした。テストはA4モノクロテキスト、L判カラー写真、A4カラーコピー、自動両面印刷の4パターンで行っている。計測した時間は、PC接続の場合、複合機で用紙が引き込まれた瞬間から、排紙が完全に終了する瞬間までだ。ダイレクト印刷の場合は、印刷ボタンを押した瞬間から、排紙が完全に終了する瞬間までとしている。

 テスト結果は右表に示した通りだ。A4モノクロテキスト印刷では、JEITA規格のプリンタ用標準テストパターン「JEITA J1」を用いた。印刷モードは標準(標準:3)と高速(速い:4)モードの2通りを試している。結果は、どのモードも非常に速い。印刷品質は高速モードでも、他人に渡すならばともかく、自分で使用するならば問題ない程度の品質が得られる。ただし、MP560でも両モードの開きは3秒程度なので、印刷枚数がよほど多くなければ、素直に標準モードを常用するのがベターだ。

 L判カラー写真ではPCからの印刷と、標準的なSDメモリーカードからのダイレクトプリントの2パターンを測定した。PCでは最高画質から3段階までの設定(詳細設定:1/きれい:2/標準:3)で計測、ダイレクトプリントでは最高画質から2段階までの設定(きれい/標準)で計測を行っている。

 印刷したデータは独自のデジカメ撮影画像(600万画素)、メディアはキヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]を使用した。ちなみにMP640とMP560の印刷設定で光沢プロ[プラチナグレード]を選択すると、印刷品位の最高設定「1」がグレーアウトし、「きれい」モードが最高画質となる。表中でMP640とMP560の最高画質を計測していないのはこうした理由からだ。

 計測結果を見ると、これまた全モデルとも不満のないタイムを叩き出している。最も遅いMP560でも、高画質設定で1分そこそこのタイムなので、ストレスを感じるほどではない。ダイレクトプリントはデータの処理時間も含めたタイムだが、タイムの上積みは10秒以下と優秀な結果を残した。

 A4普通紙カラーコピーでは標準モード(標準)のみを測定した。印刷品位の項で触れたように、原稿によっては高速モード(はやい)でも使用できるものもあるが、大半のニーズに適合するのは、標準以上のモードと判断したためだ。コピー元のデータは独自のデータを利用した。

 結果は全機種とも30秒弱のスコアと高速だった。テスト前には、プリンタヘッドのノズル数が少ないMP560は恐らく30秒オーバーだろうと失礼な予測をしていたのだが、うれしい誤算だった。

 自動両面印刷のテストには「JEITA J9」(全5ページ、両面で2ページ半)のテストパターンを使用している。印刷設定は標準(標準:3)と最低画質(速い:4)の2パターンを試した。結果は、MP560以外は最低画質で約2分、標準で約3分で印刷が完了している。まだ速いといえるほどではないが、2008年モデルに比べて30秒ほどスコアを縮めている。エンジンスペックに変更がなかっただけに驚いたが、搬送機構などを見直したのかもしれない。

 もう1つ、動作の静音性にも注目したい。これら3モデルは印刷時の動作音を抑える「サイレントモード」を備えている。印刷速度は若干落ちるものの、その効果は絶大だ。キヤノンによれば、単純に音が小さくなるだけでなく、動作音が低音域になるように調整しているとのこと。印刷中だけでなく、給紙や排紙時の音までも静かなので、印刷していることを忘れてしまうほどだ。

 なお、印刷を繰り返して気になったのは、前面給紙カセットの仕様だ。PIXUSのペーパーハンドリング機構は従来から不満がないものだったが、新モデルではローコスト化の影響か、どうも装填がしにくい。今回入手した評価機では、用紙のセットに手間取った結果、用紙の位置が内部でズレてしまい、ペーパージャムを引き起こすこともあった。

L判写真印刷のインク+用紙コスト

 ランニングコストもざっと見ていこう。下表にメーカーが公表しているインクと写真用紙の合計コストをまとめた。2009年はインクシステムに変更がないため、2008年モデルと変わりはないだろうと思っていたのだが、意外に動きがある。

L判写真印刷のインク+用紙合計コスト
製品名 MP990 MP640 MP560
インク/用紙合計コスト 約19円 約17.1円 約16.7円
測定に使用した用紙(直販価格) キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド L判 400枚(1990円)
測定に使用したインク(直販価格) BCI-321BK/C/M/Y/GY(各890円)、BCI-320PGBK(980円) BCI-321BK/C/M/Y、BCI-320PGBK(各890円) BCI-321BK/C/M/Y、BCI-320PGBK(各890円)
測定に使用した画像データ JBMS-78-2006 フォト標準テストページセット

 3モデルとも公称でのインク+用紙合計コストはまずまずだが、2008年モデルからは少し上昇した。MP990は1.1円上昇したが、2008年にMP980が発売されたときに2.3円さがったので、収支としては悪くない。MP640は2008年に続いて今年も0.4円上昇したが、約17.1円という数字はなかなかリーズナブルに思える。MP560はMP620の後継と見るか、MP540の後継と見るかで違ってくるが、前者であれば据え置き、後者だと光沢ゴールドでのインク+用紙コストは約15.4円なので1.3円上昇したことになる。

3モデルのうち、どれを選ぶべきか?

 以上、PIXUS複合機の注目モデル3台をチェックした。見た目はそれほど変わらないが、仕様強化は着実に進んでおり、特にMP560は2008年に比べて大幅なボトムアップがなされているのが分かる。大きな変革がないというのは、見方を変えれば仕様が練れた時期でもあるので、高性能かつ高機能の製品が比較的安価で購入できることを意味する。

 3モデルの基本的な設計は共通しており、価格によって性能や機能が少しずつ変わるので、すべてのユーザーにとってベストな1台を選ぶのは難しい。目安としては、万能型あるいは画質重視(特にモノクロ写真の品質)ならばMP990、性能と機能、操作性、価格の総合力ならばMP640、機能は欲しいが価格も大事というならばMP560、という選択になるだろう。

 次回はエプソンの最新モデルをピックアップする予定だ。


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