Windows 7と一緒にやってきた「毎日が日曜日」のアキバ2009年のアキバ事情(Windows 7以後)(2/2 ページ)

» 2009年12月31日 16時00分 公開
[古田雄介,ITmedia]
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11月〜12月:USB 3.0&SATA 3.0が注目を集め、Radeon HD 5970がレア度を高める

USB 3.0カード第1号となったTFTEC JAPAN「USB3.0 PCI-E CARD S19903」。初回の価格は5000円前後だったが、11月末にはビニール袋入りで2980円となった

 11月から年末にかけて対応アイテムが話題を集めたのは、新世代の汎用インタフェースとして注目されている「USB 3.0」だ。11月初旬にTFTEC JAPANのインタフェイーカード「USB3.0 PCI-E CARD S19903」が登場してから、外付けHDDやHDDケース、BDドライブなどが次々に登場した。

 パソコンハウス東映は「一般的に普及するのはまだ先だと思いますが、環境がそろいきっていない新しいインタフェースとしてはかなり好調に売れている印象です。USB 2.0の知名度の高さも手伝って、確実に普及するとみている人が多いんでしょうね」と話していた。USB 3.0は転送速度が最大5Gbps(理論値)でUSB 2.0の約10倍、バスパワー容量も900ミリアンペアと、1.8倍になっている。

 11月中にマザーボードでもUSB 3.0コントローラーを基板に実装するモデルが登場した。年末時点でギガバイトとASUSTeKからP55やX58マザー、Socket AM3対応マザーなどが出回っており、今後の主力モデルになると目されている。ただし、注目機能はUSB 3.0だけではない。ドスパラ秋葉原本店は「最大転送速度6GbpsのSerial ATA 3.0にも対応しているのが特徴です。こちらはまだ1台しか対応HDDが登場していませんが、今後ラインアップを増やしていくでしょう。SATA 3.0本来の性能がフルに使えるSSDが登場したら一気にブレイクする可能性がありますね」と語っていた。

 SATA 3.0対応HDDは、11月14日にシーゲートから2Tバイトの「Barracuda XT ST32000641AS」が登場しているが、年末時点でまだ潤沢に出回るには至らず、入手困難なレアモノとなっている。

 そして、年末に注目されたもう1つのレアモノが、Radeon HD 5000ファミリーの最上位となる「Radeon HD 5970」搭載カードだ。ファミリー内で唯一のデュアルGPU構成のモデルで、「HD 5870相当のGPUを2台搭載しています。性能も文句なしで、間違いなく現行最強のカードといえますね」(T-ZONE.PC DIY SHOP)。

 最上位モデルゆえに出荷数は少ないが評判を呼んで高い人気を得ているため、11月中旬に登場して以来「店頭に並べたら1時間も持たないです」(クレバリー1号店)と言われるほどの反響が続いた。年末時点では「店頭に並べて半日持つくらいになりました」(同店)とのことだが、入手困難なのは変わりない

ギガバイトのUSB3.0対応マザー(写真=左)。シーゲート「Barracuda XT ST32000641AS」。約3万円と高価なモデルながら、11月以降、複数のショップに問い合わせが多数寄せられているという(写真=中央)。SapphireのRadeon HD 5970カード「HD5970 2G GDDR5」。初回入荷時はTSUKUMO eX.で抽選が行われるほどの人気があった(写真=右)

買い控えの波が去って活況を迎えるが「まだまだ油断できないのが現実」

在りし日のBLESS秋葉原本店

 上記の通りにWindows 7は登場から大ヒットを続けているが、前評判が高かっただけに発売前の大きな買い控えも起こしていた。その悪い波は、9月末のBLESS秋葉原本店閉店の引き金になったのではともささやかれている。

 あるショップの店長は「BLESSさんは元々、賃貸料を安くするために店舗を移転したというウワサがありました。もとから苦しかったところに、大きな買い控えがきて耐えられなかったんでしょうね。9月末の決済のあとは10月のWindows 7特需が待っていたのに、あと一歩のところで息絶えてしまったということでしょう。老舗ショップだけにショックは大きいですが、半分くらいは予想できていました」と語る。

 BLESS秋葉原本店は2000年に秋葉原で営業を始め、2002年から7年間は中央通りと神田明神通りの交差点付近の好立地の場所に店を構えていた。2009年7月にロックビル2階に移った矢先に倒産して、姿を消してしまった。

 一方、Windows 7販売とタイミングを合わせるように店舗を移転したのが、フェイス本店だ。「石丸SOFT1」が入っていた神田明神通りのダイドーリミテッドビル1階に移転し、フェイス秋葉原本店に改名するとともに、同じフロアに系列ショップの「パソコン工房秋葉原本店」もオープンさせている。

 両店あわせて広大な売り場面積を確保しており、同店のスタッフは「いわゆるアキバ的でなく、ターミナル駅の家電量販店のような店内を意識しました。昔からご愛顧していただいている方はもとより、さらに幅広いお客様にご利用してもらえればという気持ちで、勝負に出た感じはありますね。店内にショースペースもあるので、メーカーさんのプチイベントも頻繁に開けると思います」と意欲的に話していた。その言葉通りに、移転後はさまざまなメーカーの店内イベントが開かれている。

 そうした好調なムードが漂うなかで、2009年5月にオープンしたGENO工房が、12月16日にリアル店舗を閉じてWeb販売専門店に移行すると発表した。一旦シャッターを下ろした同店は、12月後半に最後のキャンペーンとしてグループ店舗の中古品を含めた特価放出イベントを開催。スタッフは「隠れ家的なショップとして女性のお客様にもよく来ていただいていたのに申し訳ありません。ただ、店を閉じるといっても、Web販売に力を入れていくという方向転換なので、今後も見守っていただければと思います。またいつか秋葉原に戻ってこれたらうれしいです」と少し悔しそうに語っていた。

 残念な事例もあったが、Windows 7以降の電気街はそれ以前に比べて好景気なのは間違いない。12月8日、中央通りに「秋葉原総本店」をオープンさせたサンコーレアモノショップのスタッフは「観光客の方もたくさんいらっしゃいますし、アキバならではのアイテムをガンガン提供していきたいと思っています」と意欲的に語り、従来の秋葉原2号店とともに街を盛り上げている。ほかにも10月以降の売り上げの上昇をうれしそうに語るショップが多かった。

 ただし、それでも「油断は禁物」というのが今の秋葉原電気街の現状のようだ。元じゃんく屋わんねすの店長で、現在はU&J Mac's plusの店長を勤める芳野氏は「Windows 7が売れても、そこから自作市場にどれだけ需要が流れてくるかなんですよね。放っておいても売れるという時代はもう来ないですから、いかに質の高いサービスを提供していけるかが生き残るカギになると思います。高速電脳やBLESSのような個性的なショップがなくなるのは寂しいですが、残ったショップがアキバらしい個性を発揮しながらがんばっていくしかないでしょう」と語っていた。

10月22日にグランドオープンしたフェイス秋葉原本店。店内にパソコン工房との仕切りはなく、通り抜けできる(写真=左)。GENO工房の店内で12月19日から27日まで行われていた「GENO 青空市」(写真=中央)。中央通りにオープンした「サンコーレアモノショップ秋葉原総本店」(写真=右)

 連載「古田雄介のアキバPickUp!」では、今後の秋葉原を見守りつつ、自作の楽しさを伝えていければと思います。それではみなさん、よいお年を!

古田雄介のプロフィール

著者近影

アキバ探索から家電量販店取材、人気サイトの管理人さんインタビュー、デジタル関連記事の企画作成など、手広くやっているライター。4月ごろに豪勢な自作マシンを組んで、半分やけになりながら悦に浸ったのはいい思い出です。今はOSを64ビットのWindows 7 Ultimateに切り替えているので、購入時以上の快適さを発揮しています。でも、ゲームはマインスイーパーしかやっていません(→古田雄介のブログ


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