10万円を切る「ThinkPad X100e」は本当に“ThinkPad”なのか(2/2 ページ)

» 2010年01月05日 12時00分 公開
[長浜和也(撮影:矢野渉),ITmedia]
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ThinkVantageの精神はソフトウェアで継承する

ThinkPad X100eに導入された「Lenovo ThinkVantage Tools」のトップ画面。なお、ここから呼び出せる機能については製品版で変更される可能性もあるので注意されたい

 ThinkPad X100eは、コストを抑えるために従来のThinkPadシリーズが堅牢性を確保するために取り入れてきた炭素繊維強化プラスチックや、ThinkPad RollCageを使っていない。そのため、ThinkPad X100eのボディでは底面カバーと側面を構成するユニット、そしてキーボード面のカバーパネルのユニットを組み合わせた状態で本体の強度を確保する「3次元ハニカム構造」を導入するほか、液晶ディスプレイの天面をドーム形状にすることで、天面にかかる圧力から液晶ディスプレイを守っている。

 従来のThinkPadシリーズでは、ユーザーの使い勝手を向上させるために用意されたハードウェアとソフトウェアを総称した「ThinkPad Vantage」という概念が導入されていた。ThinkPad X100eでは、ThinkVantageを実現するハードウェアはコストを抑えるために省かれてしまったが、ソフトウェアについては従来のThinkPadと同様の機能が継承されている。

 その「Lenovo ThinkVantage Tools」には、Lenovo ThinkVantage Password Managerや同Rescue and Recovery、同Access Connectionなどが用意される。そういう意味では、サードパーティー製のソフトウェアを導入してThinkVantageに相当する機能を実現しようとしたIdeaPadシリーズより、従来からのThinkPadコンセプトを“正しく”継承しているといえる。

「Lenovo ThinkVantage Tools」で用意される「省電力マネージャー」(写真=左)と「Access Connection」(写真=右)

ThinkPadに採用されたAMDプラットフォームを“参考記録”でチェックする

■PCMark05
PCMark 1848
CPU 2076
Memory 2523
Graphics 1268
HDD 5053
■3DMark06 1280×1024ドット
3DMark Score 1042
SM2.0 355
HDR/SM3.0 435
CPU 614
■FF XI Bench3
High 3919
Low 2191
■CrystaDiskMark 2.2(Test Size:100Mバイト) リード ライト
シーケンシャル 80.80 6868.00
ランダム512KB 31.99 43.35
ランダム4KB 0.437 1.670
■CineBenchR10
Single CPU 1283
Multiple CPU 876

 ThinkPad X100eでは、AMDの低価格PC向けプラットフォーム(“Congo”という開発コード名で呼ばれていた時期もある)を採用することにも注目したい。なお、CPUはシングルコアのAthlon Neo MV-40(動作クロック1.6GHz)だが、チップセットがAMD 7シリーズの「AMD RS780」(グラフィックスコアにRadeon HD 3200を統合する)なので、「これは、Congoプラットフォームだ」と日本AMDのスタッフは説明している。

 CongoはインテルのCULV版CPUを搭載するプラットフォームに対抗するAMDの低価格ノートPC向けプラットフォームであるが、これまで、このプラットフォームを採用した製品は、主にヒューレット・パッカードのモデルに限られていた。ThinkPad X100e(とThinkPad Edge 13”)の採用で、ようやく日本でも選択の幅が広がったことになる。

 今回は、試作機レベルの機材でベンチマークテストを実行した結果を紹介しているので、参考程度にとどめてほしいが、AMDの低価格ノートPC向けプラットフォームがインテルのCULV版CPUをはじめとする低価格ノートPC向けのプラットフォームに対するアドバンテージとしてGPUの性能が挙げられる。また、Avivo HDによるHD動画の再生支援機能によってWindows 7でサポートされたH.264などが快適に再生できることにも注目したい。

ThinkPad X100eで測定したWindows Experience Indexの結果では、ゲーム用グラフィックスで4.9と高い値を示した(満点は7.9だが)

デバイスマネージャーで確認したThinkPad X100eの構成

CPU-Z version 1.52.2で確認したCPU(写真=左)とマザーボード(写真=中央)の仕様と、GPU-Z 0.3.8で確認したグラフィックスコアの仕様(写真=右)


 レノボ・ジャパン 取締役副社長 研究・開発担当の内藤在正氏は、ThinkPad Edge 13”の開発において「低価格になって多くのユーザーに安く提供できるようになっても、ThinkPadの信頼を失うことになってはどうにもならない。価格と信頼性をどのように両立させるかが最も大きな課題だった」と語っているが、これは、ThinkPad X100eでも同じだったという。いや、モバイルノートPCとして高い評価を得ているXシリーズの系譜になる(レノボ・ジャパンが想定するポジショニングは“SL”シリーズのモバイル版だが)ので、ユーザーの期待はいっそう大きいといえる。

 ThinkPad X100eは、6列配列のチクレットタイプキーボードやドーム形状の液晶ディスプレイ天面などの工夫で、RollCageや炭素繊維強化プラスチップといった高価な部材が使えない不利をカバーしている。AMDプラットフォームも、ビジネス利用で不足しないパフォーマンスを持ち、グラフィックス性能ではインテルプラットフォームの統合型グラフィックスコアを超えるパワーをユーザーに提供する。

 ThinkPad X100eは、内藤氏が願う「価格と信頼性の両立」を十分に実現しているといえるだろう。

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