ユーザー主導のMacworld Expoに人は集まるのか?Macworld Conference&Expo 2010

» 2010年02月11日 20時15分 公開
[林信行,ITmedia]

ちょっとさびしい「Macworld Expo 2010」

Macworldの垂れ幕はあるが、アップルの広告はiPod touchがあるだけ

 Moscone Westで開催中のカンファレンスは今日が2日目で、そこそこの人が集まっているというが、明日から開場の展示会場は、設営中ということもあってほとんど人を見かけない。例年であれば前日であっても、そこそこの人の往来はあるのだが、今年は視界に入るのが常に数人というレベルだ。

 2月8日に開催予定のShow Stopperというイベントも参加者が見込めなかったのか急きょキャンセルが決まり、10日に開催予定だったインディーズ・アプリショーケース(iPhoneの個人開発者によるアプリを紹介するイベント)も突如、中止が発表された。

 そんなMacworldで、唯一、人だかりを見つけたのはプレス向けのレセプションだ。モバイル関係のニュースに強い「O'Grady PowerPage」のジェーソン・オグレイディ氏や、WiredのWebサイトで「Cult of Mac」というコーナーを書き続けているリアンダー・カーニー氏といった著名ジャーナリストをはじめ、英国、ブラジル、中国などからも大勢のプレスが集まっていることが確認できた。プレスルームのスポンサーや、今回のExpoにあわせて新製品を用意していた企業も胸をなで下ろしていたことだろう。

 Expo展示会場の前には、例年おなじみの「FIRST LOOKS」という展示が行われていた。これはこのExpoでデビューする話題の新製品を一覧したものだ。

 見てみると、Macに詳しい人ならなじみのあるフロッグ・デザインの名がある。同社は「TVChatter」という、Twitterでテレビの話題について語り合うiPhoneアプリを開発したようだ。日本でもソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏とともに大勢の人がつぶやきながら視聴を楽しんでいる大河ドラマ「龍馬伝」のように、Twitterとテレビの相性は意外と高い。なかなか注目ができそうなアプリだ。

 もう1つ、目立っていたのはCarMD.com社の「CarMD」という製品。これは車のエンジンの様子などを診断するものだ。車の整備士が整備用データを取り出す際に使っているコネクタに直接接続してデータを取り出し、その後、それを自宅のMacにつないで、診断データを自分で見ることができるのだという。今のところ日本車には対応していないが、ちょうどプレスルームにいあわせた開発者に聞いてみたところ、かつて日本の自動車メーカーで働いていたこともあると語り、日本車への対応にも意欲を見せていた。

設営中のMoscone North Hall。例年は設営時から人の往来が激しいが、今年はそれすらもあまり見かけない(写真=左)。FIRST LOOKSでは約25製品が紹介されていた。もっとも、毎年ここで紹介されているのはMacworld主催者に宣伝費を支払った一部企業だけで、実際にはこれよりもかなり多くの新製品がある。ちなみに、多くの製品はショップの名前で紹介されていた。実際の製品はNewer Technologyなどだが、ショップが宣伝費を出していた、ということだろう。Macアクセサリーの世界ではしばしば販売店が製品のパトロンのようになっていることが多い。ドイツのDr.Bott社もヨーロッパや日本の周辺機器アクセサリーに米国進出の手助けをしている重要な販売店の1つだ(写真=中央)。Macworld Expoのオフィシャルグッズ販売店(写真=右)

 Macworld Expoの期間中はサンフランシスコの街がアップル製品の広告で埋まり、サンフランシスコの街全体が巨大なExpo会場になったような印象を与えるが、今年はMoscone Center Northの目の前にiPod touchの広告が出ているほかは、特にそうしたことはなかった。

「アップルの参加はたいした問題じゃない」

近くのマリオットホテルでは展望バーラウンジにて、Macworld来場者にマティーニを半額でふるまうサービスを行っていた

 しかし、すぐ近くのホテルにはMacworld Expo来場者を歓迎するバーラウンジなどもあり、参加証を見せるとカクテルを半額にディスカウントしてくれるなどのサービスを実施している。行ってみると、ニューヨークから私費でサンフランシスコを訪問中の女性、マイラさんに声をかけられた。

 彼女曰く「Macworld Expoはユーザーのイベント。アップルの参加、不参加は大した問題ではない」。彼女はテクノロジー・ジャーナリスト、レオ・ラポルトが主催するTWiTネットキャスト・ネットワークのパーティーの幹事をしており、今日はそのパーティーの会場の下見に来たのだと言う。

バーで会ったマイラさん

 彼女は続けて「ニューヨークは大雪だけれど、明日、基調講演を行うNew York Timesのデビッド・ポーグは無事に飛行機で移動できたのかしら」「さびしいと言われるイベントだけれど、アンディー・イナトコやレオ・ラポルトなどMac界の有名ジャーナリストも大勢集まり、有意義なカンファレンスが多数開催される。とても全部回りきれない」と喜んでいる様子だった。

 ニューヨークの大学で学校のWebページの製作を行っている彼女にとって、Macworld Expoは、今後どのような機材を購入したらいいかのアドバイスや、製作の際に知っておくべき情報を得られる貴重な場所だという。

マリオットのバーラウンジから見下ろしたサンフランシスコ。中央の建物はサンフランシスコMoMA。右下の旗が見える一角がMoscone Centerだ

 2002年まで日本で開催していたMacworld Expo/TOKYOも、全国のMacユーザーが集まり、こうした情報を交換する貴重な場所だった。しかし、Expoがなくなった後は、逆に全国でその土地土地のAUGM(Apple Users Group Meeting)というイベントが開催されるようになり、地域ごとに競って有名ベンダーを呼ぶなどして、それまでとは違った盛り上がりを見せている。いずれMacworld Expoがなくなったら、米国の熱心なユーザーたちも、同様に各地でイベントを開催するようになるのかもしれない。

 果たして2011年もMacworld Expoの開催はあるのだろうか。非常に気になるところだが、実は入り口の横断幕の裏側には「See you Next Year!」と書かれ、入場バッジの裏側には1月25〜29日という来年の開催日が記載されていた。

 Macworld Expo 2010、注目の展示会場の開幕はいよいよだ(日本時間の2月12日午前2時ごろ)。オープン時点での人の集まり具合が、同イベントの明暗を分けそうだ(機材協力:nikonnext.com)。

プレスバッジの裏に来年の開催日付が書かれていた

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