冒頭では高可用性、仮想化環境といった先鋭的な構成を想定したが、TS-809U-RPの性能の高さは逆方向のアプローチ、つまり、オールインワンサーバとして導入することも可能にしている。
オールインワンサーバとして最初に思いつくのはWebサーバだろう。TurboNASシリーズにはWebサーバ機能も含まれており、初期状態で作成されるQwebというフォルダがWebサイトのドキュメントルートとなる。ローカル環境であればWindowsファイル共有を使って簡単にドキュメントのアップロードが可能だが、データセンタやサーバルームなど、運用者と異なるネットワークにサーバを設置する場合はFTPなどの利用が必要となるだろう。
オールインワンサーバとして利用するなら、メールサーバ、DNSサーバなども考えられる。また、Webサイトを立ち上げたはいいものの、手作業による更新が煩雑、などの理由からCMSとしてブログソフトを使用したい、という要望が出てくるかもしれない。そのためにデータベースやTomcatが必要となることもあるだろう。TurboNASシリーズにはこうしたニーズにも応えられる仕組みが搭載されている。それが「QPKG」だ。
QPKGは管理画面から導入できるパッケージ管理システムで、コンソール画面を使うことなく、数クリックでインストールから起動までが完了する。ファームウェアのアップデートと同程度の作業で機能追加を実現できるのが特徴だ。ここではオールインワンサーバでの利用が想定されるQPKGをいくつか紹介していこう。
TurboNASシリーズには初期状態でMySQLが導入されているが、データベースの作成やテーブル操作はコンソール画面から行わなければならない。MySQLのWebインタフェースであるphpMyAdminを導入すれば、これをブラウザから管理・操作できるようになる。
WordPressは海外でも広く利用されているブログソフトだ。外観はテーマによってコントロールされ、テーマを切り替えることによって同じコンテンツをまったく異なる外観で公開することができる。テーマのデザインによってはブログ然としていないコーポレートサイトを構築することも可能だ。
XDoveはオールインワンメールサーバパッケージ。メールサーバのほか、Webメールクライアントも含まれている。メールアドレスやメーリングリストの作成、管理もすべてブラウザ上から行える。
JSPサーブレットの実行環境として必要なJava Runtime Environment 6、TomcatもQPKGから導入できる。
ある意味、最も強力なパッケージといえるのが「IPKG」だ。QPKG導入画面を見て「パッケージが少ないな」と思った人がいるかもしれない。IPKGは組み込み機器向けに設計された軽量なパッケージ管理システムで、かなりの数のパッケージが公開されている。特にx86系CPUを搭載するミドルレンジ以上のモデルでは非常に多くのパッケージが利用できるようになっているが、ARM系CPUモデルでもmake、C Compilerをはじめとする開発環境パッケージが公開されているため、ソースからの導入が可能だ。
なお、IPKGの管理システムはQPKGからインストールするが、IPKGのパッケージそのもののインストールはコンソール画面からのコマンドライン操作で行う。
オールインワンサーバとしてではなく、共有ストレージとしてTS-809U-RPを見ると、TS-809U-RPにストレージ以外の機能を持たせることに抵抗を覚える人がいるかもしれない。ただ、どのようなネットワークセグメントに配置するかにもよるが、公開ネットワークセグメントに置くのであれば、「個々の機能のためだけにサーバを1台用意するのはコスト高」と感じるようなものを集約してしまうという運用は考えられる。例としては、本番用のWebサーバがダウンしたときやメンテナンス中の画面を表示するためのSorryサーバなどが挙げられるだろう。ほかにもメールサーバなどのフェイルオーバ用セカンダリサーバとしても有用だ。
TurboNASシリーズは高性能かつ多機能であるがゆえに、その利用形態にはさまざまな可能性がある。さらにQPKG、IPKGといった強力なパッケージ管理システムが用意されていることでその可能性は飛躍的に広がる。この「拡張性」こそがQNAP製NASを最強たらしめている3つ目の理由と言えるだろう。
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