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» 2010年03月12日 11時30分 UPDATE

AVCHDネイティブ編集の実力は?:ただ、AVCHDをサクッと編集したいだけなんだ――「EDIUS Neo 2 Booster」を試す (1/3)

春はビデオカメラが活躍する季節だが、現在主流のAVCHD形式はなにかと編集しにくく困ることが多い。今回はAVCHDが“軽い”とウワサの編集ソフトを検証する。

[都築航一,ITmedia]

プロ向けビデオ編集ソフトから譲り受けた機能と操作性

tm_1003_en2b_01.jpg 「EDIUS Neo 2 Booster」

 トムソン・カノープスの「EDIUS Neo 2 Booster」は、個人ユーザー向けながら本格派のビデオ編集ソフトだ。同社のプロ向けビデオ編集ソフト「EDIUS Pro 5」の操作性をほぼそのまま受け継いでおり、多機能ぶりと使い勝手のよさ、そしてレンダリングなしでも画質の再生確認(プレビュー)が可能な快適さを身上とする。

 価格は3万1290円と、個人向けビデオ編集ソフトとしてはワンランク上の価格帯にはなるが、EDIUS Pro 5と比べれば半額以下で買える点は覚えておきたい。なお、前バージョンにあたる「EDIUS Neo 2」からは4179円でバージョンアップできるほか、他社製ソフトからの乗り換え版(2万4990円)などいくつかのパッケージが用意されている。

 ベースになったEDIUS Pro 5との機能面での違いは、利用可能な専用ハードウェアが限られていることと、プロ向けならではの細かな機能が削られていることくらいだ。EDIUS Pro 5とほぼ同一の操作性を提供しているため、普段はEDIUS Pro 5でのHDビデオ編集を仕事にしている筆者も、ほぼ違和感なく使うことができた。

tm_1003_en2b_02.jpg EDIUS Neo 2 Boosterのインタフェースは複数のウィンドウで構成される。ここではホワイトバランスの設定画面を中央に表示させているが、実際に再生させて仕上がりを確認する「プレビューウィンドウ」(画面左上)と、その隣で読み込んだ素材の一覧を表示させる「ビンウィンドウ」、そして素材を時間経過に従って並べていく「タイムラインウィンドウ」(画面下半分)の3つが基本となる。画面右隅に並ぶ3つの小さなウィンドウ(パレットと呼ばれる)は、各種設定を行なうための補助的なウィンドウだ。いくつかのウィンドウは1つにまとめることが可能だが、デスクトップ領域が広いほど快適に利用できる(画面は1920×1200ドットの例)

 それに、対応ハードウェアが限られているとはいえ、編集中の画面をHDMI経由でテレビなどに出力可能なPCI Express x1対応カード「HDSPARK」は利用することが可能だ。これと組み合わせて使うことで、ハイビジョンテレビへ実際に映し出しながら作業を進めるという本格的なスタイルでのHD編集も比較的安価に実現できる。セットモデルの「EDIUS Neo 2 Booster with HDSPARK」も5万2290円で販売中だ。

 また、HD映像の非常に高速なエンコードや、SD映像からの高画質なアップコンバートを実現するPCI Express x1対応カード「FIRECODER Blu」も組み合わせることができる。こちらのセットモデル「EDIUS Neo 2 Booster with FIRECODER Blu」は6万8040円で、どちらも単体で買いそろえるよりずいぶんお買い得だ。

tm_1003_en2b_03.jpg 「HDSPARK」はPCI Express x1対応のHDMI出力カード。テレビなどに編集中の映像と音声を出力してプレビューできる
tm_1003_en2b_04.jpg 「FIRECODER Blu」は、「SpursEngine」(スパーズ・エンジン)を搭載したPCI Express x1対応のエンコーダカードだ

 一方、「プロ用編集ソフトの操作感を継承」という特徴は、ビデオ編集の初心者にとっては「難解でとっつきにくい」という弱点にもなる。当然ながら、ビデオ編集ソフトを使い慣れたユーザーの操作感を重視した画面構成のため、ウィザードベースの作業画面はおろか、操作ガイド的な仕掛けもほとんど用意されない。

 ボタンの名前1つを取っても専門用語ばかりが並ぶので、EDIUSシリーズの、というよりも、PCによるビデオ編集そのものの基礎をある程度知っていないと、取り付く島もないといった雰囲気だ。

 こうした仕様のため、EDIUS Neo 2 Boosterは、どちらかといえばビデオ編集を趣味として楽しむハイアマチュアや、プロをめざす人に向いた製品といえる。こうしたユーザーであれば、EDIUS Neo 2 Boosterがよくなじむだろう。

 とはいえ、初めてビデオ編集を行なう人でも、がんばってチャレンジする価値は十分にある。なぜなら、EDIUS Neo 2 Boosterは「超」をつけてよいほど、強力なAVCHD編集の機能を備えているからだ。

そもそも従来のAVCHD編集環境と何が違うのか?

 ここで少しAVCHD形式のビデオ編集についておさらいしておこう。AVCHDは、高度な圧縮を行なうMPEG-4 AVC/H.264をコーデックに採用しているため、比較的低いビットレート(小さなファイルサイズ)でも高画質を確保できる半面、圧縮/解凍に高い負荷がかかるという弱点を併せ持つ。したがって、リアルタイムで解凍を行ない続けなければならないビデオ編集には向かないフォーマット、というのがこれまでの常識だった。

 そこで、ソニーのVAIOシリーズやコーレルのビデオ編集ソフトなどでは「プロキシ」と呼ばれる編集専用の軽いファイルで編集作業を行ない、最終的な出力のときだけ元のファイルに差し替えるという手法が利用できる。これは軽快な操作を比較的手軽に実現できる代わりに、編集中の画面がプロキシの粗い映像になってしまうため、厳密な画質での確認ができない。仕上がりの画質を厳密にチェックしながら編集を進めたい場合には致命的な弱点になる。

 他方、従来のEDIUSシリーズや、アップルの「Final Cut Pro」などで採用されている、元の素材自体をあらかじめ負荷の低い別コーデックへ変換する方法では、変換後のファイルサイズが元ファイルの数倍から十数倍にも膨れ上がるため、膨大かつ超高速なストレージが必須だ。プロキシ作成に比べて、変換にかかる時間が大幅に延びるのもネックで、快適な環境を目指すと相当大掛かりなシステムになってしまう。

 さらに、これらの方法では、編集の快適さを向上させようと思っても、プロキシ作成や別コーデックへの変換を専用チップで高速化するといった補足的な対策しかとれず、AVCHDの編集における本質的な弱点の解消は難しい。

 そこでEDIUS Neo 2 Boosterでは、AVCHD形式のファイルを変換せずにそのまま編集(ネイティブ編集)するという、いわば「正面突破」の方法が採られている。最近では、GPUの助けを借りてネイティブ編集を行なう製品も出てきたが、ソフトウェアだけで一定のレベルを実現したというのが、EDIUS Neo 2 Boosterのポイントになる。必要なPCのスペックに煩わされることがなく、将来的にCPU性能が上がれば、さらなるパフォーマンスの向上も簡単に実現できるからだ。

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