「b-mobileSIM」の300kbpsはどこまで使える?(2/2 ページ)

» 2010年04月12日 18時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]
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イマドキのデータ通信で300kbpsは無謀か否か?

「speed.rbbtoday.com」によるデータ転送速度測定

 b-mobileSIMが届いた当日(火曜日)の午後に、横浜の私鉄沿線にある住宅街と、その私鉄沿線を利用した移動中の車内、そして、東京都千代田区にあるオフィスビルの7F(窓側から約8メートル奥にある机の上)のそれぞれで、「speed.rbbtoday.com」の東京大手町サーバにアクセスして転送速度を調べた。

 横浜の住宅街では、最速で下り689kbpsが確認されたが、ほとんどのケースで転送速度は300kbps台半ばとなっている。電車で移動しているときも、上りは300kbpsをわずかに下回るレベル、下りは300kbps台後半(最速では510kbps)を出している。オフィスビスの中では、最も遅いのが上りの291kbps、最速が下りの418kbps、総じて300kbps以上の転送速度が測定された。

測定場所 横浜市住宅街 移動中の私鉄車内 千代田区オフィスビル内
測定回数 1 2 3 1 2 3 1 2 3
下り 689kbps 315kbps 363kbps 510kbps 388kbps 403kbps 392kbps 306kbps 418kbps
上り 364kbps 368kbps 291kbps 278kbps 358kbps 368kbps 291kbps 367kbps 275kbps

Webページの表示速度

 Webページの表示テストでは、PC USERのトップページで検証した。WebブラウザはFirefox 3.5.3を使い、アクセスする前にキャッシュを削除し、URLを直接入力して「Enter」キーを押してからステータスバーの表示が「完了」となるまでの時間を計っている。検証を行ったのは4月6日(火曜日)の夕方、千代田区にあるオフィスビルの7階だ。

 以上の条件において測定した結果は多少ばらつき、最も速くて30秒、最も時間がかかって45秒となった。ただ、ステータスバーに「完了」と表示されてすべてのデータ転送が終了する以前に、「Enter」キーの入力から10秒以内でトップページの記事タイトルやアイコンのほとんどが表示されているので、ユーザーの体感的にはそれほど待つという印象ではない。

 PC USER以外にもPC関連のニュースサイトや掲示板サービスなどで表示時間を計っているが、ほぼ同じ状況だった。いずれも、データ転送がすべて終わって「完了」と表示されるまでは30秒から1分近い時間がかかるものの、コンテンツの表示は10秒かからずに終わるケースが多い。テキスト主体の掲示板サービスで1000スレ表示を行った場合でも5秒程度で完了している。

Google Mapの使い勝手

 Webブラウザで利用できるサービスで、転送速度が求められるものの1つが「Google Map」だろう。表示された地図のスクロールやズーム、ストリートビューなど、地図を操作するたびにデータの転送が発生するので、転送速度が遅いと使い勝手が阻害されることになる。

 検証は、4月12日(月曜日)の午前中に行ったが、Google Mapにアクセスして最初の地図がすべて表示まで約20秒、検索した地点のポップアップが表示されるまで約25秒、Firefox最下段にあるステータスバーの表示が「完了」となるまで40秒ほどかかっている。地図のスクロールでは、横方向、縦方向ともすべての地図を書き換えるスクロール操作において、地図表示に約10秒、ステータスバー表示が「完了」になるまで約15秒かかった。

 また、ズーム操作における地図表示時間を新宿駅を中心にしたエリアで調べてみたが、スケール表示1000フィートから1段階ズームした操作(スケール表示は500フィートになる)で地図表示完了まで60秒ほどかかった(主要部分の表示は15秒程度。周辺セルの詳細情報が表示されるまでが約60秒)が、続いてさらに1段階ズームしたとき(スケール表示は200フィートになる)は地図表示終了まで約20秒で済んでいる。

 画面のスクロールで10秒程度、ズームで20秒と、Wi-FiやモバイルWiMAXで利用したときの「瞬時の地図遷移」には及ばないが、地図が一部分でも表示されれば、その次のスクロールやズーム操作が可能なので、目的のエリアとスケールに到達するまで操作を続けるGoogle Mapの使い勝手としては、それほどストレスを感じない。

 ストリートビューでは、視点移動で表示されるポイントの移動で約5秒、さらに、視点のパンニングで画面が書き換わる処理に約8秒ほどかかった。いったん読み込んだデータを使う範囲で収まるパンニングならデータ転送の必要がないので、書き換え発生時に「一息待つ」のであれば、その使い勝手は意外に良好だ。

ストリーミングコンテンツ(Radiko、ニコニコ動画、Youtube)

 ストリーミングコンテンツの利用については、300kbpsというデータ転送速度の制約とともに、FOMA HIGH-SPEEDデータ通信の制限(FTPやtelnet、ストリーミングサービスの利用不可)が適用されるのではないかという予想がユーザーからでていた。b-mobileSIMの説明では、「動画再生やファイル交換アプリケーションの利用においてはトラフィックス制御を設ける場合ある」と説明している。実際はどうだろうか。

 b-mobileSIMでYouTubeにアクセスしてみると、4月12日時点においてトップページの表示ができなかった(それ以前の検証ではコンテンツの再生画面まで到達するものの、ロードに時間がかかって再生できない状況だった)。ニコニコ動画はコンテンツの再生が可能だったが、再生と中断を10秒程度で繰り返すため実用的とはいえない。

 また、最近注目されている「radiko.jp」も試してみたが、こちらも、しばらく再生した後(検証は火曜日の夕方。再生時間は不定ながら10秒から数分)に再生と中断を繰り返すようになった。ちなみに、海外のインターネットラジオ放送(kingFM.org)でも試してみたが、32kbpspの低ビットレートストリームでも6〜10秒程度の再生と中断を繰り返す。この状況では、ストリーミングコンテンツの利用は困難と考えざるを得ない。

(記事掲載当初、FOMA HIGH-SPEEDデータ通信でFTPの利用が制限されていると記載しましたが、制限なく利用できます。おわびして訂正いたします)

PCからの接続でも実用的なb-mobileSIM

 b-mobileSIMを使ったデータ通信については、300kbpsというデータ転送速度の制限から、「スマートフォンはいけるけど、PCを接続して使うのは苦しいね」という意見が大勢だ。確かにWiMAXやWi-Fiより明らかに遅く、3Gを利用したデータ通信と比べても(記者が利用している下り1.8Mbpsp、上り384kbpsといった旧式モジュールでさえ)体感的に分かるほどの違いがある。それでも、「一息待つペース」という心づもりで使うなら、実用できる速度を実現している、というのが今回の検証で得た感触だ。

 そして、なにより、運用コストが従来の定額データ通信から格段に安く抑えられるのは大きい。SIMカードスロットを用意したノートPCで、通常はモバイルWiMAXや無線LANサービス、もしくは、イー・モバイルを利用しているが、それらの圏外エリアに出張や旅行で赴いたときのバックアップとして、もしくは、スポットのリリーフとして使うのにも、十分受け入れられる価格設定といえるだろう。

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