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» 2010年05月26日 18時43分 UPDATE

「SID 2010」リポート:「AMOLED」こそ次世代ディスプレイの大物

ディスプレイ業界最大の学会「Society for Information Display」(SID)が現地時間5月25日から米国シアトルで開幕。Samsung幹部が基調講演を行った。

[登丸しのぶ/Shinobu T. Taylor,ITmedia]

スマートフォンとスマートテレビはディスプレイ業界のビッグバン

kn_sid26_01.jpg Samsungエグゼクティブ上級副社長 兼 同社フェローのサムホー・キム氏

 「Next big thing in Display」(ディスプレイで次に来る大物は何か)と題した基調講演を行ったSamsung エグゼクティブ上級副社長 兼 フェローのサムホー・キム氏は、ディスプレイに大きな変化を与えたIT革命から講演をスタートした。「70年というテレビの歴史の中で、最初の革命となったのがカラー化で、次いでデジタル化という第2世代の革命が起こったという。そして第3世代の革命となるのが、カメラ、インターネット、マルチメディアなどを融合したスマートテレビだ」と述べるキム氏は、モバイル機器向けのディスプレイ需要がスマートフォンをきっかけに大幅に伸びていることにも触れた。「スマートフォンとスマートテレビがディスプレイ業界のビッグバンになるだろう」(キム氏)。

 しかし、基調講演の本題である「Next big thing」に入ると、キム氏の話す内容はAMOLED(アクティブマトリクス有機EL)一色となった。まず、携帯機器搭載ディスプレイ用途にAMOLEDが優れている点を説明し、LCDとは異なり自発光型のディスプレイであるため、バックライトやカラーフィルタを必要とせず、薄型と軽量化が可能であることや、視野角が広く、コントラスト比が高いなどの利点を挙げた。加えて、構造がシンプルであるので、将来的に低コスト化も可能としている。

 Samsung Mobile Display(SMD)は2007年に最初のAMOLED採用モバイルディスプレイを発表してから出荷を順調に伸ばしており、2010年には4500万台に達すると見込んでいる。スマートフォンなどに採用されるディスプレイは、現時点でLTPS-LCDとAMOLEDの2タイプのみで、高額なハイエンドモデルではAMOLEDが8.2%を占める。キム氏は、2010年に出荷台数が6億台に達して、この比率が53%まで上昇すると予測している。

 基調講演では、開発中のAMOLEDとしてハンマーで叩いても割れない堅牢なディスプレイとフレキシブルディスプレイのデモビデオを流し、会場の注目を集めた。

kn_sid26_03.jpg TFT-LCDとAMOLEDの構造を比較する。AMOLEDにはバックライトやカラーフィルタがないため、シンプルな構造で薄型化と軽量化が可能になる

立体視テレビでもAMOLEDが主流に

 キム氏は、テレビ用ディスプレイでもAMOLEDの利点を訴求した。現在、製品化されているテレビ用ディスプレイとしてはプラズマディスプレイ(PDP)と液晶ディスプレイ(LCD)だけが生き残ると述べ、AMOLEDは、これらのデバイスとともにテレビ市場において大きな可能性を持つという。

 ここでキム氏は、ディスプレイ業界の調査会社「DisplayBank」のデータを引用し、「テレビ全体の世界市場を見ると、出荷台数は2010年に2億2300万台に達する見込みで、その後も台数ベースでは成長するが、伸び率は下がっていく」とした。さらに、出荷金額では2011年の1630億ドルをピークに減少に転じると予測しており、市場を活性化する新しい技術が必要だと強調する。「Samsungは、この新しい技術として「LEDテレビ」と「立体視テレビ」を考えており、さらにAMOLEDもその仲間になり得る」(キム氏)

 キム氏は、AMOLEDは立体視テレビにも向いていると述べているが、その理由をPDPとLCDとを比較しながら説明した。「PDPもAMOLEDと同様に自発光のディスプレイだが、省エネの観点からすると不利で、アフターグローが立体視のパフォーマンスを下げる。LCDはAMOLEDと同じアクティブマトリクス方式だが、AMOLEDと比べると応答速度で劣る。応答速度で比較すると、PDPやLCDがミリ秒レベルなのに対し、AMOLEDはマイクロ秒レベルで1000倍も速い。このように、AMOLEDは自発光、アクティブマトリクス方式、省エネ、速い応答速度と、立体視に求められる資質をすべて兼ね備えている」(キム氏)

 キム氏はさらに、Samsung独自のSEAV(Simultaneous Emission with Active Voltage)駆動による“フレーム・バイ・フレーム”シーケンシャルモードを採用したことで、“ライン・バイ・ライン”プログレッシブを採用するLCDより左右のステレオイメージの分割が容易で、クロストークのない立体視映像が実現できるとした。

第5.5世代向けに22億ドルを投入

 キム氏はSamsungの生産体制についても言及した。それによると、AMOLEDの生産状況に関しては22億ドルを投入し、第5.5世代のガラス基板(1300×1500ミリ)生産ラインの準備を整えたという。また、2011年から量産開始して2012年にはガラス基板換算で7万枚/月のフル稼働に持っていくとともに、大型テレビの需要が成長することを予想して、55型が6面取れる第8世代の生産技術の開発も進めていると語った。

 出荷台数の目標としては、SID 2005のキーノートスピーチでSW. Lee氏が設定した「2010年までに1億台のLCDテレビを出荷する」という目標が、2年早い2008年に実現したことに触れ、同様にAMOLEDも市場からの強い需要が見込めるとした。2015年までには第8世代で55型と46型のAMOLEDテレビを製造して高価格帯のハイエンドモデルでシェアを獲得し、モバイル用ディスプレイの市場では10億台のAMOLEDを出荷する“強気”の目標を打ち立てている。

kn_sid26_02.jpg 展示会場のSamsungブース。立体視テレビを押し出している

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