映像面での進化も目覚ましい。FORISシリーズとして初めて、120Hzの倍速駆動に対応した液晶パネルを採用し、毎秒60フレームの映像に中間フレームを差し込むことで、動画ブレが少なく、クリアで滑らかな映像表現を実現しているのだ。主に37型以上の液晶テレビ中・上位機に見られる機能だが、23型という小さめの画面サイズにおける搭載例はまだ非常に少ない。
映像の内容が切り替わるまで同じ表示が続く「ホールド型」発光の液晶ディスプレイは、表示内容にかかわらず電子ビームが一瞬だけ光ってすぐに消える「インパルス型」発光のCRTディスプレイと比較して、人間の目の特性上、直前に表示された映像が網膜に残り、動画ブレとして知覚されてしまう。したがって、いくら応答速度を速くしたところで、動画ブレが生じてしまうのは否めない。
FX2301TVでは、家庭用ゲームやテレビ放送で標準的な毎秒60フレームの映像に対し、EIZO独自の画像処理によって前後フレームの差分から元映像にない中間フレームを生成して間に挟み込み、毎秒120フレームの映像を再生する。単純にフレーム数が2倍になって画面の書き替え回数が2倍になれば、動画のぼやけ感は半減するというわけだ。
このような倍速補間技術は、あらゆる映像ソースの動画ブレを大幅に減らしてくれる優れモノだが、元映像にないフレームを生成する精度や効果はメーカーのノウハウや製品によって異なる。FX2301TVでは幅広い映像に対応するため、補間方法として「標準」と「強調」の2段階の倍速モードが選択可能だ。通常は「標準」で問題ないが、もっと積極的な補正をかけたい場合は「強調」にセットすればいい(ただし、補正強度を上げることで、ノイズが乗ることもある)。
また、倍速補間技術は毎秒24フレームで制作された映画作品などに使うと、滑らかすぎてフィルムらしい風合いとかけ離れてしまうこともある。そこでFX2301TVの倍速モードは、映像ソースが毎秒24フレームの場合、2-3プルダウン処理された60Hz信号の同じフレームを繰り返し表示することで、プルダウン処理前の毎秒24フレーム相当に戻してフィルムライクな動きを再現できる「5-5/4-4」といった設定も持つ。
さらに24フレームの2:3プルダウンや、30フレームの2:2プルダウンといった映像を滑らかに表示したい場合、標準/強調の倍速モードに加えて、より最適な補間処理を行う「スムーズ再生」機能も備えている。こうした細かな設定をカスタマイズできるのは、パワーユーザーにとって魅力的なポイントだ。
ここでゲーミングディスプレイに詳しいユーザーは、倍速補間技術による操作レスポンスの低下が気になるかもしれない。
倍速補間技術は、動画における前後フレームの差分を分析して中間フレームを作り出すため、入力された映像信号をディスプレイ内部のバッファメモリにため込んで補間処理してから出力するという信号の流れになる。この補間処理にかかる時間は60分の数秒程度と短いため、映画やテレビ番組の視聴で問題になることはないが、ゲーム用途では事情が違う。ゲーム機から入力された映像がわずかに遅れて画面に出力される(FX2301TVの場合で約3フレーム)ため、ゲームコントローラーのボタンを押してから画面に操作が反映されるまでの時間が遅れてしまうのだ。
たいていのゲームではこの遅延時間がたいして気にならないが、数フレームの正確さを競うような格闘ゲームやFPS、音楽ゲームなどでは、わずかな表示タイミングの遅れが大きなミスを招くこともある。
そこでFX2301TVでは、倍速補間やI/P変換などの映像処理をスキップし、映像入力から出力までの時間を大幅に短縮した「スルーモード」も搭載している。スルーモードに設定すると、倍速モードは直前と同じフレームを繰り返して表示することで、映像表示の遅れを最小にする「遅延軽減」の設定となり、すばやい反応を求められるゲームに最適なスピード感が得られる。その遅延時間はたったの“0.5フレーム”と、遅延はまったく感じないレベルだ。
最近のゲーミングディスプレイではこうしたスルーモードを搭載する製品も少なくないが、FX2301TVのように遅延時間を数値で公開している製品は珍しい。これは0.5フレームと最速クラスのスペックを達成していることによる自信の表れだろう。
せっかくの倍速補間技術がゲームに使えないのは残念と思うかもしれないが、動きが激しくないアクションゲームやロールプレイングゲーム、ノベル風のゲームなどでは「標準/強調」モードを使っても十分プレイできる。ゲームによって動画表示の滑らかさと操作レスポンスのバランスを柔軟に変えられるのは、FX2301TVの強みだ。
もちろん、ゲームを快適にプレイするには液晶パネル自体の応答速度も高速でなければならない。その点、FX2301TVはおなじみのオーバードライブ回路によって、中間階調域の応答速度を3msまで高速化しており、キレのある動画表示でゲームをプレイできる。
そのほかにもゲームに役立つ高画質化機能が満載だ。用途別のカラーモードについては、「FlexScan EV2334W-T」で好評だったコントラストと立体感が際立つ「Power」モードを筆頭に、全体が明るくクリアでゲーム表示の視認性が高い「ゲーム」、暗部階調の再現性にこだわりながら暖かみあるトーンに整える「シネマ」、滑らかな階調と自然な発色で汎用性の高い「スタンダード」、そして入力系統ごとに細かく各設定を調整可能な「カスタム」といった5種類が用意されている。
充実した画面サイズの設定も見逃せない。480i/p映像や低解像度のゲーム映像を正確なアスペクト比で等倍(ドットバイドット)や2倍拡大に表示できるほか、プレイステーション・ポータブル(PSP)の映像を画面幅いっぱいまで拡大表示可能な「ポータブル」モードなど、HDゲーム機以外の接続も考慮されているのはありがたい。レトロゲーム向けの機能としては、ドット絵のギザギザした輪郭を崩さないように再現する「リアルイメージ」機能まで備えており、まさにゲーマーにとってかゆいところに手が届く印象だ。こうしたきめ細やかな配慮は、家庭用ゲーム機の文化を醸成してきた日本国内で開発された製品ならではといえる。
さらに付属のリモコンを使うことで、映像入力や画面サイズの選択、スルーモードのオン/オフなどがワンボタンで操作でき、メニュー表示のレスポンスも高速なので、直感的な操作が可能だ。
ここまで映像と音響にこだわったディスプレイともなると、さまざまな機器をつないでみたくなるが、そのための入力端子も実に豊富だ。映像入力はHDMIとD5を2系統ずつ装備していることに加えて、DVI-D(HDCP対応)とD-Sub、コンポジットビデオ(D5端子優先)、そして地上デジタル放送を視聴できるアンテナ入力まで備えている。HDMI入力は対応した外部機器をリモコンで操作できるHDMI CEC(Consumer Electronics Control)機能をサポートするほか、PC接続もこなす。
例えば、PS3とXbox 360をHDMIで接続し、WiiとレコーダーをD端子につなぎ、デスクトップPCをDVI-D、ノートPCをD-Subで入力するなど、多様なユーザー環境を映像切り替え器なしでカバーできるぜいたくな仕上がりだ。特に、D端子は日本でしか普及していないため、昨今はHDMIの普及とともに省かれる製品も増えてきたが、一昔前のAV機器はD端子での接続が最も高画質になるものも多く、これを2系統備えている点に価値を見いだすユーザーも少なくないだろう。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2011年3月31日