“倍速補間×超解像”で動画に特化した23型フルHD液晶――三菱電機「RDT232WM-Z(BK)」を試すこの滑らかさはクセになる(2/3 ページ)

» 2010年06月29日 11時30分 公開
[林利明(撮影:矢野渉),ITmedia]
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使いやすい付属リモコンで多彩な機能を操る

 RDT232WM-Z(BK)には赤外線リモコンが付属し、OSDの操作や入力系統の切り替えなど、大半の操作を離れた場所から手軽に行える。各種機能をオン/オフしたり、輝度やスピーカー音量などの値を増減するための独立ボタンが豊富なので、目的に応じたすばやい操作が可能だ。入力系統の切り替えも全5系統に個別のボタンが設けられているため、ワンプッシュで希望の入力系統を選べるのは重宝する。

カード型ではなく、しっかりした多ボタン搭載のリモコンが付属する
本体のボタンは液晶ディスプレイ部の下にあるが、リモコンがあるため、通常は使わない

 OSDメニューはタブ画面を用いた階層構造だ。最大で3〜4階層とやや複雑だが、各階層のタブが常に表示されているため、全体像を把握しやすく、リモコンで操作できることから面倒は少ない。

 中核となるのは、第1階層目の「映像モード」だ。映像モードの下(第2階層)に「静止画モード」と「動画モード」があり、さらに第3階層として用途別の細かい画質モード(DV MODE)が用意されている。動画モードはテレビ、シネマ、ゲームの3種類から、静止画モードはスタンダード、IVテキスト、フォト、sRGBの4種類から選べる。各画質モード内の設定項目は共通化されている(画面モードによって設定できない項目も一部ある)。動画モードと静止画モードはリモコンのDV MODEボタンで切り替え可能だ。

 設定項目では、動画の高画質化機能に関するものが多い。詳細は後述するが、倍速補間の倍速クリアピクチャー、シネマモード、超解像モード、ノイズリダクション、ダイナミックコントラスト、CRO(コントラスト・レシオ・オプティマイザー)、黒白伸張などだ。これらの項目は、静止画モードでは基本的にオフで使うことになる。

動画モードは、テレビ、シネマ、ゲームの設定を用意
静止画モードは、スタンダード、IVテキスト、フォト、sRGBの設定がある

色温度はケルビン値から選択できるほか、RGBのゲインを個別に設定することも可能だ

 色温度は第1階層の「RGBカラー」以下で調整する。液晶パネルの色域をフルに使う「NATIVE」のほか、5000/6500/9300/10000Kの色温度がプリセットされている。各プリセット値ではRGBバランスも微調整でき、RGBバランスを変更すると「USER」設定となる動作だ。RGBバランスを調整するとプリセット値は失われるが、「リセット」を実行することで元に戻せる。

 スケーリング機能にも不満はない。フルスクリーン拡大の「フル」、アスペクト比を保った拡大の「アスペクト」、入力解像度の縦横を2倍に拡大する「2×ズーム」、ドットバイドットの「リアル」から選択可能だ。また、D5入力とHDMI入力(PC接続を除く)では、93/95/98/100%のオーバースキャン調整も行える。

倍速クリアピクチャーをはじめ、動画の高画質化機能は効果大

 最大の特徴といえるのが、冒頭でも述べた倍速駆動&倍速補間の「倍速クリアピクチャー」機能だ。結論からいって、その効果は非常に大きい。もっとも分かりやすいのは、テレビ番組や映画の最後に流れるテロップだ。従来の液晶ディスプレイ(60Hz駆動)と見比べてみると、倍速クリアピクチャーを有効にしたRDT232WM-Z(BK)では、テロップ文字の輪郭のぼやけが大幅に低減されて鮮明に見える。同様に、サッカーやフィギュアスケートといったスポーツ映像でも、倍速クリアピクチャーの効果がはっきりと実感できる。多くの映像で、倍速クリアピクチャーは有効との印象を受けた。

 また、RDT232WM-Z(BK)は、独自の画像処理LSI「ギガクリア・エンジン」を搭載している。コントラスト補正やノイズリダクションなどの機能を備えるが、目玉は「超解像技術」だ。超解像は、映像のぼやけ成分を解析して補正することで、解像感やクッキリ感を高めた映像表示を可能にする。低解像度の映像を拡大表示する場合でも、高い効果が得られる点に注目したい。RDT232WM-Z(BK)ではギガクリア・エンジンが進化し、超解像の強度とダイナミックコントラストの強度を、10段階で細かく調整できるようになった。

 超解像技術は、倍速クリアピクチャーと併用で機能するのもポイントだ。超解像技術で映像のぼやけ成分を補正した後、倍速クリアピクチャーで中間フレームを作り出す(映像を120fps化)。これによって、Blu-ray DiscタイトルのHD映像のように元から高品質な映像だけでなく、DVD-VideoのSD映像や、動画共有サイトの低解像度な映像などでも、高い解像感と少ないぼやけ感でスムーズに表示してくれる。

画面の左半分が倍速クリアピクチャーオン、右半分がオフで動画を再生し、デジカメで撮影した例。花畑の映像と下のテロップが左右にスクロールする映像だが、左半分は内容がはっきりしていて、ぼやけが少ない

 もっとも、倍速クリアピクチャーは、あらゆる映像で万能というわけではない。映像の前後フレームを解析し、存在しない中間フレームを作るため、場合によっては自然な中間フレームを生成できず、映像が崩れてしまうことがまれにある(これは液晶テレビでも同様だ)。また、超解像技術は映像のぼやけ成分を補正するが、カメラの背景ボケなど映像制作上の意図的なボケも補正されることから、ソース映像の再現性が損なわれる場合があるのだ。例えば、芸術性の高い映像作品を忠実に見たい場合などは、倍速クリアピクチャーの強度(弱/強/オフ)や超解像の有効/無効を切り替えながら、見比べてみることをおすすめしたい。

 映像作品の観賞という点では、「シネマモード」も見逃せない。24fps映像を自動判別して忠実に再現(各フレームを5倍に増やして120fps化)する「フィルムモード」と、24fps映像をフレーム補間(4フレームの補間映像を作って120fps化)する「なめらかモード」の2種類が選べる。フィルムモードは画面の動きが若干カクつくシーンがあるため、映像の作品性を重視するのでなければ、シネマモードは無効か、なめらかモードを試してみるのがいいだろう。

 これら動画の高画質化機能は、有効と無効、および強度を調整できるので、好みの設定に追い込んで利用したい。最大公約数的な設定に固定するのは難しいが、個人的には倍速クリアピクチャーとノイズリダクションは常に有効にして使っても問題ないと感じた。超解像やシャープネス、ダイナミックコントラストの強度、黒白伸張の有効/無効などは、映像と好みに応じて微調整することで、本来の実力をより引き出せる。超解像はかけ過ぎないのがコツだろう。

 なお、高速なレスポンスが要求されるゲーム向けの機能として、映像処理をスキップして画面描画の遅延を減らす「スルーモード」も搭載している。スルーモードを有効にすると、倍速クリアピクチャー、シネマモード、PinPが無効となり、スケーリング機能はアスペクト、オーバースキャンは100%に固定される仕組みだ。倍速補間には処理時間がかかるので、スルーモードの搭載はゲーマーにとってありがたいだろう。

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