最近になって、中国のメーカーが開発した電子ブックリーダーを店頭で見かける機会が増えてきた。PC周辺機器メーカーの「愛国者」(aigo)や、ポータブルAVプレーヤーを手がける「OPPO」、そして、大容量USBメモリを主に扱う「台電」など、多くの中国メーカーが電子ブックリーダーをリリースしている。そのラインアップは、メジャーなE Inkを採用するものから、中国で独自に開発された(自称)電子ブックリーダー専用カラーTFT液晶パネルを搭載したものまでと多彩だ。
「Kindle」や「iPad」といった海外製品はさておき、中国の国内では、中国製の電子ブックリーダーが激しくシェアを争っている。その「中国独自開発の製品を巡る争い」の状況は、なにやら、Blu-ray Discが世界中で普及していく傍らで、EVDだCBHDだともめていた「次期光ディスクの中国独自規格」騒動を思い出すが、そんな中国市場をリードしつつある製品が、「漢王」というメーカーがリリースするモデルだ(EVDとCBHDについては、中国独自規格「CBHD」でHD DVDが復活する……のか?と、迷走する“EVD”を試しに購入してみた(後編)を参照のこと)。その漢王のラインアップで最も人気なのが、E Inkを採用したエントリーモデル「F30」だ。価格は1880元(日本円で2万5000円強)。ちなみに、漢王の直営店は上海や北京といった国際都市だけでなく、地方都市など中国全土に広く展開してる。
中国のハードウェア製品にしてはちょっと高級なパッケージを開封すると、中には本体のほかに、“シンプルすぎる”説明書と、ケーブル類、そして、2枚のDVDが付属していた。本体の電源を入れると、まず最初に「本を読まぬ人、本を読まぬ国民に未来はない。温家宝」という、国務院総理(日本でいうところの首相)のありがたい言葉が表示され、それからメニュー画面が表れる。
F30のディスプレイサイズはKindleと同じ6型で、その左脇に「ページめくりボタン」、ディスプレイの下にはキーボードを用意するなど、レイアウトもKindleに似ている。ただし、Kindleにあるポインティングデバイスやメニューボタンが、F30ではキーボードに収容されているなどの違いがある。このように、外見をKindleによく似せた一方で無線接続に対応しない。その代わりにmicroSD(中国ではTFカードという)スロットとMini USBを本体に用意しているので、読みたいコンテンツをPCなどの“母艦”にダウンロードしてからF30に放り込むことになる。
無線接続をサポートしないのは、F30に限った話ではない。多くの中国メーカーが扱う多くの電子ブックリーダーでも同様だ。「電子ブックリーダーで読むコンテンツはいったんPCでダウンロード」というのが、中国における電子ブック利用のスタンダードとなっている。
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