東芝が10年ぶりに放つ液晶一体型PC――「dynabook Qosmio DX」の実力に迫るDynaTop・おぼえていますか(3/5 ページ)

» 2010年08月09日 17時00分 公開
[小川夏樹(撮影:矢野渉),ITmedia]
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OSは32ビット版/64ビット版をセットアップ時に選択可能

 搭載するOSはWindows 7 Home Premiumだが、32ビット版もしくは64ビット版を初回起動時に選択できる「セレクタブルOS」を採用する。試用したモデルには32ビット版が搭載されていた。今回は付属ソフト類を含め、32ビット版での検証となっている。

 初回起動直後の状態でプリインストールソフトを使うぶんには、標準で搭載する4Gバイトのメインメモリを3Gバイト程度までしか利用できない点を除き、64ビット版と大きく違うところはないと思われる。4Gバイトのメモリを余すことなく使いたい場合や、将来的にメインメモリを最大の8Gバイトまで増設する予定がある場合は、最初から64ビット版を選んでおくといいだろう。

 メインメモリはPC3-8500 DDR3-1600 SDRAMだが、デスクトップPC用のDIMMではなく、ノートPC用のSO-DIMMモジュールを採用する。背面のネジ止めされた小さなカバーを開けるだけで、2基のSO-DIMMスロットにアクセスできるが、空きスロットはないため、メモリを増設する場合、既に装着されたモジュールと交換する必要がある。

SpursEngineで映像処理にこだわり

SpursEngine

 ここまでは液晶一体型PCとしての基本的な仕様を見てきたわけだが、Qosmio DXの魅力は独自機能と組み合わせたところにある。具体的には「21.5型ワイド液晶一体型PC」という基本部分に加えて、「個人用の地デジ対応フルHDテレビ」や「大容量のHDD/Blu-ray Discレコーダー」といった機能が1台で実現でき、さらには「SpursEngine」による映像の高画質化や高速処理といった付加価値が得られるのが特徴だ。

 SpursEngineとは、ハイスペック液晶テレビ「CELL REGZA」でも使用している「Cell Broadband Engine」の映像高速処理技術をベースとして、同社が持つPC技術やAV技術、半導体技術などを結集して開発した映像専用エンジンだ。このエンジンは、CELLベースの4コアチップで「TOSHIBA Quad Core HD Processor」とネーミングされており、SpursEngineの各コアの利用率を表示するWindows 7のデスクトップ用ガジェットも用意されている。Qosmio DXにはこれが搭載されているので、CPUや内蔵グラフィックスの処理能力にほとんど依存せず、SpursEngineを使った高性能な映像処理が可能になっている。他社のノートPCや液晶一体型PCとの最も大きな違いが、このSpursEngineだろう。

 SpursEngineは、SD解像度の動画を高精細なHD解像度にリアルタイムでアップコンバートする「超解像技術(レゾリューションプラス)」をはじめ、HD映像のBlu-ray Disc記録時にエンコード時間を短縮する「高速ブルーレイダビング」、動画のMP4エンコード時間を短縮する「高速動画変換」、長時間録画を可能にする「地デジ8倍速録画」、Webカメラに映る手の動きで操作を行う「ハンドジェスチャリモコン」、録画番組の出演者や登場人物の顔を一覧表示する「顔deナビ」に利用される。

超解像技術のスゴさを体感

 DVD-Videoや過去に録画したアナログ放送のテレビ番組、ネット上の多くの映像コンテンツはSD解像度だ。こうした映像をHD解像度の環境で再生すると、ブロックノイズなどが目立つ粗い映像となってしまうことがあるため、HD解像度で再生してもキレイに見えるように、映像データを補間して高解像度のデータに変換するアップコンバート処理が求められる。SpursEngineでは単に映像をSDからHDへリアルタイムに高解像度化するにとどまらず、ぼやけている部分をクッキリ描画しつつ、ジャギーを低減するなどの独自の超解像技術を用いることで、高画質化を図っている。

 この超解像技術はレゾリューションプラスと呼ばれ、SpursEngineと専用ソフトを組み合わせることで機能する。専用プレーヤーソフト「TOSHIBA DVD PLAYER」を用いたDVD-Videoの再生に加えて、Internet Explorer 8のプラグインとしてYouTubeの動画(画面サイズが240×100ドット以上、640×392ドット以下に対応)に超解像技術を適用してフル画面表示できる「TOSHIBA Upconvert Plug-in」も備えている。

 SD解像度で過去に録画したテレビ番組やDVD-Videoの再生では、TOSHIBA DVD PLAYERに用意されている「アップコンバート」ボタンをクリックするだけで、リアルタイムで超解像技術による映像処理が行われる。アナログテレビの録画データやDVD-Videoではその効果がはっきりと分かるほどだ。SD解像度の元映像ではぼんやりしていた字幕や線が明確になり、視認性が高くなることが多い。ただし、ノイズが多すぎたり、画質が低すぎたりする元映像では、さすがに超解像でも歯が立たず、粗がかえって強調されるような場合もあるので、ソースに応じて使い分けたいところだ。

DVD-Video形式で保存したアナログ放送の番組をTOSHIBA DVD PLAYERで再生した様子。アップコンバートが無効の状態では、SpursEngine各コアの利用率を示すWindows 7のデスクトップ用ガジェット(画面の右下)を見ても、稼働していなことが分かる
TOSHIBA DVD PLAYERの「アップコンバート」ボタンをクリックすると、リアルタイムでアップコンバート処理が行われる。プレーヤーには「アップコンバート」と黄色い文字で表示され、Windows 7のデスクトップ用ガジェットを見ても、SpursEngineがほぼフル稼働しているのが分かる
YouTubeではSD解像度の動画がまだまだ多い。こうした動画にInternet Explorer 8でアクセスして再生すると、アップコンバートできる場合は「Resolution+」のロゴが表示され、即座に超解像が適用可能だ

動画編集や地デジ録画にもSpursEngineが活躍

 SpursEngineは動画のエンコードにも威力を発揮する。Qosmio DXには動画編集ソフトとして「Corel Digital Studio for TOSHIBA」が備わっており、ビデオカメラで撮影したAVCHD映像の編集/変換/ディスク書き込みや、著作権保護されていない動画のiPhone/iPod用MP4ファイル変換といった機能を利用できるが、これらのエンコードにSpursEngineの高速映像変換技術が適用できるのだ。

 特にAVCHD形式の動画ファイルは編集してエンコードするのに相当なマシンパワーが必要なため、SpursEngineで高速処理してくれるのはありがたい。目安として、AVCHDビデオカメラで撮影した1時間の映像を簡易編集してBlu-ray Discに書き込む場合、1時間以内で済むとされている。

 Qosmio DXは地デジチューナーを1基搭載しているが、MPEG-4 AVC/H.264形式での長時間録画にもSpursEngineが生かされている点に注目だ。地デジ番組の視聴/録画/管理は独自ソフトの「Qosmio AV Center」で行い、Windows Media Centerのテレビ機能は利用しない。録画モードはTS(約17Mbps)、XP(約10Mbps)、SP(約8Mbps)、LP(約5.5Mbps)、EP(約2Mbps)の5種類が用意されている。このうち、XP以下の4モードでSpursEngineによる圧縮が行われる仕組みだ。解像度はEPがSD、LP以上がHDとなっている。

 最高画質のTSモードと最低画質のEPモードでは、およそ8倍ものビットレートの差があるが、EPモードはSD画質なので、地デジ録画で常用するのはあまりおすすめしない。番組内容が見られれば構わない場合はLPモード、高画質で残したい場合はSPモードやXPモードと使い分けるのがいいだろう。

 こうして録画した番組はダビング10への対応により、DVD-R、DVD-RAM、BD-R、BD-REに書き出せる。例えば、2層のBlu-ray Discに書き出す場合、LPモードで約18時間記録できる計算だ。もちろん、Blu-ray Discに書き出す場合もSpursEngineで高速変換して出力できる。また、メモリカードスロット経由で著作権保護機能に対応したSDメモリーカードへ録画番組を640×360ドットで書き出し、ケータイで視聴できる「地デジ持ち出し機能」も持つ。

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