その8月後半には、為替相場の円高傾向も手伝って、CPUやフラッシュメモリなど、複数のパーツで値下がりが見られるようになった。特にしばらく緩やかに値上がりしていたDDR3メモリが下降に転じて、2Gバイト×2枚の4Gバイトキットが6000円台で売られる光景も珍しくなくなった。
この傾向が追い風となったのが、新CPU「Atom D525」をオンボードで備えた新型Atomマザーだ。月末にギガバイトからmini-ITXサイズの「GA-D525TUD」が1万円弱で登場し、一気に話題の製品となった。Atom D525はDDR3/2メモリに対応したデュアルコアCPUで、GA-D525TUDも2基のDDR3メモリスロットを搭載している。
フェイス秋葉原本店は「ギガバイト製のAtomマザーは、急世代から独自のオーバークロックツールを備えていることもあって特に人気があります。新モデルも価格差がないので、長らくヒットしそうですね」と話していた。
また、それ以外でも小型PCキットが複数登場し、それぞれ注目を集めた。まず、お盆明けには、Manliの次世代IONキット「M-T2N510」、Athlon Neo X2 L325とAMD M780Gのコンビモデル「M-T2R324」がそれぞれ3万4000円前後と3万2000円前後で登場し、Shuttleからも外付けドライブ大の次世代IONベアボーン「XS35」が1万9000円前後で投入された。M-T2N510とM-T2R324は2GバイトのDDR2 SO-DIMMと250Gバイトの2.5インチHDDが組み込み済みで、OSさえインストールすればPCとしてすぐに利用できるのも特徴だ。
クレバリー1号店は「猛暑ということもあり、発熱量の低いサブマシンとして需要が出るかもしれません」と話していたが、その翌週にはAtom Z530と1GバイトのDDR2メモリを搭載した超小型ベアボーン「fit-PC2i」が4万6000円前後でデビューするなど、選択肢はノンストップで増え続けている。
そのほかに話題を集めたモデルには、お盆シーズン中に登場したAntecのPCケース「LanBoy Air」が挙げられる。背面に8基の拡張ブラケットを備えるタワーケースで、上面を除く5面がすべてメッシュ状になっているデザインが特徴。シャーシの区切りごとにパネルが分かれており、内部のレイアウトをカスタマイズできるほか、付属の12センチファン5基に、同サイズ10基のファンを追加可能だ。ドライブベイは5インチ×3、3.5インチ×6、2.5インチ×2で、本体サイズは222(幅)×513(奥行き)×507(高さ)ミリ。価格は2万3000円弱となっている。
ツートップ秋葉原本店は「エアフローの計算が難しいですが、工夫しがいのあるケースですね。シャーシの剛性が高いので、パネルがメッシュ状でも堅牢性は十分あります。モノとしても優秀ですよ」と評価していた。
マザーボードでは、RadeonとGeForece混在のマルチGPU環境が構築できるMSIのFUSIONマザーも話題をさらった。今年1月に登場した元祖FUSIONマザーの「Bigbang Fusion」が3万円弱で販売されているのに対し、8月後半からP55マザー「P55A-FUSION」が1万9000円弱、初のAMD系となるAMD 770マザー「870A Fuzion」が1万4000円前後と、立て続けに割安なラインアップが店頭に並ぶようになった。
FUSIONが登場した当初は「ドライバの調整やGPUの組み合わせの制限のようなものがあり、かなり難易度の高いキワモノ扱いでした」(パソコンショップ・アーク)と振り返るが、現在はマザーボード側のドライバが改良されたことで「割と普通にうたい文句の機能が利用できるようになっていると思います」(同店)といった状態にまで向上しているという。このため、割安な2つの新モデルも好調に売れると期待されたが、「870A Fuzion」だけは“待った”をかけるショップが見られた。
その理由はチップセットの仕様だ。海外のMSIサイトにはAMD 770搭載と記載されていたのに対し、発売時にエムエスアイコンピュータージャパンの公式サイトでは「AMD 870」と書かれていた。T-ZONE.PC DIY SHOPは「どちらかが間違っていると思いますが、MSIさんが夏休み中で確認がとれないんですよ」ということで、販売をひとまず延期。そのほかのショップも、仕様がはっきりしないまま動向を見守っていたが、休み明けにエムエスアイコンピュータージャパンからAMD 770を採用しているというリリースが流れ、ようやくすべてのショップで買える状況となったわけだ。
某ショップは「まあ、型番が870だから間違えますよね。こういうミスは昔から結構多いんですよ。今回は夏休み期間と重なり、かつ話題性の高いモデルだったということで、ちょっと可哀相でしたね」と同情していた。
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