NVIDIAが明らかにした「Fermi」の次GPU Technology Conference(3/3 ページ)

» 2010年09月22日 17時30分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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CUDAのキラーアプリが登場する

 ファン氏の基調講演では、GPUコンピューティングの活用事例として、Autodeskのモデリングシステム「3ds Max」とAdobe Systemsが研究レベルで進めている事例が紹介された。

 「3ds Max」では、レイトレーシングなどの光源設定を細かく行うことでリアルな映像の作成が可能だが、CUDAに対応した3ds Maxのデモでは、GTC会場のサンノゼから2500マイル離れた東海岸のアトランタにあるデータセンターにアクセスして、画像データをWebブラウザから取得するシステムが紹介された。

 データセンター内にはCUDAに対応したサーバマシンが配置されており、デモ用PCのWebブラウザからの指示に従って、必要な画像をリアルタイムで演算して送り返す。遠隔地にあるPCからアングルやオブジェクトの配置変更、時間によって異なるライティングなどの要素を指示することで、非力なPCでもレンダリング画像がリアルで閲覧できる。ショウルームなどでのプレゼンテーションに活用できるだろう。

Autodeskのレイトレーシングシステム「3dsMax」もCUDAに対応した。単純に手元のワークステーションでレンダリングを行うだけでなく、CUDA対応GPUを搭載した巨大サーバシステムをデータセンターに配置し、そこでリアルタイムレンダリングを行うことで、ユーザーはWebブラウザなどから自在にレンダリング後の画像を引き出せるようになる

 Adobe Systemsが研究レベルで進めている事例では、複数のレンズと受光体を昆虫の複眼のように並べた特殊な装置で撮影した画像を加工するデモが示された。1枚のレンズではなく、複数のレンズを組み合わせて同時に撮影を行うことで、従来のカメラでは不可能だった情報も取得できるようになる。

 例えば、人間の目は2つあるが、この2つの目で見えた画像で互いの死角を補完し合うことで視野が広がり、空間の深みを感じ取ること(つまり立体視)が可能となる。これを応用すれば、任意の距離でピントを合わせた画像を算出できたり、死角に入って見えないはずの対象物を描画したりと、1つのレンズで撮影した場合には不可能な画像を得ることができる。任意の奥行きで立体画像を作ることも可能だ。

複眼のようなレンズで画像を撮影すると、1つのレンズでは把握できないさまざまな画像情報を取得できる(写真=左)。このレンズで撮影した画像を、1枚の画像のように加工して並べて、さまざまな画像補正を加えていくことで、さまざまな画像を取り出せる(写真=右)

CUDA対応GPUのロードマップも公開

 基調講演の最後では、Fermi以降のCUDA対応GPUのロードマップが紹介された。基本的には消費電力あたりのパフォーマンス(Performance Per Watt:PPW)を重視しており、世代ごとに3〜4倍程度の向上が見込まれるという。

 Fermiの次の世代にあたる「Kepler」(ケプラー)は2011年末までに登場し、28ナノメートルプロセスルールが用いられる。Kepler登場の2年後には「Maxwell」(マクスウェル)が登場し、こちらは20ナノメートルプロセスルールを採用するという。アーキテクチャの詳細については明らかにしていないが、NVIDIAでもIntelのように半導体のプロセスルールが2年ごとに進化することになる。

 このロードマップ以上に興味深いのが開発コード名だ。すでに登場している「Tesla」は、ニコラ・テスラ(Nikola Tesla)からとったもので、Fermiはエンリコ・フェルミ(Enrico Fermi)からきている。今回登場したKeplerは、「ケプラーの法則」で知られる宇宙物理学者のヨハネス・ケプラー(Johannes Kepler)から、Maxwellは電磁気学で有名なジェームズ・クラーク・マクスウェル(James Clerk Maxwell)からそれぞれ持ってきていると思われる。

 すべて物理学者の名前で統一しているあたりに、NVIDIAが考える「GPUコンピューティングの目指す道」が示されているのではないだろうか。

CUDA対応GPUのロードマップ。2011年に28ナノメートルプロセスルールのKepler(ケプラー)が、2013年に20ナノメートルプロセスルールのMaxwell(マクスウェル)が登場する。ちなみに、どちらも物理学者の名前だ

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