連載
» 2010年09月24日 11時00分 公開

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:クレーマー!自爆しろ!! (1/2)

販売店にとって“クレーマー”は常に頭を悩ませる問題。口コミサイトによって破壊的なパワーを持ったクレーマーを撃退する方法はあるのか!ないのか!

[牧ノブユキ,ITmedia]

「この店では二度と買わない」を歓迎する販売店

 前回の記事の冒頭で紹介した「このメーカーの製品を二度と買うものかあああぁぁぁ!」というセリフは、買った製品に裏切られたときの怒りを表現している。

 類似語として、店の接客やサービスでイヤな思いをしたときに発せられるセリフに「この店で二度と買うものかあああぁぁぁっ」というのがある。いった本人は「はいっ、この店の売り上げが消えた!俺が買わない分だけ売り上げが消えたよ!!」と“意気揚々”だが、いわれた店は痛くもかゆくもない。かえって労せずして面倒な“クレーマー問題”を処理できて大いに助かることになる。

 すべてがそうとはいわないが、一度クレームをつけた客は、その後も繰り返し突撃してくる傾向がある。そのたびに浪費しなければならない時間と労力を考えれば、クレーマーの自主退場はかえって望ましい。そもそも、クレーマー1人の購買力が販売店の売り上げや利益に及ぼす影響は、わずかに過ぎない。クレーム処理に費やされる人と時間をほかの客にかければ、「二度と買うものか」と退場したクレーマーの売上はいくらでもカバーできる。

 ただし! インターネットが媒介となって広がる“口コミ”の感染力が破壊的な猛威を振るう現代では、この理屈が(特に日本国内において)通用しなくなってきた。客と販売店のトラブルは即座に拡散していくため、その影響力も大きい。ユーザーに不利益な製品(特に価格設定)やサービスの問題点が表面化しやすくなったともいえる。

 ただ、口コミサイトに投稿されるクレームリポートは、ほとんどが“客”側の視点だ。その主張が度が過ぎる“モンスターカスタマー”という存在も広く社会に知られるようになり、客側の一方的な言い分が好意的に受け入れられるわけでもなくなってきた。「販売店から理不尽な扱いをされた」と口コミサイトに訴えたら、「あなたの言い分と手口のほうがあまりにも理不尽」と、客の側が非難されて販売店が擁護されることも少なくない。

 いままで潜在化していた理不尽なクレーマーが、口コミサイトの登場で多くのユーザーの目にさらされることで、ユーザーたちによる自浄作用が働いているといえなくもない。興味深い現象だ。

お勧め製品を絞り込むことがクレーム回避につながる

 販売店の“中の人”によると、クレーマーの質とレベルは、その店が取り扱う製品によって大きく変わるという。家電量販店やPCショップのクレーマーは、飲食業やペットショップのそれと比較すると、まだまだ分別のあるレベルらしい。

 特にPC関連製品については、自力で解決できることがユーザーとして「えらい!」と評価される傾向がある。そのおかげで、製品に問題があって動作しないときでも自力で解決できなないのは自分の技術のなさを露呈するという意識が、クレームを抑制しているといえる。

 逆に、PC業界特有のクレームというのが、複雑すぎる製品の機能やサービスの内容を店員が十分説明できないまま販売してしまってクレームにつながるパターンだ。「対応しているといっていたのに、動かないじゃないか」というケースや、料金プランの体系が変わってしまい、それまでは正しかった説明が正しくなくなるケースなどが多い。

 PC周辺機器のように、別の製品との組み合わせて使用する場合は、組み合わせのパターンは膨大な数になる。そのすべてにおいて回答と対策を用意しておくのは現実的に不可能で、この種のクレームは必ず発生すると覚悟しておくしかない。だから「私たちが得ている情報では分かりかねます」といい切ってしまえばいいところを、売りたいがために「大丈夫です。対応しているので利用できます」といってしまうと、これもクレームにつながることになる。

 量販店の店員が、決まった製品を進めてくる理由もこうした事情が大きい。つい先ほど「組み合わせのパターンは膨大」と書いたが、これはn×nの場合であり、1つの製品についてであれば1×nとなり、なんとかカバーできる状況になりうる。そのため、自信をもって勧められる製品を1つ用意しておき、それ以外は聞かれても勧めずできるだけ売らない、というパターンに落ち着く。

 この傾向は、“難易度の高い”製品であるほど強くなる。例えば、外付けHDDであればA社とB社の製品は確実に説明できるが、無線LANルータになるとA社の製品しか自信を持って説明できない、といった状況だ。

 定番でない製品に客が興味を示すようであれば、しつこくならない程度に定番製品を勧めた上で、客に選択を任せる。こうすることで、店としてはそれとなく警告しておいて、購入後のクレームを回避できるようにしておく。客が自分の意志で指名買いした製品であれば、うまく動作しなくてもクレームをつけてくる可能性は低くなるからだ(そうした状況でクレームをつけてくる客が、いわゆるモンスター・カスタマーとして認定される。幸い、PC関連でこうした客は多くない。いるとすれば、動かない理由も警告された意味も理解できない初心者ユーザーだ)。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia PC USER に「いいね!」しよう