オレゴンの拠点で超巨大な“クーラーユニット”と最新マザーボードに遭遇するIntelの拠点にはリスもやってきます(1/3 ページ)

» 2010年10月08日 16時00分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

Intelで動いている最先端のITシステムとは

 多くのユーザーが、さまざまな場面でPCやネットワークシステムを活用しているが、そうした製品を日々開発している最先端の現場で、「PCやネットワークシステム」をどのように活用しているかあまり知られていない。最新のシステムを提案する立場だからこそできるシステムを自ら設計しているはずだ。

 “システムを提案する立場”の最有力企業といえる米Intelのオレゴン州ポートランド郊外にあるヒルズボロ研究開発センターとデータセンターで運用されている、“提案する立場だからこそできる”システムの実際について紹介しよう。

米Intelのインダストリー&エンゲージメント部門担当ジェネラルマネージャーのスティーブ・コリンズ氏

 IntelにおけるITシステムの現状を簡単に紹介しておく。同社では、現在世界の25地域62拠点に6300人のITスタッフを抱えており、61地域150拠点にいる7万8900人の従業員を支えている。情報システム従事者が全従業員の1割弱というのは、かなり多いとみられるが、これもテクノロジーを生業とする企業におけるIT部門の重要性を示している。

 Intelによれば、世界に95のデータセンターがあり、そこで10万台近いサーバが動作しているが、そのうち大規模と呼べるデータセンターは3〜4カ所程度で、その1つがヒルズボロのデータセンターになる。ヒルズボロのデータセンターが大規模である理由は、ここがIntelの研究開発拠点の心臓部だからだ。ヒルズボロのデータセンターにはCPUの設計開発に関わるサーバやシステムが集中しており、ある意味でIntelの財産がここに詰まっていることになる。

 データセンターと並んで重要なのが、従業員が利用するPCなどの“端末装置”だ。Intelは1997年ごろからPCのモバイル対応を進めており、現在では全PCの8割以上がノートPCだという。さらに、2009年以降に導入したすべてのノートPCでSSDを搭載するなど、IntelのSSD戦略を自ら“援護射撃”している。予算の問題でなかなかSSDの全面導入に踏み切れない企業には、うらやましい状況だろう。

 最近では、導入する端末にPCだけでなくスマートフォンなどのモバイル端末が増えているという。2009年まではBlackBerryが中心だったが、今ではiPhoneやAndroid搭載モデルなどが増えつつあり、これら異なるシステムのサポートがITシステム部門の課題となっている。一般に、混在環境における相互接続性やセキュリティが問題になることが多いが、こうしたニーズをかなえたうえで、Intel自身の企業としての競争力を高めていくのが自らの役割だと、米Intelのインダストリー&エンゲージメント部門担当ジェネラルマネージャーのスティーブ・コリンズ氏は説明する。

4つのカテゴリーでIntelの活動を支援する

 その役割を果たすため、データセンターには何が求めらるのだろうか。Intelでは現在、「デザイン」(D)、「オフィス一般用途」(O)、「製造部門」(M)、「エンタープライズ」(E)という4つのカテゴリーのシステムがデータセンター内で動作しており、それぞれに違うニーズが求められている。

 デザインのカテゴリーは、チップ設計やシミュレーションなどに用いられる。全サーバの7割がこのデザイン用途に集中する同社サーバの中核だ。主な構成はHPCタイプの高性能並列コンピューティングで、LinuxとXeonを組み合わせたサーバが内部で動作している。

 ミッションクリティカルな基幹システムとして動作しているのが製造部門のシステムで、こちらは用途的な理由から24時間365日稼働に耐えうる高い信頼性が要求される。コリンズ氏によれば、高い信頼性という理由で、製造部門のシステムにおいてはItaniumが主に利用されているという。

 オフィス用途とエンタープライズでは、一般的な企業で用いられているITシステムと同等のものを採用する。エンタープライズにおけるニーズは高速処理や信頼性よりも、コンプライアンス(法令順守)の部分にある。例えば、米国ではサーベンス・オクスレイ法(通称「SOX法」といい、不正会計事件で知られる“エンロン事件”をきっかけに制定された)による会計基準が存在するが、各種監査や過去のデータの保管/アーカイビングなど、データの変更過程をいかに記録/追跡するかが求められるようになる。この目的のためにはストレージを効率的に活用することが必要で、いわゆる情報ライフサイクルマネジメント(Information Life-cycle Management:ILM)といった仕組みも導入される。

 データセンター運営における課題の1つは、効率的な運営でコスト削減を図る点にある。これは、集約(コンソリデーション)と仮想化(バーチャライゼーション)によるサーバ数の削減だけでなく、電力や冷却といった運用コストも含んでいる。前者については、ハイパーバイザ型の仮想化システムやプライベートクラウドといったアイデアがあり、効率性だけでなく対応速度の向上や構成の柔軟性も向上する。

 サーバの集約については、2006年に15台だったサーバラックが2010年には1つのラックに収容できてしまうという。この集約により、90%以上のエネルギーコスト削減が可能になるなど、定期的なサーバの入れ替えがデータセンター全体の運用コスト削減につながる。

 Intelによれば、採用しているハードウェアの多くは2ソケット対応のXeonサーバで、特別に強力なシステムを利用しているわけでもない。最新システムへの定期的な更新がコスト上のメリットになるというIntelからユーザー企業へのメッセージともいえる。これにIntelが持つ冷却テクニックを組み合わせて、同社の最新データセンターが運営されている。

IntelのITシステムにおける4つのセグメント。プロセッサ開発がメインのIntelだけに、設計デザイン関連のサーバだけで全体の7割を占める(写真=左)。2006年に15台のラックで運用していたサーバが、2010年には1つのラックで運用可能になる(写真=右)

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