ThinkPadでOptimus Technologyを使うメリットとは元麻布春男のWatchTower(2/3 ページ)

» 2010年10月18日 16時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

分かりにくいスイッチャブルから分かりやすいOptimusへ

 スイッチャブルグラフィックス機能搭載のThinkPadは、統合型グラフィックスコア採用モデルと外付けGPU搭載モデルのメリットを1台で兼ねられる上、切り替え時にシステムのリブートを必要としない。ベストに近い解決策と開発者側は考えていたが、予想に反してユーザーの評判はあまり芳しくなかったと、レノボ・ジャパンは述べている。

 自動切換えのスイッチャブルだけあって、いつ切り替えるのか、そのタイミングと条件が分からないことに加え、リブートは必要ないとはいえ、切り替え処理に数秒を要することにユーザーは不便を感じたという。しかも、切り替え処理の間、画面が真っ暗になることも、この機能の評判を悪くする一因となったらしい。このことが、ノートPCで利用するGPUを切り替えること自体に対する不安へとつながったようだ。

 切り替えるタイミングが難しいというと、「そんなバカな」と思うユーザーもいるかもしれない。しかし、グラフィックス性能を必要とするアプリケーションを外付けGPUで使っている途中でバッテリー残量が少なくなってきたとき、統合型グラフィックスコアに切り替えるかの判断は意外と難しい。いつ、外付けGPUから統合型グラフィックスコアに切り替えればいいのか、それとも、最後まで外付けGPUでいくべきなのか、という判断は、ケースバイケースで簡単に答えは出ない。そうした「運用の分かりにくさ」もあり、スイッチャブルグラフィックス機能は、あまり利用されないようになってしまったという。

 10月13日に発表された「ThinkPad T410s」と「ThinkPad T510」の一部モデルで採用されたNVIDIAの「Optimus Technology」は、上記の問題の多くを解決した(新モデルの発表はなかったが、「ThinkPad T410」の直販モデルでもオプションとして選択可能)。Optimus Technologyの最大のポイントは、GPU(ディスプレイコントローラ)をスイッチしない、という点にある。

 従来のスイッチャブルグラフィックス機能は、その名前の通り、統合型グラフィックスコアと外付けGPUで、ディスプレイコントローラを切り替えていた。切り替えるから、その処理に時間がかかるし、ユーザーもどうやって切り替えるかを考えねばならない。ならば、いっそのこと切り替え自体を止めてしまえという発想だ。

 もちろん、だからといって、両方を常にオンにしていては、バッテリー消費は今まで以上に多くなる。そこで、使わないときは外付けGPUをスリープさせて、必要なときだけ仕事をさせればいい。

 外付けGPUを呼び出すトリガーとなるのは、

1. DirectX API(Direct 2D/3D、および、DXVA)による呼び出し

2. CUDAのAPIによる呼び出し

3. プロファイルによる設定


 の3つだ。プロファイルはユーザーによる編集が可能で、例えば3Dグラフィックス処理を利用するアプリケーションであっても、外付けGPUの利用を禁止する設定も可能だ(プロファイルによる設定が優先される)。外付けGPUの描画結果は、専用のCopy Engineにより、PCI Expressバス経由で、ディスプレイコントローラを持つ統合型グラフィックスコアの(システムメモリ上にある)フレームバッファに転送される。

 ノートPCが搭載する液晶ディスプレイは、常に統合型グラフィックスコア(が利用するディスプレイコントローラ)に接続されているので、外付けGPUが有効でも統合型グラフィックスコアが有効でも切り替えは発生しない。また、専用のCopy Engineを搭載することで、外付けGPUのワーキングメモリ(外付けGPUのグラフィックスメモリ)からフレームバッファ(統合型グラフィックスコアが、フレームバッファとして利用するシステムメモリの領域)へのデータ転送作業で、外付けGPUがストールすることも回避できた。

Optimus Technologyでは、外付けGPUはPCI Express経由で描画データを統合型グラフィックスコアのフレームバッファへ転送する(写真=左)。データの転送には専用のCopy Engineを用いる(写真=中央)。Optimus Technologyの効果(写真=右)

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