“最強NAS”の究極形――QNAPとSSDで無音NASのメリットを追求する進化を止めない最強NAS 第2回(2/2 ページ)

» 2010年10月26日 17時00分 公開
[瓜生聖,ITmedia]
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SSDの省電力は常時稼働で効果を発揮――自宅環境に外からアクセスする

 SSDはHDDに比べ省電力であることも特徴の1つだ。ダウンロード以外にも「自宅にいないときに利用する」ための機能が活用できる。まずはマルチメディアステーションとiPad/iPhone用アプリ「QMobile」の連携だ。QMobileは前回紹介したとおり、マルチメディアステーション2と連携し、外出先などから自宅のマルチメディアコンテンツを活用できる。マルチメディアステーション2はインターネットブラウザから利用できるため、iPad/iPhoneを持っていなくても利用価値はある。

 そのほか、TurboNASを外出先から自宅へアクセスする際の窓口として利用する方法もある。Windowsにはネットワーク経由でデスクトップを利用できるリモートデスクトップが標準で搭載されているが、リモートデスクトップの利用ポートをインターネットに向けて開放することは危険が伴う。そこで、インターネットにはSSHのポートだけを開放し、それ以外のポートの通信はSSHで転送するポートフォワーディングを使えば、最小限のポート開放で済む。SSHでの通信は暗号化されるのもメリットだ。

 また、リモートデスクトップはOS標準機能ということもあって安心感が高いものの、セキュリティ上の理由により接続時にはICカードリーダが利用できなくなる。そのため自宅PCで地デジ録画がきちんとできているかを確認するためにリモートデスクトップで接続したとたんに失敗するというケースも見られる。回避方法としてはVNCなど別のリモート接続ソフトを利用することが挙げられるが、その場合もSSHポートフォワーディングの手法が有効だ。

前回紹介したQMbobileがバージョンアップし、iOS 3/4両対応となった(画面=左)。SSHポートフォワーディングを利用するにはリモートアクセス元にSSHクライアントを導入する。「PortForwarderはSSHポートフォワーディングに特化したクライアントだ(画面=中央)。TeraTermにもSSHポートフォワーディング機能がある。設定メニューからSSH転送を選択し、ローカルのポートを13389などに、リモート側ホストにリモートデスクトップで利用したいPCのIPアドレス、ポートはリモートデスクトップ(RDP)の3389に設定する。接続時にはリモートデスクトップの接続先をlocalhost:13389などに指定する(画面=右)

 ただし、このために自宅PCの電源を入れっぱなしにしておくのでは、せっかくのTurboNASとSSDの省電力性が台無しだ。普段は電源をオフにするか、スタンバイ/休止モードにしておき、SSHで外部からTurboNASにログイン、そこからWake On LANを使って復帰させるとよいだろう。

 Wake On LANはマジックパケットと呼ばれる特殊なパケットを送ることでPCの電源を投入する仕組みだ。地デジ録画用ソフトでは録画予定時刻前に自動的にスタンバイから復帰するものもあるが、自力では正常に復帰できないというトラブルも少なくない。定時実行を行うcronにWake On LANを設定し、録画前にTurboNASから立ち上げることも可能だ。時刻は決めうちになるが、録画設定ファイルの保存先をTurboNASにしておけば設定を読み取って自動的にWake On LANさせるスクリプトを書くことも難しくないだろう。

 1つ注意が必要なのは、TurboNASは起動時に設定ファイルを上書きするため、通常の修正方法で変更した設定は、管理画面からの変更を除いて再起動時にリセットされてしまうという点だ。オリジナルの設定ファイルはフラッシュメモリに書き込まれており、デフォルトの状態では編集することができない。そのため、SSHなどでログインしてから一時的にマウントし、起動スクリプトのautorun.shを書き込む必要がある。マウントするデバイスはモデルによって異なり、次のようになっている。

  • TS-201 ... /dev/mtdblock4
  • その他のARMモデル ... /dev/mtdblock5
  • x86モデル ... /dev/sdx6

 評価機に用いたTS-119の場合の手順は次のとおりだ。

# mkdir /tmp/config(存在しない場合のみ)

# mount -t ext2 /dev/mtdblock5 /tmp/config

 あとは「/tmp/config/autorun.sh」を作成、あるいは編集すればよい。初回作成時には実行権限の付け忘れに注意しよう。編集が完了したら誤操作を防ぐためにアンマウントしておく。コマンドは「umount /tmp/config」だ。

 起動時実行だけでなくcronでの定期実行も注意が必要だ。crontab -eで編集した内容は再起動時にリセットされてしまう。これもautorun.sh内で設定すればよい。以下は毎日23時50分にPCを起動するための設定の例だ。

#!/bin/sh

tmpfile=/tmp/crontab.tmp

crontab -l > $tmpfile

echo "50 23 * * * /opt/bin/wakeonlan xx:xx:xx:xx:xx:xx" >> $tmpfile

crontab $tmpfile

rm $tmpfile

/etc/init.d/crond.sh restart

Wake On LANの実装の一つ、perl-wakeonlanを導入。導入にはPerlやgdmパッケージが必要だが、自動的にインストールされる(画面=左)。自作のスクリプトを起動時に実行するにはQNAPediaの記事が参考になる(画面=右)

crontabの登録に関してもQNAPediaに記事がある。こちらのサンプルでは念のため独自追加した行を削除してから追加している(画面=左)。日本語の情報は「QNAP Club JAPAN」を参照してほしい。

24時間稼働のLinuxサーバとして活用する「TurboNAS」

 TurboNASは、NASであるとともにLinuxサーバでもある。ましてSSDにより省電力かつ無音となれば、NAS以上の使い方をしてこそ、その優位性が生かされる。再起動時の設定リフレッシュやディレクトリ構成などクセのある部分も多いものの、QNAPediaなどでさまざまな情報が公開・交換されており、ハックの一助となるはずだ。

 単にNASとしてだけの利用にとどめず、さまざまな機能を付加していくことでコストパフォーマンス、費用対効果は上昇する。購入したあとも「お得感」を追加していくことができるのもTurboNASの特徴の1つだ。

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