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» 2010年10月29日 17時56分 UPDATE

PDC10:PC依存からクラウドとモバイルにシフトするために必要なこと (1/3)

Microsoftの開発者向けイベント「PDC10」が、10月28日から29日にかけて行われる。OSの巨人は将来のためにクラウドとモバイルの活路を開けるのだろうか。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

オジー氏の動向が示すMicrosoftの進む道

 10月18日に発表された“レイ・オジー氏のMicrosoft退社計画”は、「業界の動向に影響を与え、かつ、その存在が象徴的であった重要人物がMicrosoftを去った」という事実とともに、Microsoftが現在置かれている立場と、そこで直面している問題を示している。

 Lotus Notes(現在はIBM傘下)の開発で知られるオジー氏は、PCによる企業のクライアント/サーバシステムの礎を築いた人物として評価されている。Microsoft CEOのスティーブ・バルマー氏も、彼を同社がWindowsでソフトウェア業界のトップ企業となった最大の功労者の1人として挙げている。

 後にオジー氏は、MicrosoftによるGroove Networksの買収によって同社に参加し、技術アドバイザーとしてCTOに就任した。さらに、2006年にはビル・ゲイツ氏の名誉職であったチーフ・ソフトウェア・アーキテクト(CSA)の2代目に就任し、「Microsoftの顔」の1人として活動していた。

 しかし、オジー氏は、クライアント/サーバを中心としたPCの世界に限界を感じており、P2P技術やWebを利用したPCを含む各種デバイスの連携を模索していたといわれている。こうした考えを持つ「Microsoftの顔」であっても、巨大なMicrosoftのビジネス構造を内部から変革するのは難しかったようだ。

 自分のブログでオジー氏は、「Dawn of a New Day」というタイトルで、Microsoftに在籍した5年間で達成できなかったものが多数存在することを認めており、同時に次の「ポストPC時代」に向けたメッセージを残している。折りしも11月20日は1985年のWindows 1.0発売から25周年にあたる。Microsoftはどこに向かうのだろうか? 10月28〜29日(現地時間)にかけて米ワシントン州レドモンドのMicrosoft本社キャンパスで開催されている「PDC10」の基調講演から、このポストPC時代に向けて同社が何を目指しているのかを探ってみよう。

これまでとは“性格”が変わったPDC

 PDCといえば、Microsoftが今後発売する製品や技術を開発者に対して事前に公開し、今後数年かけて登場するこれら製品と技術に備えるためのイベントとして知られている。事実、過去10年にわたり隔年で実施されたPDCでは、最新のWindowsやサービスの概要やβ版が公開されるなど、「今後数年先のMicrosoft」を知る貴重な情報源となっていた。

 だが、情報が先行しすぎて完成までの時間が開きすぎたり、実際に発売された製品から多くの機能が削除された「Windows Vista」の苦い教訓からか、最近では、情報を一度に公開せず、適時必要な段階で小出しにするスタイルに変更している。

 こうした背景を受けたのか、今回のPDC10ではこれまでような数万人規模の参加者を巨大なコンベンションセンターに受け入れる形式ではなく、参加者を数千人程度に制限した小規模なイベントとなった。開催期間も2日間と短く、ここで実施された基調講演や技術セッションは、ライブストリーミング、またはオンデマンドで世界中の開発者がいつでも閲覧できるようになった。日本では、東京都内で「PDC10 Japan」という形で11月25〜26日にかけてフォローアップが行われるので、興味あるユーザーは参加してみてほしい。

「ポストPC」時代のデバイスとWeb戦略

kn_pdc10_1.jpg 米Microsoft CEOのスティーブ・バルマー氏

 PC向けのWindows OSは、依然としてMicrosoftの大きな柱の1つだが、PCプラットフォームに固執するのではなく、携帯電話からゲーム機まで幅広いデバイスをカバーし、そのバックエンドを支えるシステムとしてのクラウドコンピューティングやオンラインサービスを強化していくのが、これから同社が取り組む戦略の中心となる。

 PDC10の基調講演で登場した米Microsoft CEOのスティーブ・バルマー氏は、こうした異なるデバイスを横断する標準技術としてMicrosoftがHTML5を推奨していることを強調したほか、デバイス戦略の最新成果としてWindows Phone 7搭載スマートフォンの販売が世界で開始されたことを訴求した。

 HTML5技術に対するMicrosoftの姿勢を端的に表すのが、同技術への対応を重要な機能とするInternet Explorer 9(IE9)で、PDC10ではその最新状況が報告された。プレゼンテーションを行ったのはIEチームを率いるディーン・ハチャモビッチ氏で、その内容は9月に開催されたIE9β版発表イベントと同じで、ハードウェアアクセラレーションの強化を強調し、そのパフォーマンスが競合Webブラウザよりも優れていることをアピールする。

 PDC10では最新バージョンとなるPlatform Preview 6(PP6)が公開され、この機能の一部が紹介された。PP6では、HTML5の標準サポートがさらに進んでおり、この機能の1つである「CSS3 2D Transforms」のデモが基調講演で行われた。これは、2Dオブジェクトの拡大縮小や回転が容易に行える仕組みで、デモではアルバムの写真にカーソルをフォーカスすると、画像が拡大しながら少し傾いた状態でアニメーションする処理が見られた。なお、PP6はIE Test DriveのWebページからダウンロードできる。

kn_pdc10_2.jpgkn_pdc10_3.jpg PCだけでなく、スマートフォンとゲーム機も包含するデバイス戦略と、それを支えるバックエンドのクラウドコンピューティング/オンラインサービスが将来のMicrosoftの柱となる(写真=左)。IE9β版の実行画面。フロントエンドでアニメーション付きのメニュー画面を動かしつつ、背景でフルスクリーンの動画再生を行ってもパフォーマンスが落ちない(写真=右)

kn_pdc10_4.jpgkn_pdc10_5.jpg PDC 10では、IE9 Platform Preview 6(PP6)が登場した。PP6ではHTML5向けの機能実装がいくつか強化されている。例えば、CSS3 2D Transformsにより、対象オブジェクトの拡大縮小や回転がスムーズに行える

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