どこから見ても裸眼で3D立体視が可能なノートPCが登場する?FPD International 2010

» 2010年11月11日 23時30分 公開
[ITmedia]

 幕張メッセで開催中のフラットパネルディスプレイ展示会「FPD International 2010」では、ディスプレイメーカー各社による「3D」をテーマにした大型デモンストレーションや、電子書籍端末に採用される電子ペーパーなどの展示が見どころだ。3D対応ディスプレイではよりいっそう広視野角・高解像度化が進み、電子ペーパーはカラー対応モデルが電子書籍端末に搭載されていくと予想される。

 2010年のトレンドを象徴するように、“3D”と“電子ブックリーダー”がクローズアップされた今回のFPDだが、PC向けのディスプレイでも一部ユニークな試作機が出品されていたので紹介していこう。

FPD International 2010の注目トピックは、3D対応の次世代機や有機ELパネル、電子ペーパーなど。このほか、奥行きわずか2.6ミリの42型LEDバックライト液晶(写真=左)や、タッチパネルと3D液晶(視差バリアパネル)を一体化することで薄型化を実現した裸眼3D液晶(写真=中央)、モノクロとカラーの同時表示が可能な電子ペーパー(写真=右)なども注目を集めていた

AUOが“全視野角”の裸眼3DノートPC向けパネルを展示

 AU Optronicsのブースでは、“deadzone-free”を実現した裸眼3D対応ノートPC向けのパネルが展示されていた。通常、裸眼立体視では視野角の制限が非常に厳しいため、視点の距離と位置が固定になりやすい小型端末に適しているといえるが、AUOが参考出品していたのは、“デッドゾーンフリー”の言葉通り、裸眼3Dでありながらユーザーがどの位置にいても立体視できるユニークな製品だ。従来の裸眼3D対応ディスプレイに比べると奇妙な印象を受けるが、これはノートPCの液晶上部に内蔵されたカメラでユーザーの視点をリアルタイムに追跡する技術とLenticularレンズを組み合わせることで実現しているという。

 この仕組みを使えば、パネルの視野角にあわせて、立体視に最適な位置へユーザーが移動する必要はなくなるため、例えばソファに寝そべっていても裸眼で3D立体視を楽しめるようになる、というわけだ。また、製品デモでは、Webブラウザ上に3D映像コンテンツを表示し、映像のみを3D、そのほかは2Dと、同時に表示する場面も見られた。

 この裸眼3Dパネルは現在、ノートPC向けに15.4型ワイド(1920×1080ドット/3D表示時は1366×768ドット)、タブレット端末向けに10.1型ワイド(1280×800ドット/3D表示時は900×560ドット)が開発されており、同社のスタッフによれば2011年第2四半期から量産される予定という。具体的なノートPCへの搭載予定は明かされなかったが、まずはグループ会社のBenQがノートPCに採用する可能性はありそうだ。

AUOのブースには、全視野角対応の裸眼立体視パネルとして、10.1型ワイドと15.4型ワイドのディスプレイが展示されている。Youtubeで3D立体視対応コンテンツを表示し、3Dと2Dを同時に表示するデモも行われていた。Lenticularレンズを使って裸眼による立体映像を作り出し、ノートPCの内蔵カメラでユーザーの眼球位置を追跡することにより視野角の狭さを吸収している。ちなみに、カメラを手で覆えば瞬時に立体視できなくなる。基本的に1人での利用が想定されているようだ

 このほか、ノートPC向けディスプレイでは、Chimei Innoluxが展示していた1920×1080ドット表示の3D対応(120Hz駆動)17.3型ワイド液晶や、SAMSUNGの10.1型プラスチック液晶なども目を引いた。特に後者は厚さが約1.8ミリと非常に薄く、軽くて壊れにくいのが特徴。解像度は1024×600ドットで、輝度は250カンデラ、コントラスト比は1000:1と、パネル自体の性能は通常のガラスを用いた液晶と遜色ない。展示台には薄型ノートPCとタブレット端末の試作機が並んでいた。

Chimei Innoluxは、アクティブシャッター方式の3D立体視に対応する1920×1080ドット表示の17.3型ワイド液晶を展示(写真=左)。ガラスの代わりにプラスチックを採用した10.1型液晶は、モジュールの厚さがわずか1.799ミリと非常に薄い

NextWindowが日本市場に向けた取り組みを説明

NextWindowマーケティングエバンジェリスト、ジェフ・ウォーカー氏

 一方、FPD International 2010が開幕した11月11日には、光学式タッチスクリーンの開発で知られるNextWindowが、同社の事業戦略および製品を紹介するプレス向け説明会をFPD会場に隣接するホテルで実施した。同社はWindows 7が発売された2009年以降、マルチタッチ対応ディスプレイの需要にあわせて急激に成長した企業だ。主要顧客としてDELLやHP、Lenovo、SAMSUNGを抱え、国内にもソニーやNECなど、同社の技術を使ったマルチタッチ対応一体型PCを販売するメーカーは多い。NextWindowは2010年4月に、インタラクティブ・ホワイトボードで高いシェアを持つSMART Technologiesの傘下に入っている。

 NextWindowでマーケティングエバンジェリストを務めるジェフ・ウォーカー氏は、光学式タッチスクリーン技術を採用した製品はタッチデバイス市場全体で4番手に成長するとの見方を示し、同社が最も注力するコンシューマー向けデスクトップ(オールインワンとPC用ディスプレイ)においては、2010年(580万台)から2011年(1280万台)で約2倍になるだろうと予測する。また、デジタルサイネージや教育機関向けとなる30インチから120インチまでの大型タッチディスプレイでも、2013年には300万台、1年あたり100%の成長が続くと分析している。こちらの主要技術と見込まれているのも光学式タッチスクリーンだ。

タッチ市場全体の市場予測(写真=左)。オールオンワンPCとデスクトップPC向けディスプレイにおけるタッチスクリーンの市場規模(写真=中央)。30インチ以上の大型タッチディスプレイ市場予測(写真=右)

VAIO Lを使ってデモを行うデイビッド・ヴィラリーナ氏

 光学式タッチ技術は、ディスプレイ上部に2つのイメージセンサ(カメラ)を配置し、ディスプレイを囲むリフレクターからの反射光によって、三角法によりタッチポイントを検出する仕組みだ。その構造上、加圧の必要がなく、指やデジタイザといった種類を問わず、タッチするオブジェクトの大きさを認識でき、かつ既存の液晶ディスプレイに組み込んだり、容易に大型サイズ(100インチ)まで拡張できるなど、コストパフォーマンスに優れるという利点がある。

 同社のマーケティングマネージャー、デイビッド・ヴィラリーナ氏は、光学式タッチスクリーンを採用したソニーの液晶一体型PCを使って、縮小/拡大、回転などのマルチタッチ機能をはじめ、円弧がスムーズに描ける高速なレスポンスや、入力に使う筆の種類によってドローソフトのペン先の太さを変更するデモを行い、光学式タッチスクリーンのメリットを強調した。

 一方、今後はディスプレイとタッチ面の段差の縮小やジェスチャーコントロール、また、2012年にリリースされるWindows 8向けの機能向上にも注力していくという。特に現段階の光学式タッチスクリーンは、2本指までの操作に制限されているため、Windows 8の要件としてさらに多くの同時タッチ入力が課せられた際は、技術的課題になりそうだ。また、ゲーム用途向けにレスポンス速度のさらなる向上もめざすとしている。

指ですっと円弧を描けるレスポンスの高さ(写真=左)や、入力に使うオブジェクトのサイズを認識できる点(写真=中央)、加圧する必要がない点(写真=右)などを強調するデモが行われた

 なお、同社は2010年に日本オフィスを開設しているが、ウォーカー氏はその経緯を「多数のOEMメーカーが存在する日本は我々によって非常に重要な市場だ」と説明し、日本およびアジア市場での販売とサポートを強化していくと抱負を語った。

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