2011年版セキュリティソフト徹底比較(第2回)システムへの負荷はどれくらい?(4/4 ページ)

» 2010年11月16日 09時14分 公開
[松岡宣,ITmedia]
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ImageXによるイメージ展開速度

 次に測定したのはWindows AIKのImageX(imagex.exe)を使用したWindows 7のインストールイメージ展開速度だ。インストールイメージはHDDにコピーしたものを使用しており、ここまでと同様に同一の物理ドライブ内での処理となる。ただし展開処理が入るため、バッファによるパフォーマンスへの影響は単純なコピーよりも低くなる。「I386」フォルダのコピーと同様に、既知の安全なファイルをスキップする機能を持ったセキュリティソフトが有利になるはずだ。

 また、読み込みキャッシュの効果はほとんど見られないが、連続実行するとインストールイメージの一部分が読み込みキャッシュに残るので、展開が1回完了するたびにフォーマットしてWindows 7を再起動している。表はこれを1セットとして5セット実行した結果だ。

 なお、コマンドラインはスクリプトから実行しているが、KIS 2011ではプロアクティブディフェンス機能を有効にしたままでは展開が正常に完了しなかった。そのため、表ではプロアクティブディフェンスを無効にした状態での実行結果を使用している。この問題はスクリプト(WSHスクリプトおよびバッチファイル)からImageXを呼び出した場合にのみ発生するようで、直接ImageXを実行した場合には正常に実行可能だった。

 結果としてはESET V4.2が最も高速で、未インストール状態から約14パーセントの速度低下となった。処理時間も安定しており、各回のテストで大きなばらつきもない。これにNIS 2011とKIS 2011が続く。

 成績が悪かったのはウイルスバスター2011とマカフィー2011で、50パーセント以上の速度低下がみられた。特にウイルスバスターは処理速度のばらつきが大きく、2回目のテストで未インストール状態の2倍以上時間がかかったことがトータルの結果に大きく影響している。

ImageXによる展開速度(分:秒:ミリ秒) 未インストール NIS 2011 G Data 2011 PC Tools 2011 ESET V4.2 ウイルスバスター 2011 KIS 2011 マカフィー 2011
1回目 6:54.088 7:57.564 12:22.765 9:28.360 7:58.702 8:53.396 8:14.474 9:49.494
2回目 6:51.060 8:15.113 8:44.863 9:22.057 7:48.750 13:42.028 7:52.852 10:37.433
3回目 6:52.231 8:10.542 8:45.175 8:59.627 7:49.982 9:59.244 7:53.430 11:03.235
4回目 6:49.142 8:14.443 9:07.701 9:00.188 7:45.785 9:58.620 7:55.146 11:15.044
5回目 6:47.644 8:05.972 9:02.741 9:04.219 7:47.704 9:53.597 9:13.162 11:38.258
最短 6:47.644 7:57.564 8:44.863 8:59.627 7:45.785 8:53.396 7:52.852 9:49.494
最長 6:54.088 8:15.113 12:22.765 9:28.360 7:58.702 13:42.028 9:13.162 11:38.258
平均 6:50.833 8:08.727 9:36.649 9:10.890 7:50.185 10:29.377 8:13.813 10:52.693
低下率 0 19.0% 40.4% 34.1% 14.4% 53.2% 20.2% 58.9%
順位 - 2 5 4 1 6 3 7
ESET V4.2が14.4パーセントの速度低下で1位、これにNIS 2011とKIS 2011が続く。ここまで常に上位を維持していたウイルスバスター2011が6位となり、順位を大きく下げた

 CPU使用率の面ではESET V4.2が最も影響が小さく、KIS 2011、PC Tools 2011、NIS 2011の順で続いている。このテストではCPU使用率の低さが結果に結びついたと考えてよいだろう。G Data 2011も2回目以降はCPU使用率が大幅に低下し、展開速度が高速化している。

NIS 2011(画面=左)。G DATA 2011(画面=右)

PC Tools 2011(画面=左)。ESET V4.2(画面=右)

ウイルスバスター2011(画面=左)。KIS 2011(画面=右)

マカフィー2011(画面=左)。ImageXによる展開は、CPU使用率の低いものほど高速に実行できる傾向がみられた(画面=右)

アプリケーションの起動速度

 アプリケーションの起動速度テストでは、Word 2007で475Kバイトのマクロ有効文書(*.docm)を開き、読み込みが完了するまでの時間を測定した。文書には読み込み時にWordを終了するコードをVBAで記述しておき、WSHスクリプト(JScript)で実行時間を測定した。テストは連続5回の実行を1セットとし、完了後にWindows 7を再起動して合計5セット実行している。

 各セット1回目は文書や実行ファイルなどがキャッシュされていない状態を見るためのものだ。大きな差ではないものの、G Data 2011とPC Tools 2011を除くすべてのセキュリティソフトで、未インストール状態よりも短時間で起動が完了している。未インストール状態よりも高速化したのにはさまざまな要因が考えられるが、ウイルスチェックにより文書全体が先読みされた点が有力だ。G Data 2011とPC Tools 2011についても未インストール状態との差はごくわずか。一番速かったKIS 2011と比較しても、PC Tools 2011は20パーセント遅いだけなので、ほぼ横並びと考えていいだろう。

Word 2007の起動時間各セット1回目(秒:ミリ秒) 未インストール NIS 2011 G Data 2011 PC Tools 2011 ESET V4.2 ウイルスバスター 2011 KIS 2011 マカフィー 2011
1回目 17.206 15.210 17.113 20.358 15.039 15.444 17.706 15.319
2回目 16.349 15.600 15.787 17.153 15.490 15.958 16.068 15.304
3回目 16.536 15.615 15.553 16.828 15.631 15.912 16.318 15.070
4回目 16.489 15.335 17.737 17.239 15.179 16.286 16.177 15.350
5回目 16.521 15.725 17.753 17.599 15.257 16.060 16.068 14.944
最短 16.349 15.210 15.553 16.828 15.039 15.444 16.068 14.944
最長 17.206 15.725 17.753 20.358 15.631 16.286 17.706 15.350
平均 16.620 15.497 16.789 17.835 15.319 15.932 16.467 15.197
低下率 0% -6.8% 1.0% 7.3% -7.8% -4.1% -0.9% -8.6%
順位 - 3 6 7 2 4 5 1
Word 2007の起動時間各セット1回目。G Data 2011とPC Tools 2011以外はすべて未インストール状態よりも短時間で起動が完了している。ウイルスチェックにより文書が先読みされたことが原因ではないかと思われる

 一方、各セット2〜5回目の起動時間については未インストール状態が最速になり、ほかの順位も入れ替わっている。パーセンテージで見ると大きな差があるように感じられるが、実際には100ミリ秒単位の差でしかない。ただし、PC Tools 2011だけ速度低下が激しく、実行時間のばらつきも大きかった。なお、このテストは処理時間が短く、サンプルの数が十分でないため掲載しないが、ESET V4.2とNIS 2011のCPU使用率が特に低かった。

Word 2007の起動時間1セット2〜4回目(秒:ミリ秒) 未インストール NIS 2011 G Data 2011 PC Tools 2011 ESET V4.2 ウイルスバスター 2011 KIS 2011 マカフィー 2011
1回目 1.669 2.012 3.027 5.743 1.638 2.216 2.059 2.200
2回目 1.576 2.028 2.589 4.093 1.669 1.981 2.044 1.841
3回目 1.700 1.856 2.559 3.098 1.965 2.043 1.919 2.012
4回目 1.685 2.028 2.543 2.872 1.732 2.028 2.184 2.075
最短 1.576 1.856 2.543 2.872 1.638 1.981 1.919 1.841
最長 1.700 2.028 3.027 5.743 1.965 2.216 2.184 2.200
平均 1.658 1.981 2.680 3.952 1.751 2.067 2.052 2.032
低下率 0% 19.5% 61.7% 138.4% 5.6% 24.7% 23.8% 22.6%
順位 - 2 6 7 1 5 4 3
Word 2007の起動時間1セット2〜4回目の結果。読み込みキャッシュの効果があらわれる各セット2回目以降の起動では、未インストール状態が最速となった。ただし、1位から6位までが1秒以内に並んでおり、ほぼ横並びの状態だ

パフォーマンスの高いセキュリティソフトは?

 今回のテストでパフォーマンスが最も良好だったのはNIS 2011という印象だ。1位になったテストは2つだけだが、順位の低いテストでも極端にパフォーマンスが低下することがなく、全体的に良好な結果を残した。メモリ使用量が少ない点もポイントだろう。次点としてKIS 2011とウイルスバスター2011が挙げられる。なお、ESET V4.2はメールボックスのコピーで極端に長い時間がかかってしまったため判断が難しいところだが、2つのテストで1位になっており、ほかのテストでも上位に入ることが多かった。

順位、パフォーマンス低下率のまとめ NIS 2011 G Data 2011 PC Tools 2011 ESET V4.2 ウイルスバスター2011 KIS 2011 マカフィー 2011
Windows 7起動時間 低下率 28.70% 31.30% 18.10% 20.00% 10.20% 15.50% 37.00%
順位 5 6 3 4 1 2 7
起動5分後の空きメモリー 未インストール状態との差(MB) -28.8 -290.9 -276.8 -105.5 -68.7 -117.3 -143.3
順位 1 7 6 3 2 4 5
I386フォルダーコピー1回目 低下率 -17.40% 78.20% 35.00% -16.90% -27.50% -14.80% 20.80%
順位 2 7 6 3 1 4 5
I386フォルダーコピー2〜5回目 低下率 1% 60% 174% 26% 14% 29% 24%
順位 1 6 7 4 2 5 3
メールボックスコピー1回目 低下率 22.80% 67.80% 22.30% 150.00% 4.10% 15.60% 48.40%
順位 4 6 3 7 1 2 5
メールボックスコピー2〜5回目 低下率 22.10% 35.90% 51.50% 341.20% 30.80% 18.80% 52.90%
順位 2 4 5 7 3 1 6
イメージ展開速度 低下率 19.00% 40.40% 34.10% 14.40% 53.20% 20.20% 58.90%
順位 2 5 4 1 6 3 7
Word起動速度(1回目) 低下率 -6.80% 1.00% 7.30% -7.80% -4.10% -0.90% -8.60%
順位 3 6 7 2 4 5 1
Word起動速度(2〜5回目) 低下率 19.50% 61.70% 138.40% 5.60% 24.70% 23.80% 22.60%
順位 2 6 7 1 5 4 3

 続く第3回ではウイルス検知率について比較していく。







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