「新技術でオンリーワンを目指す」――三菱が“ブレない”23型IPS液晶「VISEO MDT231WG」を投入IPS×倍速補間×LEDバックライト制御でゲームが快適

» 2010年11月16日 21時53分 公開
[後藤治,ITmedia]
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MDT231WG

 三菱電機は11月16日、1920×1080ドット表示対応の23型ワイド液晶ディスプレイ「VISEO MDT231WG」を発表した。発売日は11月30日。価格はオープンで、実売は11万8000円前後になる見込みだ。

 MDT231WGは、動画やゲーム用途向けに、LEDバックライト制御と倍速駆動/倍速補間を組み合わせた動画ブレ低減技術「MP ENGINE III」を搭載しているのが最大の特徴。このクラスの液晶ではTN方式を採用した「RDT232WM-Z」などがすでに倍速駆動と倍速補間の両方に対応しているが、上下/左右178度の広視野角を持つIPS方式では今回が初めて。また、LEDバックライト制御も業界初の機能になる。

 同日行われた製品発表会では、三菱電機のリビング・デジタルメディア事業本部 デジタルメディア事業部 モニター事業センター長の村田光司氏がMDT231WGの特徴を解説した。

業界初のLEDバックライト制御で動画をなめらかに表示

三菱電機のリビング・デジタルメディア事業本部 デジタルメディア事業部 モニター事業センター長 村田光司氏

 MDT231WGのポイントは大きく分けて、動画ブレ低減技術「MP ENGINE III」、超解像技術「ギガクリア・エンジンII」、パネル回転機構「リフティングターン」、5ワットサブウーファ内蔵の4つ。このうち、特に注力しているのがゲーム用途に最適なMP ENGINE IIIだ。村田氏は、VISEOシリーズの訴求点として「ゲームに関心を持つヘビーユーザーも満足できる動画性能」を挙げ、今回のMDT231WGは「ゲームユーザーに圧倒的に満足していただけるよう開発した」と語る。

 MP ENGINE IIIには、2種類のLEDバックライト制御と倍速補間の組み合わせで、3つのモード(MP MODE レベル1/2/3)が用意される。例えば、スポーツやアクション、レーシングゲームに適したレベル3では、120Hzで駆動し(1フレーム目と2フレーム目が同じ単純2度書き)、バックライトを1フレーム内の一部(最後)でしか点灯しない「LEDバックライトブリンキング」を組み合わせて、ブラウン管に似たぼやけ感のない動画表示を可能にしている。残像感の指標となる“動画応答速度”(MPRT:Moving Picture Response Time)の比較で見ると、一般的なTNパネルが22msであるのに対して、MP ENGINE IIを搭載する「MDT243WGII」が10ms、MDT231WGではさらにその半分の5.5msを達成したという。

LEDバックライトブリンキングは、液晶ディスプレイにおいて前のフレームが次のフレームの更新まで光り続けるホールド型表示のために見えてしまう残像をバックライトの消灯により抑制する仕組みだ。インパルス型表示のCRTに近い動画表示になる。

 レベル2は動画の画質を最も重視したモードで、映像の前後フレームから差分を計算し、新しく中間フレームを生成して120Hz駆動にする倍速補間を行い、フレームごとに帯状の黒を上から下へスクロールさせるように挿入する

LEDバックライトスキャニングを組み合わせて、“240Hz相当”の非常になめらかな動画表示を実現したという。画質重視のロールプレイングやアドベンチャーゲーム向きのモードだ。ただし、画像予測から補間するまでのバッファが必要なため、表示の遅延が発生しやすいというデメリットもある。一方、レベル1は遅延が許されないFPSゲームなどに適したモードで、120Hz駆動にLEDバックライトスキャニングを組み合わせることにより、表示遅延を抑制している。

レベル2は倍速補間とLEDバックライトスキャニングを組み合わせてなめらかな映像を表示する(写真=左)。製品デモを見た印象では、MP MODE レベル3は動画ブレをほとんど感じず、草原や建物の壁など細かいオブジェクトもくっきりと表示されていた。ただし、LEDバックライトの点灯時間が極端に短くなるため、ほかのモードに比べて輝度がかなり落ちる。同社の話では通常(350カンデラ/平方メートル)の半分以下になるようだ(写真=中央)。TNパネルを採用した従来モデルとの比較(写真=右)

新ギガクリア・エンジンIIや音質重視のサブウーファを搭載

 独自の画像処理により映像の解像感を上げる超解像技術も「ギガクリア・エンジンII」に進化し、3つの新機能が追加された。1つがソース映像の解像度を判別して、補正の強弱を自動調整する機能、2つめが白とびや黒つぶれの部分を検出してエリアごとにコントラストを細かく調整する機能、3つめが肌色検出で、人間の肌のように解像度を上げることで逆に荒れて見える部分は抑制するようになった。このほか、これまでのノイズリダクションが進化する形で、インターネット上の動画にありがちなブロックノイズを低減する処理も加わっている。

 一方、本体についてもユニークな機構が採用された。縦スクロールゲームに便利なディスプレイの回転だが、MDT231WGでは画面を回転させてもディスプレイ基部の位置が変わらない「リフティングターン」仕様になっている。これはディスプレイの下部に3ワット+3ワットのステレオスピーカーと、低音部を強調する5ワットのサブウーファが搭載されているためだ。ディスプレイの向きで音の鳴る位置が変わることがないほか、「低音の効果は接地面から離れると弱くなる」という特性を考慮したという。なお、背面は3軸機構になっており、回転だけでなく高さ調節も行える。

基底部の位置を変えずにディスプレイが回転する「リフティングターン」機構を採用(写真=左)。背面右側に回転をロックするスライドスイッチがある(写真=中央)。リフティングターンの使い方はOSDメニューに組み込まれており、すぐに参照できる(写真=右)

映像インタフェースは、HDMI×2とDVI-D、アナログRGB、D5、Sビデオ/コンポジットが左側面にまとめられている(写真=左)。基部に3ワットのステレオスピーカーと5ワットのサブウーファを内蔵。OSDメニュー操作ボタンもここに並び、画面回転の影響を受けない(画面=中央)。付属リモコン。MP MODE切り替えボタンがある(写真=右)

マルチメディア事業を軸に新技術で業界をリードする

三菱電機リビング・デジタルメディア事業本部 デジタルメディア事業部長の田村直己氏

 発表会の冒頭では、リビング・デジタルメディア事業本部 デジタルメディア事業部長の田村直己氏が同社のディスプレイ事業における基本戦略を説明した。田村氏は2008年度から2010年度までの国内ディスプレイ市場を概観して、「景気後退の影響で2009年に落ち込みが見られるが、回復基調にあわせて法人需要が全体を押し上げている。店頭系需要はほぼ横ばいで推移するだろう」と分析。そうした状況の中、同社は「販売金額シェアで20%強を維持し、直近では店頭販売と法人の両方でトップの座にある」と堅調な業績をアピールする。

 続いて田村氏は、同社の製品群を4つのセグメント(グラフィック/パブリックディスプレイ/マルチメディア/スタンダード)に整理し、現在「主にカラーマッチングなどの静止画用途向け製品を展開するグラフィック事業と、デジタルサイネージに代表される32〜65インチまでの大型ディスプレイを扱うパブリックディスプレイ事業、そしてゲームやBlu-rayタイトルを楽しむ個人層をターゲットにしたマルチメディア事業の3つを強化セグメントとして位置付けている」と説明。同社が公開したスライドによれば、グラフィック/パブリックディスプレイ/マルチメディアの3事業で構成される強化セグメントの台数構成比が、2007年の23%から2010年の48%へとほぼ2倍に倍増しており、同社のディスプレイ事業が大きくシフトしていることを裏付けている。

 その中でも特に注力しているのが、今回投入されたMDT231WGに代表されるマルチメディア事業だ。同社はHDMI端子搭載モデルを“マルチメディア対応”と定義し、2010年度の出荷台数(店頭のみ)で66万台と推測されるHDMI端子搭載ディスプレイの市場で、多機能と画質を武器に動画画質にこだわるユーザーへ訴求していく。村田氏はこれまでのMP ENGINEやギガクリア・エンジンなどの技術を振り返り、「常に新しい技術の投入を心がけ、非常に多くの業界初を実現した。今後も三菱電機のポジショニングとしてこれを継続する。新しい技術でオンリーワン製品を提案したい」と語った。

国内ディスプレイの市場動向。景気後退の影響で2009年度は落ち込みも見られるが、2010年度は法人需要の回復が全体を押し上げてほぼ横ばいに推移すると予想される(写真=左)。三菱電機の販売金額シェアの推移(写真=中央)

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