“リモートアクセスって何?”という人でもカンタンに──“どこでもPC”機能「Lui」の進化ポイントを探る自宅のPCをちょちょいと遠隔操作(2/4 ページ)

» 2010年11月26日 11時00分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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家庭内利用ならより簡単に、リモートでの電源ONもWOLでサポート

── Luiをより多くの人に使ってもらう、つまりユーザー層を広げるために工夫・取り入れた新たな機能などあれば教えてください。

堤氏 NECのPC全シリーズに対応ということで、利用するユーザー層もかなり広がります。前述の通りソフトウェア化そのものと「簡単導入設定」の作り込みにより、かなり簡単に導入できるようになっています。

 2010年秋冬モデル以降のNEC製PCでは、デスクトップ上のLuiアイコンをクリックするとインストールマニュアルが表示され、図版入りのマニュアルの指示に従いながら気軽に初期導入の作業が行えます。家庭内LAN内のみで利用するシーンであれば、それぞれのPCにサーバ(操作される側)/クライアント(操作する側)ソフトをインストールし、4ケタの数字を互いのPCに入力するだけでサーバ側PCとクライアント側PCの認証も完了。あとは、クライアント側PCに自動的に追加された「親機に接続」というアイコンをダブルクリックするだけです。

大貫氏 従来のハードウェア版(専用サーバボード搭載PC)は、サーバ側PCの電源がオフ(専用サーバボードのみが待機状態)でも、クライアントPC側から電源をオンにできましたが、ソフトウェア版はそれと同じ仕組みは使えません。

 そこで、サーバー側PCはLAN経由でPCの電源を入れるWake On LAN(WOL)とブロードバンドルータのダイナミックDNS機能を用いて電源を入れられるようにしました。ブロードバンドルータはダイナミックDNS対応のNECアクセステクニカ「AtermWR8370N/WR8170N」、プロバイダはBIGLOBE(NECビッグローブ)会員向けのダイナミックDNSサービスなど、NECグループ内の製品とサービスで外出先からでも自宅PCの起動が行えるようになっています。

堤氏 さらに手軽に使ってもらうため、サーバ側PCには「リモートスクリーンメニュー」としてデスクトップ上に配置するガジェットも用意しました。クライアント側PCからの接続を拒否したり、自動でスリープや休止状態に移行しない設定に簡単に切り替えられるようになっています。

 といいますのも、サーバ側PCは多くの場合リモートスクリーン専用ではないと思いますので、使用中はクライアント側PCからの接続を拒否する機能も必要です。また、スリープや休止への移行タイミングの設定はWindowsの設定でも可能ですが、使う時だけ設定し、また元に戻すのはけっこう手間です。リモートスクリーンメニューを使えば簡単なマウス操作だけ使用時と常時待受状態を容易に切り替えられますので、外出前などにもさっと操作できるのがポイントです。こちらは、WOLを用いてPCのリモート電源オン/オフまでは制御しなくてもいい人に便利です。

手軽さだけでなく快適さも追求した「GPUパワーモード」「モーションベクター方式」

photo NVIDIAのCUDAテクノロジを利用する「GPUパワーモード」。標準モードでは使用できない、DirectXを利用したアプリケーションの画面も転送できる(ただし、残念ながら著作権保護が必要なソフト・データは非対応)。2010年11月現在、GeForce GT 330搭載グラフィックスカードを搭載する「VALUESTAR L VL750/CS」とGeForce GT 330M搭載「VALUESTAR W VW970/CS」がある

── では、Luiの新機能の1つ「GPUパワーモード」とはどんな機能でしょうか。

堤氏 GPUパワーモードは、NVIDIA製GPUの機能を利用してLui機能のパフォーマンス向上を図るものです。サーバ側で必要とする画面キャプチャと転送に必要な画面の差分の検出の処理を、GPUでまかないます。サーバ側のリモートスクリーン処理をすべてCPUのみで行う場合、クライアント側のディスプレイ解像度に関わらず1280×768ドットでの出力が初期値になりますが、GPUパワーモードはそれより高い解像度──例えばフルHDの1920×1080ドットにしても余裕があります。

 また、GPUパワーモードであればDirectXで描画された部分もキャプチャできますし、カスタマイズしたマウスカーソルの形状などもリモートスクリーンに普段と同様に反映されます。DirectXというと主にゲームで利用しますが、このほかにWindows 7の標準機能であるWindows LiveフォトギャラリーなどもDirectXを使います。動画系アプリケーションを使いたい場合は、GPUパワーモードにする利点がかなり生きてきます。

── リモートスクリーンの最適化のため「モーションベクター方式」を用いたとあります。こちらは何でしょうか。

大貫氏 サーバ側PCからクライアント側PCへリモートスクリーンデータを転送するにあたり、そのままのデータを送るのではなく、データ量を圧縮して最適化を行います。画面はウインドウを移動させたり、ウインドウ内でスクロールといった動く部分と、デスクトップ画面やメニューバー部分など動かない(表示内容に変化がない)部分がありますが、その部分の検出と処理を行って送信データを最適化する仕組みです。

 詳細な検出の仕組みは企業秘密ですが、表示内容に変化がない部分は位置情報だけを転送することで画面全体の書き換えに必要な情報量を減らし、余裕のできた帯域を利用して画質やレスポンスの向上につなげています。

 なお、こちらはサーバ側PCの処理が複雑になってしまう面もありますので、通常では通信速度が低速の場合のみ(1〜6までの転送速度設定で1〜2の場合のみ)機能しますが、GPUパワーモード(で動作するサーバ側PC)であれば転送速度設定に関わらず動作します。主にレスポンスの向上がメリットですが、GPUパワーモードと併用すれば、画質もかなり向上します。

photophoto GPUパワーモードによりリモートスクリーンでの画質も向上する。左が通常モード、右がGPUパワーモードを有効にした表示例

左が通常モード、右がGPUパワーモード。親機がGPUパワーモードで動作していれば子機の動作もかなり快適になる
(高画質版はこちらから)


 同一環境下でGPUパワーモードと非動作時のパフォーマンスを見比べたが、動作速度、画質面ともに比べるとはっきり分かる違いが確認できた。通常のソフトウェア処理のみでもレスポンスは良好で、昨今のCore iプラットフォームクラスのPCをサーバ側PCに使うのであれば、ソフトウェア化されたデメリットをほとんど感じさせない動作だった。

 続いて、2台の検証PCを用いてLuiの動作を検証しよう。

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