異次元の動画変換能力だっ──プレミアムな地デジノートPC「dynabook Qosmio T750」の実力診断REGZA連携機能もかなりイイ(2/3 ページ)

» 2010年12月03日 15時00分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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「SprusEngine」で実現する、異次元の動画変換能力

 さて、dynabook Qosmio T750の大きな差別化ポイントとなるのが、やはり「SprusEngine」の存在だろう。

photophoto 付属の「Premiere Elements 8」では、「サードパーティ製プラグイン」を選択することでSprusEngineを利用しての出力(エンコード)が可能。豊富なプリセットも準備されている。プリセットの設定をもとに、SprusEngineを利用したオリジナルのエンコード設定を作成することも可能だ

 SprusEngineは、家庭用ゲーム機 PlayStation 3にも採用される汎用CPU「Cell」をベースに動画処理に特化した映像プロセッサだ。「TOSHIBA Quad Core HD Processer」とも呼ぶように、4つのコアを搭載し、PCでもAV機器でも主流の映像規格であるMPEG-4 AVC/H.264(以下、H.264)やMPEG-2のハードウェアデコード/エンコード機能を提供する。映像の処理に特化しているので、搭載するCPUより高速かつ低消費電力で動画処理が可能となるほか、動画デコード/エンコード時のCPU使用率を低く抑えられるメリットがある。つまり、dynabook Qosmio T750はSpursEngineの搭載により、動画の高速エンコードを可能にしつつ、PCのマルチタスク性も高められる(きびきび動作する)可能性を秘めたPCということになる。

 SprusEngineはテレビ録画時やダビング時の画質変換(エンコード)に利用されるほか、バンドルするアドビのビデオ編集ソフト「Premiere Elements 8」でも使用できる(Premiere Elements 8用プラグインが付属)。加えて、国内では人気の高いペガシス「TMPGEnc 4.0 XPress」用プラグインも別途発売されている。

 一方でSprusEngineはQosimoシリーズへ初めて搭載されてから2年以上が経過しているが、この間に性能向上などは果たされていない。しかしノートPCのCPUは、この2年間でCore 2 DuoからCore iシリーズへアーキテクチャが大きく進化し、処理能力も着実に向上している。つまり、SprusEngineの搭載が、2010年12月現在において“まだどれだけメリットがあるのか”は気になるところだ。

 というわけで、参考テストを早速行おう。今回はハイビジョンムービーカメラで録画した3分間のMPEG-2とH.264のフルHD動画データをもとに、付属するPremiere Elements 8と、市販のTMPGEnc 4.0 XPressを利用し、CPUでの(通常)エンコードとSprusEngineを用いたエンコードにかかった時間をそれぞれ比較した。エンコードの設定は完全に一致してはいないが、可能な範囲でエンコード後のファイルサイズが同等になるようにし、それぞれエンコードを実行している。

photophoto Premiere Elements 8では、映像ソースがフルHDのMPEG-2である場合に大きな威力を発揮する。なお、映像ソースのデコードはCPUで行われるため、デコードの処理も複雑なH.264を映像ソースとした場合はやや差が出にくいようだ(左)。TMPGEnc 4.0 XPressでは、すべての組み合わせでSprusEngineを利用した方が確実に高速。映像ソースがH.264の場合も最大で2倍近い差が開いた(右)

 結果を見ると、(本機における)H.264へのエンコードはCPUよりSprusEngineの方が確実に速いことが分かる。特にフルHDのMPEG-2からフルHDのH.264へエンコードした速度はPremiere Elements 8で約2.6倍、TMPGEnc 4.0 XPressで約3.8倍も高速。TMPGEnc 4.0 XPressではH.264のフルHD→SD解像度(720×480ドット)へのエンコード時間も約1.9倍速かった。

 ちなみに、本機をベースにCPUだけでエンコード速度を2倍にするには、単純にエンコード速度が動作クロックとコア数に比例すると仮定しても、5GHzクラスのデュアルコアCPUか2.5GHzクラスのクアッドコアCPUが必要になる。後者であればデスクトップ向けCPUでは条件を満たすシステムも存在するが、ノートPC向けでまだそこまで高性能なものはない。もちろん現実には動作クロックやコア数に比例して単純に2倍、3倍と高速になるものではないが、搭載可能なCPUの制約があるノートPCでの動画変換において、SprusEngineがどれだけ有用か分かる数値といえるだろう。

photophoto H.264データをフルHD(1920×1080ドット)からSD(720×480ドット)にエンコード中のCPU使用率を比較。左のSprusEngine使用時はCPU使用率が半分ほどだが、右のCPU使用時は95〜100%前後でほぼフル稼働している。仮にエンコードにかかる時間にあまり差がないとしても、このCPU利用率の違いが生むメリットは大きい。エンコード作業中も、同じPCでほかの作業が普通に行えることを示すわけだ
photo MPEG-2のSD解像度(720×480ドット)からH.264へのエンコードでもSprusEngineは威力を発揮する。2010年12月現在、4コアや6コアのデスクトップPC向けハイエンドCPUを搭載したシステムであればSprusEngineを使うより高速になる可能性は十分にあるが、これがスタンダードサイズのノートPCで行えるところがスゴイといえる

 さて、SprusEngine搭載のQosmioは従来よりiPhone/iPodで再生可能な動画データへの高速エンコード機能が備わっていたが、こちらはもちろん本機にも継承されている。加えて、付属するPremiere Elements 8もSprusEngineの利用をサポートしているので、iPhoneやiPodに加えて、PSP、PlayStation 3、Xbox 360などのメディアプレーヤー機能を持つ家庭用ゲーム機での再生用、そしてYouTube、ニコニコ動画、Veohなど動画配信サイトへのアップロードに適した動画ファイルの作成も、手軽かつ高速に行えるようになった。

 これは、アナログ放送時代にPCで録画した番組をポータブルデバイスで楽しむ──などの用途にも便利で、MPEG-2で録画した番組を、解像度はそのままにH.264にエンコードすることでストレージの保存スペースを圧縮したいというニーズにも合いそうだ。

 試しにMPEG-2で録画した30分のアナログテレビ番組を、PCや据え置き型ゲーム機での再生に適する「解像度そのまま(720×480ドット)」、iPhone/iPod向けの「640×480ドット」、PSP向け「320×240ドット」でそれぞれエンコードしてみたが、SpurusEngineで1.5〜3倍ほど高速にエンコードできた。解像度があまり高くないファイルなので、CPUでの通常エンコードと比べて圧倒的な差までは付かないこともあるわけだが、1本だけでなく、5本、10本、30本──と過去に録りためた番組をまとめて作業したいとなればいかがだろう。


photo 付属する「TOSHIBA DVD PLAYER」でレゾリューションプラスをサポートする。もちろん市販DVDタイトルなどでも有効に機能する

 なお、同社が「レゾリューションプラス」と呼ぶ、SprusEngineを活用した超解像(高画質化)機能も引き続いてサポートする。超解像とは、アップコンバート時に映像をリアルタイムで解析し、あたかも“高解像度で収録されていればこうあるべき”という映像に変換する機能。これはエンコード以上の処理速度を要求するため、CPUだけでは事実上実現できない機能といえる。

 本機では、付属するメディア再生ソフト「TOSHIBA DVD PLAYER」での動画再生や、YouTube動画の高画質化をサポートするほか(Internet Explorer用プラグインをプリインストールする)、付属する動画編集ソフト「DVD MovieWriter」におけるSD解像度からHD解像度への動画変換時に適用できる。その効果については、以前行った「Qosmio F50」のレビュー記事も参照してほしい。

photophoto 同じく付属する「DVD MovieWriter」ではエンコード時にも利用できる。SD解像度とHD解像度が混在した映像ソースをビデオ編集したり、昔の動画データをBlu-ray Discに記録するといった場合に超解像が効果的に活用できる(左)。Internet Explorer用プラグインが標準でインストールされており、YouTube動画を“超解像”にできる。画面に出る「Resolution+」ボタンより機能が有効になる(右)
photo SD解像度の映像データを用いたレゾリューションプラスの効果はこのような感じだ。左が超解像オン、右がオフ。超解像をオンにすると、顔の輪郭がシャープになり、髪の毛の表現も高精細になっている
photo 同じく左が超解像オン、右がオフ。エッジがシャープになり、かつ暗部の表現力や全体の解像感が増す。単なる拡大(アップコンバート)とは確実に異なる仕上がりが期待できる

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