PC USER Pro

「IPS226V」実力診断――イチキュッパで“S-IPS II”搭載の21.5型フルHD液晶改良版IPSパネルの画質は!?(3/3 ページ)

» 2010年12月07日 11時30分 公開
[榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia]
前のページへ 1|2|3       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

S-IPS IIの画質をチェックする

 それでは、表示性能の評価をしていこう。評価にはいつものようにエックスライトの「i1 Pro」(製品パッケージとしては「i1Basic」)を用いている。テスト内容はソフトウェアキャリブレーションを行い、sRGB環境におけるガンマカーブの精度と色再現性の2つを検証するというものだ。せっかくなので、テスト内容はIPS236Vと同一の条件を採って、両機の比較ができるようにした。

 まずはガンマカーブの検証だが、ここではsRGBモードで測定した。sRGBモードでは明るさ調整しかできないので、一切の調整は行わず、素の状態で測定している。結果は下図の通りだ。なかなかきれいなラインを描いているレッドとグリーンに対して、ブルーのずれが気になる。これはIPS236Vでも見られた傾向だが、IPS236Vよりもブルーのずれが大きい(青のカラーバランスが少しずれている)。調整するにしても、青が思うように増減しなかったりとOSDのクセがあるので難しい。

 色再現性の検証はMac OS XのColorSyncユーティリティを用いて、先に作成したプロファイルとsRGBのプロファイルを比較した。多くの領域においてズレが生じており、精度としてはいまひとつだ。また、IPS236Vとの色域の比較も添えた。どちらも初期設定で測定したものだが、IPS226のほうが一回り小さい(色域がわずかに狭い)結果となった。

i1Proを用いたsRGBモードの測定結果。レッドとグリーンは入力と出力がほぼ1:1のきれいなラインになっているが、ブルーのラインだけが乱れている。色温度は6000KでsRGB標準の6500Kよりもかなり低い
作成したプロファイルをColorSyncユーティリティで読み込んだ例。グレーの部分がsRGBの色域、色の付いた部分がIPS226VのsRGBモードでの色域だ。sRGB色域における色の深い部分が足りていない
IPS236Vの色域にIPS226Vの色域を重ねた。グレーがIPS236Vの色域、カラー部分がIPS226Vの色域だが、IPS236Vが完全に囲ってしまっている。両機の設定はいずれもデフォルトだ

 最後に目視の印象も述べておくが、基本的には長所、短所ともIPS236Vと同様の傾向だ。ムラについては、輝度ムラは散見されたものの、高低の差は小さい。普通に表示しているぶんには、気になることはないだろう。パネル表面における粒状の乱反射は、やはり画面を凝視すると目に付く。筆者はあまり気にならないほうなので、1日か2日程度で慣れたが、この点が気になる人は実機を確認してみるといいだろう。

 視野角はIPSらしく広視野を確保できている。この点においては、TNパネル搭載の液晶ディスプレイにない満足感が得られるはずだ。真横に近い角度では白っぽくなるが、通常の利用においては問題にならない。ただし、黒の視野角についてはIPS236Vと同様、角度によって黒浮き、紫被りすることがある。

 動画の表示性能もIPS236Vと同じような印象だ。ゆっくりスクロールする被写体やFPSのような激しい動きのゲームでは残像が散見されるが、動画共有サイトの映像やDVD-Videoの映画タイトルなどの視聴でブレが気になるほどではなかった。

左から、カラーグラデーション、モノクログラデーション、グレー単色の表示例。いずれもsRGBモードで撮影

IPSパネル搭載機だけあって、上下左右の視野角は広い。真横に近い角度では白っぽくなるが、実際の利用シーンでは問題にならないだろう

エックスライトのカラーマネジメントツール注目製品

 今回の測定に用いたエックスライトの「i1Basic」は、測色器の「i1Pro」が付属し、ディスプレイのキャリブレーションに機能を特化したパッケージだ。名前の通り、i1シリーズの中ではエントリーモデルにあたるが、i1Proはスペクトル方式を採用した測色器で、フィルター方式のエントリーモデル「i1Display 2」に比べて、検出精度がかなり高い。i1Basicをベースとして、より高度なカラーマネジメント環境を構築したい場合は、必要に応じてソフトウェアの機能を拡張することも可能だ。i1シリーズの製品情報はこちら

 また、エックスライトはオールインワンタイプのカラーコントロールソリューションとして「ColorMunki」シリーズも用意している。こちらはi1Proに近い精度を確保したスペクトル方式の測色器とウィザード形式の専用ソフトを備えており、ディスプレイ/プロジェクター/プリンタのキャリブレーション、スポットカラーの測定、カスタムカラーパレットの作成などが行える。ラインアップはフォトグラファー向けの「ColorMunki Photo」と、デザイナー向けの「ColorMunki Design」があり、いずれもi1Pro付属のパッケージより安価だ。ColorMunkiシリーズの製品情報はこちら

 日本国内ではこれらの製品を加賀電子が取り扱っており、クリエイター向けオンラインショップ「KGDirect」や「CGiN」で購入できる。両サイトでのi1Basicの販売価格は16万7160円、ColorMunki PhotoとColorMunki Designの販売価格はいずれも5万4800円だ。

「i1Basic」
「ColorMunki Photo」



IPSをより身近にする1台

 一通りテストした感想を述べると、やはりIPS236Vと同様に、液晶パネル自体の感触は悪くないが、液晶ディスプレイとしては画作り、設置性、操作性などに改善の余地が見られる。IPS236Vが搭載するUH-IPSより新型のS-IPS IIパネルを採用しているということで、画質面での向上を期待する向きもあるだろうが、開口率の向上によってバックライト光をより無駄なく使えるようになった点で進化しているものの、特別な高画質化技術などが追加されたわけではないようで、見た目の印象はそう変わらない。

 とはいえ、実売価格で2万円を切るような製品に手間暇をじっくりかけてもいられないのは当然のこと。「IPS=高画質モデル」というこれまでの流れから、思わず評価のハードルが上がってしまうものだが、この価格帯では相当健闘していることは間違いない。安価なTN方式のフルHD液晶ディスプレイがあふれる中、同じような価格でIPSならではの広視野角な表示環境を入手できるのだから、喜ばしいことは確かだ。

 高速応答を重視するゲーム用途や色再現性にこだわる用途には向かないが、広視野角かつ低価格な汎用のフルHD液晶ディスプレイとして、やはり要注目の1台といえる。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. わずか237gとスマホ並みに軽いモバイルディスプレイ! ユニークの10.5型「UQ-PM10FHDNT-GL」を試す (2024年04月25日)
  3. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  4. 「Surface Go」が“タフブック”みたいになる耐衝撃ケース サンワサプライから登場 (2024年04月24日)
  5. QualcommがPC向けSoC「Snapdragon X Plus」を発表 CPUコアを削減しつつも圧倒的なAI処理性能は維持 搭載PCは2024年中盤に登場予定 (2024年04月25日)
  6. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  7. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  8. アドバンテック、第14世代Coreプロセッサを採用した産業向けシングルボードPC (2024年04月24日)
  9. AI PC時代の製品選び 展示会「第33回 Japan IT Week 春」で目にしたもの AI活用やDX化を推進したい企業は要注目! (2024年04月25日)
  10. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー