インタビュー
» 2010年12月17日 14時00分 UPDATE

1億ドルはどこへ消えた:検索広告ビジネスの闇 (1/3)

オンライン広告を土壌とした詐欺の被害額は、年間1億ドル規模になるという。デジタルマーケットの専門家であるベンジャミン・エデルマン氏に、広告詐欺のグローバルトレンドや、GoogleとYahoo! JAPANの技術提携による影響について聞いた。

[後藤治,ITmedia]

アフィリエイトで大金持ち? ――広告詐欺のグローバルトレンド

og_edelman_001.jpg ハーバードビジネススクール経営学助教授のベンジャミン・エデルマン氏(BENJAMIN G.EDELMAN)

 オンライン広告市場の成長に伴い、これを狙ったサイバー犯罪も拡大傾向にある。2010年6月、eBayの最高アフィリエイターとして知られるショーン・ホーガン氏(Shawn Hogan)がeBayから不正に報酬を得ていたとして告発された。その額およそ2000万ドル(eBayは2006年に約1500万ドル、2007年に約500万ドルを支払ったとしている)。個人が得られる報酬としてはメジャーリーグのスター選手並みだが、これは氷山の一角のようだ。

 「同種の犯罪に荷担する人々はひと月で200人近く見つかっています」――ハーバードビジネススクールで経営学の助教授を務めるベンジャミン・エデルマン氏(BENJAMIN G.EDELMAN)はそう語る。

 同氏はデジタルマーケットの専門家として教べんを振るうかたわら、主に米国や英国を中心とするクライアントからの依頼で、ボストンに拠点を持つ複数のサーチプログラムを駆使し、オンライン広告を土壌とした詐欺行為を見つけ出す仕事も行っている。前述のホーガン氏告発にかかわった人物でもある。エデルマン氏に広告詐欺のグローバルトレンドと検索広告ビジネスの問題について聞いた。

og_edelman_002.jpg 何気ない単語で検索した結果、ジャンプ先が意味不明なWebサイトだった、というのはよくあることだが……

 オンライン広告詐欺の代表的な手法としては、iframe(Inline Frame)を使った手口がよく知られている。エデルマン氏は「例えばこのサイトを見てください」とスライドを示しながら、「これは私の“お気に入り”なのですが、一見してすぐに立ち去りたくなるような訳の分からないサイトです。これでどうやってお金を取るのか不思議に思うかもしれません。しかしソースコードを見てみると、2つのjsファイル(外部ジャバスクリプト)が呼び出されているのが分かります」と説明する。

 このcounter.jsとsutat.js(ありふれたファイル名だ)は、それ自体まったく問題のないものに見えるが、実は実行されると5つの“目に見えない”iframe(width/heightが0)を作成し、そこに広告を呼び出しているという。

og_edelman_003.jpg counter.jsとsutat.jsが呼び出しているのは“見えない”iframe

「実際ここには30個のiframeがあり、ページを開くだけで100以上の広告が表示されることになっています。そして広告主はこの“見えない広告”にもお金を払わなければなりません」とエデルマン氏は続ける。さらに、SEOポイズニング(特定のキーワードに対して検索エンジンの最適化を行い、検索結果の上位に表示されるようにする)などを組み合わせることで効率的にトラフィックを発生させ、広告の表示回数が上がれば、広告主から詐取する金額も大きくなる、というわけだ。

 また別の例では、あるフォーラムに投稿された内容に、eBayへのアフィリエイトリンクが隠されていたこともあった。そのフォーラムを閲覧した一般ユーザーの目には、誰かが投稿した何気ないメッセージの下に×印が2つ並んでいるようにしか見えない(つまり画像の呼び出しに失敗したように見える)が、実際はeBayへリダイレクトされていた。そして仮にこのページを開いた人物が後で何かしらの商品をeBayで購入すれば、保存されたcookieによってここでもその誰かへの報酬が発生することになる。ほかにも、一見して退屈なバナー広告に、マカフィーやシマンテック、マイクロソフトなど複数の大手企業のアフィリエイトリンクが仕込まれていることもあったという。

og_edelman_004.jpgog_edelman_005.jpg リクエストされた画像は、実際はeBayのアフィリエイトリンクになっている

 エデルマン氏は、アフィリエイトで広告費が支払われる基本的な条件として「View、Click、Buy」の3つを挙げる。つまり、ユーザーがそのWebサイトを訪れたかどうか、ユーザーが実際にアフィリエイトリンクをクリックしたかどうか、そして例えば7日以内に物品を購入したかどうかだ。同氏は「当然これらの例では条件を満たしていません」と述べる一方で、「しかし、これはある意味で非常に魅力的な犯罪です」とも付け加える。「仮に銀行の預金を盗めば発覚は容易ですし、被害者は激しく怒るでしょう。しかし、この広告構造自体を狙った犯罪は非常に気付きにくく、あきらめてしまうケースが大半です」と語り、オンライン広告の不透明性が犯罪の抑止を難しくしていると指摘する。

 エデルマン氏の想定によれば、こうした詐取による被害額は年間で1億ドル規模にのぼる。今や新聞を抜いた日本のインターネット広告費は、年間で7069億円に到達しているが(2009年、電通発表)、その1%以上と考えると非常に大きな金額だ。「これらの被害額は前年に比べて増加傾向にあり、オンライン広告の市場が拡大すれば同様に広がっていくでしょう」(エデルマン氏)。

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