2010年を彩ったモバイルノートPCVAIO Z、MacBook Air、そして……(2/4 ページ)

» 2010年12月31日 08時30分 公開
[前橋豪,ITmedia]

「Let'snote J9」――定番コンパクトモバイルが予想外の変身

「Let'snote J9」

 パフォーマンス重視のモバイルノートPCといえば、パナソニックの「Let'snote」シリーズも見逃せない。2010年は、このビジネスモバイルの定番ブランドにも大きな変化があった。10月にこれまでとは毛色の違う新機種「Let'snote J9」を発売したのだ。根強い人気がある10.4型液晶搭載の小型軽量モデル「Let'snote R」の後継だが、見た目も中身も別物となり、さらにはターゲットユーザーも見直している。

 まずは外観だが、Let'snoteシリーズ共通のデザインだった天面のボンネット構造をやめ、フラットな薄型の天面を採用した。当然、堅牢性は下がるが、新たに標準添付した専用のジャケットを装着することで、76センチからの動作落下試験と耐100キロfの加圧振動試験をクリアできる頑丈さを確保した。同時に、斬新なデザインやジャケットのカラーバリエーションを楽しめるように配慮している。別途インナーケースなどを用意する必要がなく、そのまま携帯してガバッと開けて使えるのも便利だ。

 中身については、液晶ディスプレイを1024×768ドット表示の10.4型スクエア(アスペクト比4:3)から1366×768ドット表示の10.1型ワイド(16:9)に、CPUをTDP 18ワットのCore i7 UMモデルからTDP 35ワットの通常電圧版Core i7に切り替えるなど、大幅なスペックアップを果たした。ジャケット装着時で1キロ強の軽量ボディとしては強力なパフォーマンスを実現しており、バッテリー駆動時間も約6.5〜12時間(構成によって異なる)と長く、タフなモバイルにも耐えられる。

 そして、価格も異例だ。店頭向けのスタンダードモデルは実売12万円前後と、「プロフェッショナルモバイル」のキーワードを掲げて強気な価格設定をしてきたLet'snoteとしては、大胆な低価格設定で攻めてきた。デザインにこだわった専用ジャケットと低価格により、ビジネスだけではなくプライベート利用のユーザー、さらには女性層の開拓も狙うという、単にLet'snote Rの後継機という以上の役割が与えられているのも興味深い。

 以前、「Let'snoteからAtomやCULV版CPUを搭載した低価格機は出さないのか」と聞いたことがあるが、その返事は「コンセプトから外れるので採用は難しい」という返事だった。低価格化への1つの回答が、このLet'snote Jになるわけだが、見た目のカジュアルさとは違って、ブランドの核となる堅牢、高性能、軽量、長時間駆動といった要素は外しておらず、細部のコストダウンは見られるものの、しっかりLet'snoteにまとめ上げている。

 このブレのない質実剛健さが、これからも熱烈なファンを育てていくのだろう。VAIOとは違う美徳を備えた日本が誇るノートPCブランドとして、2011年の進化も楽しみだ。


「11インチMacBook Air」――極薄ボディに凝縮されたスペックを超えた魅力

「11インチMacBook Air」

 先に紹介したパフォーマンス重視で差別化するタイプの製品とはまったく違う方向性として、薄型軽量と洗練されたプロダクトデザインを極限まで追求することで、唯一無二のモバイルノートに仕上げているのが新生「MacBook Air」だ。2010年のモバイルノートと聞いて、真っ先にこれを思い浮かべる人も少なくないだろう。

 一時は「ディスコンではないか」といったウワサも耳にしたMacBook Airだが、フルモデルチェンジしてラインアップも拡充、おまけに低価格になって帰ってきたのは、素直にうれしい。

 特に新たに追加された11インチMacBook Airは、小型軽量を重視する日本のユーザーにジャストフィットするサイズ感(厚さ3〜17ミリ、重さ約1.06キロ)と、円高も後押しした8万8800円からという低価格で、10月21日の発表直後から話題沸騰となり、入荷直後のアップルストア銀座は大にぎわいだった。

 ハードウェアスペックについては、CPUがCULVクラスの超低電圧版Core 2 Duo 1.4GHz(13インチモデルは低電圧版Core 2 Duo 1.86GHz)と旧世代のモデルだが、Core iシリーズではこの薄型軽量ボディが実現困難なため、MacBook Airとして妥当な選択をしたといえる。

 CPUを補うように、GPUにはNVIDIA GeForce 320Mを採用し、高速なフラッシュストレージを内蔵したため、総合的な性能はMac OS X Snow LeopardやWindows 7をストレスなく使えるレベルだ。さらに、スタンバイで約30日間持つというバッテリー性能と高速な復帰が可能な点は、使ってみて便利さを実感できるだろう(動作時のバッテリー駆動時間は短いほうだが)。

 11インチMacBook Airは、Mac OS Xが動く最小最軽量ノートという魅力だけでなく、極薄アルミユニボディによる精巧さや質感のよさというWindowsのモバイルノートPCでは得難い「モノとしての高級感」が備わっている。これはWindows PCのメーカーにとって、やはり脅威だ。今後はiPadやiPhoneでアップルのプロダクトデザインに魅了されたユーザーが、PCとしてMacを選ぶケースがさらに増えるのではないだろうか。


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