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» 2011年01月05日 00時00分 UPDATE

元麻布春男のWatchTower:2011年初頭、PC業界とその周辺を見渡して思うこと (1/2)

新年早々、インテルやAMDの投入する新しいGPU統合型CPUが注目を集めている。2011年、PC、タブレット、スマートフォン、電子書籍端末はどうなっていくのだろうか。

[元麻布春男,ITmedia]

新型CPUが2011年の初めからPCを盛り上げる

 PC業界としてはヒット商品の乏しかった2010年が終わり、2011年がスタートした。

 言うまでもなく、今年は地上波によるアナログテレビ放送が終了する予定だが、何せ国民の大半が影響を受ける大規模な移行である。果たして混乱なくデジタル放送への移行が実現するのか、注目されるところだ。

 切り替えの7月に向けて、11月のエコポイント制度変更時に見られたような駆け込み需要が殺到するのか、それにより他の商品の需要が食われてしまうのか、家電業界関係者ならずとも気になるところだろう。

 幸い、PC業界は2010年も、比較的堅調に推移したようだ。コンシューマー向けPCが好調を持続しているのに加え、2009年にほぼ停止状態だった企業のクライアントPC更新が復活したことで、台数ベースでは前年を上回ったとされる。

 ただ、金額ベースではあまり伸びておらず、低価格化が進行していること、Windows XPの提供停止に伴う駆け込み需要が含まれており、2011年には反動も予想されることなど、懸念材料もある。PC関連メーカーには、こうした懸念を吹っ飛ばすような新製品を期待したいところだ。

 そのきっかけとなりそうなのが、インテルとAMDによる新プロセッサの発表だ。新年早々、インテルは2011年の主力となる「Sandy Bridge」(開発コード名)を正式発表するとみられる。また、AMDは1月4日に省電力性を重視した「Bobcat」(同)コアの新プラットフォームBrazos(同)を発表した。

消費電力の削減と性能向上が期待できるSandy Bridge

tm_1101wt_01.jpg 「Sandy Bridge」の開発コード名で呼ばれる「第2世代インテルCoreプロセッサー・ファミリー」。写真はモバイル版

 インテルの「Sandy Bridge」は、CPUとGPUを同一ダイ上に集積した、32ナノメートルHigh-k/Metal Gateプロセスによるプロセッサ。いわゆるTick-TockモデルのTock(マイクロアーキテクチャの更新)にあたるもので、次の開発コード名「Ivy Bridge」(Tick、製造プロセスの更新)と合わせ、イスラエルのデザインチームが担当する。

 イスラエル・デザイン・センターは、もともとモバイル向けのプロセッサを担当していただけに、Sandy Bridgeもクライアント側にどうしても重心が残る。クライアント向けと同じシングルソケットサーバ版はともかく、2ソケット以上のサーバに対応したSandy Bridgeは、オレゴンでUncore(プロセッサコア以外の外部I/Fやメモリコントローラ等)を再設計している都合上、今年後半以降のリリースとなるようだ。

 インテルは前世代の「Clarkdale」と「Arrandale」(いずれも開発コード名)でプロセッサにグラフィックス機能を取り込んだ。が、それは別々のダイに実装されたCPUとGPU/メモリコントローラを1つのパッケージに封入したものであり、同じダイ上にCPUとGPUを集積するのはこのSandy Bridgeが初めてとなる。今までGPUはCPUより古い製造プロセスを使っていたわけだが、Sandy Bridgeで製造プロセスが同じになる。それによる消費電力の削減と性能向上が期待されるし、ノートPCの4コア化も推進されるだろう。

 Sandy Bridgeでもう1つ注目されるのは、「Quick Sync Video」機能だ。Quick Sync Videoは、Sandy Bridgeのメディア機能全般を指すが、中でも注目されるのがMPEG-2とMPEG4-AVC/H.264に対応したビデオエンコーダをハードウェアで実装していることだ。従来インテルは、こうした機能を直接ハードウェアで実装するのではなく、こうした機能を実現するソフトウェアを支援する命令セットを実装するポリシーだったように思う。

 それはプロセッサの汎用性を重視してのことであり、オレゴンのデザインチームの方向性でもあったのではないかと考える。今回、ビデオエンコーダをハードウェアで実装したということは、汎用性より効率性を重視したものであると同時に、イスラエルのデザインチームの特性が表れた部分なのではないかと感じている。

ボリューム市場でFusionを推し進めるAMD

tm_1101wt_02.jpg AMDは「APU」(Accelerated Processing Unit)と呼ぶGPU統合型CPUを投入。コンパクトなパッケージを採用する

 一方、AMDが新年早々に投入した新プラットフォーム(開発コード名:Brazos)は、新プロセッサの「AMD C」シリーズ(同:Ontario、1〜2コア、TDP 9ワット)あるいは「AMD E」シリーズ(同:Zacate、2コア、TDP 18ワット)をベースにしたもの。AMD C/Eシリーズは、新たに設計した省電力な「Bobcat」コアのCPUとDirectX 11互換のGPU機能を1つのダイに統合した、同社が「APU」(Accelerated Processing Unit)と呼ぶAMD Fusion製品だ。

 インテルのAtom上位からCULVクラス(搭載製品としては省スペースの液晶一体型デスクトップPCも含む)をターゲットとする。つまり、Brazosプラットフォーム(AMD C/Eシリーズ)は必ずしもSandy Bridge、あるいはそのノートPC向けプラットフォームである「Huron River」(開発コード名)の対抗ではない。

 従来AMDは、基本的にサーバ向けに開発したプロセッサコア(開発コード名で「Stars」コア、あるいは「Greyhaund+」)を、デスクトップPCやノートPCにも利用していた。その結果ノートPCの場合、性能はともかく、インテルに比べてバッテリー駆動時間が短いという傾向が否めなかった。AMDはサーバ向けとはまったく別のデザインとなるBobcatコアで、それを覆そうとしている。

 2011年中に、サーバおよび上位デスクトップPC向けに投入される新しい「Bulldozer」(開発コード名)コアも、ユニークな立ち位置を確保しようという狙いが見える。2つのコアでフェッチやデコードなどを共有するBulldozerは、明らかにピーク性能より効率性を重視している。

 現在AMDのメインストリームプロセッサは、同一クロックの場合、インテルのメインストリームプロセッサに対し、コアあたりの性能で60〜70%にとどまる。リストラの影響などで、すでに3年ほどコアの刷新が行われていないことが大きな要因の1つであり、市場でAMDの6コアプロセッサが安価な理由ともなっている。

 だが、「次の手」となるBulldozerでAMDはコア性能の引き上げを必ずしも意図していない。AMDの方向性は、より効率を重視するものであり、それはエネルギー効率もそうだし、トランジスタ効率でも同じことが言える。要するに、インテルより明らかにコアあたりのダイ面積を小さくしようという狙いだ。

 ある特定の半導体製造プロセスにおいて、最も効率的に製造できるチップのサイズはおおむね決まっている。コアの面積が小さければ、同じダイ上に集積できるコアの数が増える。プロセッサコアの数を増やさなければ、その分を統合したGPUに割くことができる。おそらくAMDは、同じ製造プロセスを前提にした場合、インテルよりコアあたりの性能で劣っても、コア数を掛け合わせたトータルで勝つ、あるいは統合したGPUの機能で勝つことを目指しているのだろう。コアを小さくし、それを組み合わせる方が、コスト、消費電力とも、自由度が高くなる。

 Bobcatコアを用いるBrazosプラットフォームがノートPCの中でも比較的下位を狙っているように、Bulldozerコアもサーバ市場の比較的下位、2ソケットサーバにフォーカスを置いている。それは、これらの市場の規模が大きいからであり、AMDとしてはボリューム市場を狙いたいという意図なのだと考えられる。それは事業戦略として決して間違っていない。

 問題があるとすれば、既存の、特にコンシューマーの「AMDファン」の期待にどうやって応えるか、という点だろう。これまでAMD製プロセッサを強く支持してきたのは、いわゆる自作ユーザーでパフォーマンス志向の強いユーザーであった。

 しかし、コア数の多いプロセッサは必ずしも、コンシューマー向けアプリケーションにおいて、性能面で優位とは限らない。このあたりのミスマッチをどう解消してくるのか、Bulldozerコアを用いたデスクトップPC向けプロセッサの最初の製品となる「Zambezi」(開発コード名)は2011年の半ばに登場する見込みだ。


 AMDは、BobcatコアとBulldozerコアの双方において、CPUとGPUの融合、同社の言うところのFusionを推し進めていこうとしている。単に同じダイ上にCPUとGPUを集積するのではなく、演算リソースやメモリ空間も統合し、やがては命令セット的にも1つのものとして扱えるようにする。2011年にリリースされるプロセッサ群は、その始まりに過ぎない。

 インテルもClarkdale/ArrandaleでCPUとGPUを同一のパッケージに統合し、Snady Bridgeでは両者を同一ダイに集積した。が、AMDのようにCPUとGPUの機能的な融合まで考えているかというと、現時点ではそうした様子はうかがえない。もちろん、研究はしているのだろうが、CPUとGPUの統合について、インテルのアプローチはAMDよりずっと保守的なように思える。

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