2011年初頭、PC業界とその周辺を見渡して思うこと元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)

» 2011年01月05日 00時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]
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タブレット、スマートフォン、電子書籍端末の2011年は?

 数字は堅調だったものの、ヒット商品や大きな話題に乏しかったPCに対し、2010年の話題となったのはタブレット、スマートフォン、専用電子書籍端末(eBookリーダー)といった、組み込みOSベースのデジタル機器だ。

 組み込みOSといっても、専用電子書籍端末は別として、タブレットやスマートフォンに使われるiOSやAndroidといった現代のOSは、GUIを備えインターネットアクセスを標準でサポートしている。PCでできることのうち、6割程度をカバーする能力を持っている。将来的には、できない4割についても、クラウド等で実現する可能性があり、注目を集める存在であることは間違いない。

 これらデバイスの2011年だが、専用電子書籍端末はすべてがコンテンツ次第。現時点で販売されている製品やサービスは、いずれも十分な量のコンテンツがそろえられているとは言い難い。そこを克服した企業、あるいはグループが成功を収めることになるわけだが、果たして勝者は誕生するのだろうか。端末毎に異なるDRM、各グループによるコンテンツの囲い込み、電子書籍に懐疑的な大手出版社など、あまり明るい兆しは見えない。もちろん、だからといって電子書籍に未来がないとは思わないが、それが訪れるのはもっと先ではないか、という気がしている。

左がシャープの「GALAPAGOS」(5.5型モバイルモデル/レッド)、右がソニーの「Sony Reader」(5型のPocket Edition/ピンク)。2010年12月は国内大手メーカー2社から電子書籍端末が発売された

2010年はアップルの「iPhone 4」を中心に、国内でも本格的にスマートフォンが盛り上がった

 2010年、最も話題になり、そして実際に売れた商品は、スマートフォンだったのではないか。そう思うほど、この1年でスマートフォンは市民権を得た。その牽引役を務めたのは間違いなくアップルの「iPhone 4」だ。今ではiOSと呼ばれることになったiPhoneのOSは完成度が高く、使い勝手が良い。加えて、コンテンツやアプリケーションを配信する基盤としてiTunes Store/App Storeが完備されており、商業ベースでエコシステムが確立しているのが最大の強みだ。

 iPhone/iOSを追いかけるのはGoogleのAndroidだが、追いついたとはとても言えない状況だと思う。端末をリリースするメーカーが多いこともあり、台数は伸ばしているが、OSそのものだけでなく、配信基盤の完成度でもアップルには及ばない。あるいは、完成度でiOSに追いつき追い越すのではなく、オープン性を生かして、また違った方向に進化していこうとしているのかもしれない。少なくとも、現状のAndroidにハリウッド等のメジャーが映画コンテンツを提供するとは、とても思えない。

 この2社に対して、かつてのスマートフォンの主役であったマイクロソフトの影は薄い。米国とヨーロッパではWindows Phone 7をリリースしたものの、あまり話題になっていない。日本語版がいつになるのか、まだ発表もされていないが、そもそも英語版とか日本語版とか言っている時点で、マイクロソフトの開発体制が陳腐化しているのだと感じる。iOSにせよ、Androidにせよ、英語版も日本語版もないのが当たり前だ。

 このスマートフォンが2011年にどのような方向に進むのか、おそらく前半までは2010年同様、さまざまな機種が発売され、市場を盛り上げるのではないかと思う。だが、それがいつまで続くのかは未知数だ。その最大の理由はスマートフォンが携帯電話であるからである。携帯電話には契約が必要で、多くのユーザーは2年縛りの契約を結んでいる。また、携帯電話の契約は新規に優しく(割安)、機種変更に冷たい(割高)。現在の購入者の多くは初めてのスマートフォンだと思われるが、果たしてどれくらいのサイクルで新しい機種を購入してくれるだろうか。

 契約ベースのビジネスである限り、現在のペースで伸び続けるのは難しい。SIMロックを解除したとしても、一括払いの端末価格をほいほいと負担できる消費者はそれほど多くはないハズだ。こうした携帯電話の商慣習が、スマートフォンの成長に立ちふさがるのではないかと思うが、それが2011年に顕在化するかどうかは分からない。

2010年はタブレットでもアップルが「iPad」で先行した

 その点を考えると、スマートフォンと同じ、あるいは近しいOSを搭載しながら、必ずしも契約を必要としないタブレットデバイスは、興味深い存在だ。

 現行のAndroid 2.xが必ずしもタブレット向けとして最適化されていないこともあって、現在は、これまたアップルの「iPad」が突出した存在となっているが、この問題が解消し、さまざまなベンダーから最適化されたバージョンのAndroid OS(Android 3.0?)を搭載したタブレットがリリースされればおもしろいかもしれない。Netbook級のヒットになる可能性はあるだろう。

 そしてここでもマイクロソフトは立ち遅れている。マイクロソフトはタブレット向けのOSとしてWindows 7を推進しているが、それではタブレットデバイスではなく、タブレットPCになってしまう。タブレットPCは、専用アプリケーションの欠如からバーチカル向けの製品となってしまった。

 一般コンシューマーは、PCとは異なるジャンルの製品としてタブレットデバイスを求めており、そうである以上、そのOSがPCと同じであってはならない。これはどちらが良いということではなく、別の製品が求められているのだが、それにマイクロソフトは応えられないように見受けられる。

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