「これまでのブランドはそれぞれ現状維持、買収ではなくイコールパートナー」──NEC遠藤社長、レノボとの合弁会社設立で

» 2011年01月28日 00時00分 公開
[岩城俊介,ITmedia]

NEC+レノボ、今後の国内PC事業をそれぞれの強みを生かす方法で展開

photo レノボ・グループのユアンチン・ヤンCEO(左)、NECの遠藤信博社長

 「お客様には従来通りのブランド・サポートを継続して提供する。NECとレノボ、それぞれの強みを生かし、イコールパートナーとして合弁会社・ホールディングカンパニーを形成する」。

 NECと中国 レノボ・グループは1月27日、国内PC事業を統合した合弁会社を設立すると発表。都内ホテルで緊急記者会見が行われた。2011年6月をめどに設立する「NEC レノボ・ジャパングループ(Lenovo NEC Holdings 登記上の本社はオランダ、本社機能は東京に設置)」に両者のPC事業を移管し、日本における企業・個人向けPC事業の強化を図る。100%子会社としてNECブランドのPCを扱うNECパーソナルコンピュータ(現NECパーソナルプロダクツのPC事業を分離)と、ThinkPadなど国内レノボブランドのPCを扱うレノボ・ジャパンの2社が合弁会社の傘下に置かれる。

 Lenovo NEC Holdingsの出資比率はレノボ・グループが51%、NECが49%で、設立にあたりNECはレノボ・グループが新規発行する1億7500万USドル相当の株式(レノボ・グループ発行株式の約2%)を引き受ける形で、レノボに出資。合弁会社の会長に現レノボ・ジャパン社長のロードリック・ラピン氏、社長に現NECパーソナルプロダクツ社長の高須英世氏が就任する。

 NECは、開発連携による製品力の強化やワールドワイドシェア4位のスケールメリットを持つ価格競争力の強化、ビジネスPCの海外展開拡大といった効果を、レノボは日本市場のPCトップシェアやブランド、NECの持つ生産・開発・販売面、ネットワークサービス・機器の技術といったメリットを得、両社の強みを生かしたシナジー効果やさらなる製品力の強化を図る考えだ。

photophotophoto NECは、開発連携による製品力の強化、スケールメリットを生かす価格競争力の強化、海外現地法人を対象にしたビジネスPCの海外展開の拡大などを大きなメリットにとらえ、レノボ・グループと連携する考え

 レノボ・グループは2004年、ThinkPadブランドを展開していた米IBMのPC事業部を買収。以降、ThinkPadシリーズはレノボ製PCとして展開しているが、今回はレノボによるNECのPC事業買収ではない。LaVieやVALUESTARはNECパーソナルコンピュータ(現NECパーソナルプロダクツのPC事業部門)、ThinkPadはレノボ・ジャパン、当面はそれぞれの会社がこれまでと同様に販売を担う。

 このため、当面は例えば“Think LaVie”といった名称になったり、レノボのLaVie L、NECのThinkPad……などと訳の分からない体制にはならないが、ワールドワイド規模で調達できることによるコストメリットを享受しつつ、それぞれの開発拠点でより効率的・よりユーザーメリットが得られる商品を協調して開発できるようにはなる。

photophoto 両社は日本国内のPC事業を統合し、合弁会社を設立。当面は日本市場向けの施策という位置付けで、統合企業・個人向けともに、それぞれ両社のブランド・サポートは継続する

 PC事業の統合の理由をNECの遠藤信博社長は「あくまで国内PC事業に関するイコールパートナーとして、今後のさらなる事業的な広がりが期待できる提携と思っている。それぞれの強みを生かしたシナジー効果が得られる」と強調する。短期的な生産体制は現状維持で、例えばすぐNEC米沢工場でレノボ製品を国内生産する──などといったことはない。とはいえ長期的には、コストメリットや製品競争力向上のため、グループで最も効率的な選択かを協議する計画という。

 PC-9800シリーズ時代を含むPC黎明期より、国内PC市場で長年トップシェアを維持するNECだが、現在のワールドワイドシェアは0コンマ数%で国際競争力は微力。ワールドワイドシェア4位のレノボと組むことで、そのスケールメリットを生かした価格競争力をより強化しつつ、日系企業の現地法人を中心とした海外販売網も拡大する考えだ。

 レノボ・グループのユアンチン・ヤンCEOは「きょうは歴史的な日。この提携で両社の長所を集結することによるシナジー効果は計り知れない。株主にも日本ユーザーにも多大な利益をもたらすと確信している。レノボは中国市場でシェアナンバーワンだが、このパートナーシップにより日本でもナンバーワンのグループになるわけで、世界3大市場のうちの2市場でリーダーになるというのは非常に大きな意味を持つ。将来的にもさまざまな相乗効果が得られる適切な戦略だ」と自信を見せる。「経営面での企業文化の違いも深く学んだ。本日の提携は何カ月にも渡る作業の集大成。日本で設計され、世界で尊敬されるPC“ThinkPad”を含め、日本市場には長期的な視点とともに取り組み、今後も投資していく」と、IBMのPC事業買収当時を振り返るコメントも残した。

photophotophoto レノボ・ジャパンは日本市場において過去5四半期にわたり成長を遂げ、過去6四半期で日本市場のシェアを2倍に増やしたが、シェアはそのものは7.2%(2010年4Q現在)とワールドワイド市場比では低い。約1年前、台湾ASUSやAcerが東芝のPC事業買収に意欲を示しているとの報道があったが、仮にこれが実現したとしてもレノボ+NECグループの国内シェアトップの座はゆるがないとしている

 また、PC事業の連携は第1弾であり、他領域の事業連携も今後の検討課題とする。例えばタブレット端末の開発・生産・販売の協業、サーバ機器の販売協業なども計画されている。

 とはいえ、昔から続くNECのPC事業。ブランドイメージを落とすのではないか──という問いに遠藤社長は「そうは思わない。最も大切なのはユーザーであるのは変わりなく、さらに強い力を市場で築き上げ、これによってさらに顧客満足度を高めるのが最大目的。これまでNECのPC事業は日本市場に特化して展開していた。今はまだシェアトップを維持しているが、国内のボリュームだけでは投資できる額やコストメリットも限られる。ワールドワイド展開するいいパートナーを早いうちにみつけて、ダメになる前に率先して手を打たなければならないとは以前から考えていた。現時点では日本市場のPC事業に関する提携であり、グローバル市場の部分はまだ明確化していないが、将来的にも、もちろんさまざまなメリットがあるはずだ」と述べた。

photo 左からレノボ・ジャパンのロードリック・ラピン社長(兼、合弁会社 Lenovo NEC Holdings会長就任予定)、レノボ・グループのミルコ・ファン・デュイルシニアバイスプレジデント、レノボ・グループのワイ・ミン・ウォンシニアバイスプレジデント兼CFO、レノボ・グループのユアンチン・ヤンCEO、NECの遠藤信博社長、NECの國尾武光常務、NECパーソナルプロダクツの高須英世社長(兼、Lenovo NEC Holdings社長就任予定)

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