2011年は28ナノ世代に注力、そして20ナノ世代へ――GLOBALFOUNDRIESの事業戦略元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2011年01月31日 16時45分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

28ナノメートルプロセスはモバイル市場を狙う

GLOBALFOUNDRIESは1月25日、都内で2011年の事業戦略に関する説明会を開催。CEOのダグラス・グロース(Douglas Grose)氏が登壇した

 GLOBALFOUNDRIESは、旧AMDから製造部門を分離、中東のアブダビ首長国資本の投資を受けて誕生した半導体の受託製造企業(ファウンダリ)だ。本社を米国のシリコンバレーにおく。2010年1月にシンガポールのChartered Semiconductorの買収を完了し、台湾のTSMCやUMCに並ぶ、最大規模のファウンダリ企業となっている。同社のCEOであるダグラス・グロース(Douglas Grose)氏は、2007年にAMDに入社する以前は、IBMに在籍したこの業界のベテランである。

 現在GLOBALFOUNDRIESには、3カ所の大規模製造工場(ファブ)が存在、もしくは建設中である。ドイツのドレスデンにある旧AMDのファブ30(ファブ38への名称変更が発表されたこともあった)とファブ36を合わせたファブ1、シンガポールにある旧Charteredのファブ7、そして米国ニューヨーク州マルタに建設中のファブ8だ。

 このうち主力となるファブ1では、半導体ウェハの処理装置を搬入、生産能力の拡大を図っている。AMD時代、旧ファブ36が300ミリウェハによる量産を行う一方で、旧ファブ30は半導体製造装置が撤去され、休眠状態となっていた。おそらくこの旧ファブ30に製造装置が再び搬入されたのだろう。この増設部分は2011年半ばに稼働するとされている。

 ファブ1の製造技術は、現行では45ナノメートルプロセスルールのSOIシリコンと40ナノメートルプロセスルールのバルクシリコンであるが、45ナノメートルプロセスルールSOIは32ナノメートルプロセスルールSOIへ、40ナノメートルプロセスルールバルクは28ナノメートルプロセスルールバルクへと、それぞれ微細化(フルノード)される予定だ。この32ナノメートルプロセスルールSOIと28ナノメートルプロセスルールバルクの世代から、ゲートファースト(後述)によるHigh-k/Metal Gate技術(HKMG)が採用される。32ナノメートルプロセスルールSOIが高性能にフォーカスする一方で、28ナノメートルプロセスルールバルクは超低消費電力技術をターゲットにするという。

 このうち32ナノメートルプロセスルールSOIプロセスにより量産されるのがAMDのAPU製品であるLlanoで、すでに先行量産として数千個のサンプルを出荷したという。Llanoは、従来のAthlon/Phenomと同じStarsコアを最大4コア搭載したクアッドコアCPUで、合わせてDirectX 11対応のグラフィックス機能を内蔵する。32ナノメートルプロセスルールHKMG SOI技術はすでに確立しており、2011年後半にLlanoの量産が立ち上がる見込みだ。

 一方、28ナノメートルプロセスルールバルクは、消費電力の低さと低コストを武器に、モバイルおよび民生電子機器向けチップの生産を狙う。もちろんその主力と考えられているのはARMアーキテクチャのCPUだ。GLOBALFOUNDRIESはARMとパートナーシップを結んでおり、業界初の28ナノメートルプロセスルールによるARM Cortex-A9のテープアウトが間もなく(2011年第2四半期)行われることになっている。量産は2011年第3四半期の予定だ。

 また、この28ナノメートルプロセスルールHKMBバルクによるCortex-A9コアベースのSoCプラットフォーム(開発コード名でSemper)の開発も進められている。

32ナノメートルプロセスルールHKMG SOIによるLlanoは、数千個をサンプル出荷した。一方、Samsungは32ナノメートルプロセスルールHKMGバルクによるSoCを発表している。28ナノメートルプロセスルールHKMGバルクは、このハーフノードシュリンクとなる(写真=左)。現在開発中の28ナノメートルプロセスルールHKMGバルクによるARMベースSoCを用いたSemperプラットフォーム(写真=右)

22ナノメートルプロセスはスキップ、次は20ナノメートルへ

 興味深いのは、この32ナノメートル/28ナノメートルプロセスルールの次の世代に関する動向だ。当初は、32ナノメートルプロセスルールSOIのフルノードシュリンクとして22ナノメートルプロセスルールが、28ナノメートルバルクプロセスのフルノードシュリンクとして20ナノメートルプロセスルールが、それぞれ予定されていた。

32ナノメートル/28ナノメートルプロセスルールのフルノードシュリンクとなる22ナノメートル/20ナノメートルプロセスルールだが、GLOBALFOUNDRIESでは20ナノメートルプロセスルールにフォーカスしたいという

 しかし、同社が1月25日に都内で開催した2011年の事業戦略に関する説明会において、CEOのグロース氏は22ナノメートルプロセスルールSOIの開発を事実上行わない方針を示した。その理由について同氏は、「顧客の多くは22ナノメートルプロセスルールをスキップして20ナノメートルプロセスルールへ向かうと考えられる」としており、GLOBALFOUNDRIESは20ナノメートルプロセスルールHKMGバルクの開発に注力する意向を表明した。

 これにより、GLOBALFOUNDRIESにおいてSOIプロセスは、当面32ナノメートルプロセスルールが最後になるのではないかと考えられる。ファウンダリ最大手のTSMCが扱っていないことが示すように、半導体の受託生産において、高性能だがコストも高いSOIプロセスに対するニーズは高くない。それでもGLOBALFOUNDRIESがSOIを手がけるのは、AMDが主力のプロセッサにSOIプロセスを採用しているからだ。

 2010年11月開催のFinancial Analyst Dayで公開されたAMDの製品ロードマップでは、2012年の製品として、Bulldozerコアを用いたTrinity(ノートPC向け2〜4コア) APU、Komodo(デスクトップPC向け8コア) CPUおよびTrinity(デスクトップPC向け2〜4コア) APUの3種類のプロセッサが、32ナノメートルプロセスルールHKMG SOIを用いることになっていた。同様に、サーバ向けプロセッサについても、2012年に導入予定のTerramarおよびSepangが32ナノメートルプロセスルールHKMG SOIを使うことになっていた。

 こうした高性能を追求する製品も、その次の世代では、すべて20ナノメートルプロセスルールHKMGバルクを採用する可能性が高まったと言えるだろう。

 なお、Bobcatコアを用いたKrishna(2〜4コア、ノートPCおよびデスクトップPC向け) APUは、28ナノメートルプロセスルールを採用することになっている。が、現時点で製造委託先がTSMCになるのか、GLOBALFOUNDRIESになるのかは明らかにされていない。とはいえ、2011年1月に発表されたOntarioとZacateはTSMCの40ナノメートルプロセスルールバルクで製造されており、どちらの委託先を選ぶにしてもバルクプロセスになることは間違いないと考えられる。

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