第10回 UQコミュニケーションズ野坂社長インタビュー中編「ライバルの新世代サービス、逆に“WiMAXの強み”を訴求できる引き立て役」本田雅一のハイスピード・ワイヤレス・チャンネル

ライバルとなる新世代通信サービスが始まる中、他社に先だって展開する「WiMAX」は2011年度以降、どんな計画、方針でサービスを展開し、どんなユーザー価値を提供してくれるのか。前回に続いてUQコミュニケーションズの野坂社長に聞く。

» 2011年03月04日 10時00分 公開
[本田雅一,PR/ITmedia]
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ライバルも新世代サービスを開始 改めて「WiMAXの強み」が訴求できる

聞き手 本田雅一(以下、本田) 今後、2011年度はどのような方針でエリアを拡大していくのでしょう?

(撮影:平沼久奈) UQコミュニケーションズの野坂章雄社長

UQコミュニケーションズ 野坂章雄社長(以下、野坂氏) 2010年は都市部のエリアカバーの強化とともに、都市周辺の住宅地での品質を高める努力をしてきました。いわゆるベッドタウンのカバー率を上げることで、自宅と職場、あるいは出先での利用可能な場所を増やし、自宅固定回線もWiMAXで置き換えられますよ、という提案をするためです。この路線はもちろん続けますが、2011年度はさらに一歩踏み込みます。

 具体的には「近郊の住宅地と都心の間をつなぐ通勤路沿線の回線品質を強化」していきます。自宅を出るときにWiMAXルーターを携え、通勤途中にも自宅と同じ高速で快適な環境のブロードバンド回線を使い、それは都市部での会社や学校、そして移動中ももちろん活用できるというシナリオです。ずっと同じ環境で高速な回線を利用できれば、モバイルデバイスを利用する際のストレスはずっと小さなものになります。さらに関西では、トンネル内におけるWiMAX利用についての実証実験を始めています。

 首都圏だけでなく、大阪、名古屋といった都市圏でも、都市部・沿線、住宅地という3点セットでの整備を強化し、首都圏と同じ環境を実現させます。それがある程度進んでくれば、今度は各県庁所在地に続く地方都市の強化も行います。

本田 他社では、HSPA+/DC-HSDPAやLTEサービスの提供も始まり、WiMAXにもライバルが増えました。このライバルに対していかがですか。

野坂氏 2010年はブロードバンドワイヤレス元年だと話してきました。HSPA+やDC-HSDPA、そしてLTEもサービスが始まり、いよいよWiMAXが試される状況になっていますね。

 しかしライバルが登場したことで、モバイルブロードバンドの活用シーンが広がるという面でアプリケーション開発の底上げになってくれますし、我々のサービスがさらに認知度を上げるきっかけになると自信があります。また、WiMAXという視点で言えば「1つの契約で複数の機器を安価に併用」できること、そしてスペック上の最大速度でなく「実効速度の速さ」や、他社に先行して基地局整備を進めた「エリアの広さ」が強力な武器になりつつあります。我々なりの特徴を生かした差異化がきちんとできるようになってきていると思います。

“WiMAXの40Mbps、他社の42Mbps”は、速度比較の前提条件が異なる 「WiMAXはその時点において、最高の実効速度を提供していく」

(撮影:平沼久奈) 聞き手の本田雅一

本田 実際にライバルのサービスが始まり、顧客からのフィードバックはありますか?

野坂氏 他社のサービスに対して私どもがコメントするものではありませんが、LTEは(2011年2月現在)まだPC用のデータ通信機器のみしかなく、カバーエリアも大きく違います。第三者機関のMMD研究所によるWiMAX、EMOBILE G4、Xiをさまざまな角度から比較したリポートによると、高速通信ができるエリアはもちろんですが、多くの面でWiMAXが優れているとの結果が出ていました。我々は2010年度末には累計80万契約の対外公約を達成できる見込みなので、さらにサービス品質を充実させていきます。

 1つだけ「WiMAXはその時点において、最高のスピードを提供していく努力をしていきます」と申し上げておきます。WiMAXからWiMAX2への進化も計画していますが、現時点でも実効速度において最高速です。

 よく、WiMAXは下り最大40Mbpsなので、DC-HSDPA(の下り最大42Mbps)よりも遅いんですねという話を聞くのですが、通信のエラー訂正を考慮したものか否かという点で「速度比較の前提条件」が大きく異なります。同じ符号化率で比較するとWiMAXは48Mbpsという数値になりますが、エラー訂正を行わない通信などありえませんのでそうは謳いません。「正確な最大値」として最大40Mbpsとしています。

 もちろん、実利用時の速度もWiMAXは高速です。速度の出る条件も異なるため、実際にみなさんが利用する環境で比較していただければ、先に述べた第三者機関が出した結論と同じ結果が出ると確信しています。

本田 契約数の伸びですが、当初より基本理念として盛り込んでいたMVNO(仮想移動体通信事業者)への回線提供が、ここにきて契約数増加に大きく寄与しているようですね。

野坂氏 2010年12月に契約数が躍進した理由は、もちろん同年11月にUQ Flat 年間パスポートを導入した効果がありますが、合わせて販売店さんの扱いがそのタイミングから大きく変化したことも大きいと思います。以前は量販店における携帯電話販売コーナーの後ろの方などにあり、知っている人にしか訴求できなかった経緯があります。ところが最近は、かなり目立つ位置にWiMAXコーナーが置かれるようになり、そこにUQ Flat 年間パスポートの導入や新型の高性能WiMAXルーターの投入も重なって大幅増を獲得できたと自己分析しています。

本田 販売店での扱いが改善した背景には、販売店自身がMVNOとして通信とハードウェアをセット販売しやすくなり、またMVNOとしての利益も出せるようになってきたことが大きいと流通サイドから聞いています。

野坂氏 直接、そうした話を私どもが聞いているわけではありませんが、一部家電量販系MVNOさんがWiMAXのMVNO事業で黒字転換したという記事などは拝見しました。そうした事実の積み重ねで意識が変わってきたということはあるかもしれません。

 また、固定回線が伸び悩んでいることもあり、インターネットサービスプロバイダさんも積極的にWiMAXのMVNOとして訴求してくれるようになってきました。販路で言えば、さらにJ:COMさんとかケイ・オプティコムさんなど固定ブロードバンド系の会社との協業も始まっています。我々の提供するWiMAX回線は、販売者も機器の種類も、連携するサービスも多数あり、柔軟なサービスメニューが提供できるのが強みですね。

 2011年はWiMAXのMVNOがさらに集まり、WiMAXでサービスを提供する企業全体でサービスの提案などもしていきたいです。MVNOからも意見を言ってもらい、共通の認識を持ちながらインフラ整備の計画やサービスメニューの開発を行っていきたいと思います。

(撮影:平沼久奈)  

 (続く) 最終回は、WiMAXを含む新世代通信サービスのインフラ設備の考え方について、「WiMAX搭載スマートフォン」について聞く予定です。

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提供:UQコミュニケーションズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2011年3月10日