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» 2011年03月07日 10時00分 公開

実物と写真と画面と印刷の色が合わない悩みに:デジカメ好きなら“カラーマッチング”ツールをすぐに導入すべし! (1/3)

デジタルフォトに一家言あるような人は、カメラやレンズ、ストロボ、三脚などの機材をよく吟味し、撮影時はフレーミングや露出、シャッター速度、フォーカスといった基本もしっかり押さえていることだろう。しかし、液晶ディスプレイやプリンタの環境構築まで万全といった人はどれだけいるだろうか? もし、これらが不完全な状態なら、せっかくこだわり抜いて撮影した写真も不完全なものになってしまうかもしれない。ITmediaでPC USERやデジカメプラスを中心に活躍しているプロカメラマンの矢野渉氏が、カラーマッチングの重要性を訴える。

[ITmedia]
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写真にこだわるなら、カラーマッチングの環境作りから

矢野渉:PC USERをはじめ、Webや雑誌媒体のカメラマンとして幅広く活動。写真はもちろん、PC製品に関する造詣も深い。PC USERにて「金属魂」(きんぞくだましい)を好評連載中

 写真好きといわれる人々は、だいたいが「デジカメ好き」だ。デジカメのスペックや新しい技術、各カメラメーカーの発色の違い、などに詳しい知識を持っている。デジタル一眼やハイエンドコンパクトを次々と買い替え、それをうまく使いこなしているから、当然写真も上手だ。プロから見ても「ソツのない」写真が撮れている。

 そういうデジカメ好きな知人から、ある日「色」の問題について質問を受けた。例えば風景写真を撮影して、それをカメラ背面の液晶で確認して「この色だ」と確信して撮影を済ませたとする。家に帰ってRAWデータを教科書通りに現像してみるのだが、どうにも撮影時に見た色にならない。そこでフォトレタッチソフトで色を変え、なんとか記憶していた色に近づけた。次にその写真をプリントしてみると、また全然違う色になってしまった……。

 聞くと、液晶ディスプレイもプリンタも、いわゆるハイエンドなものを使っている。ではなぜ色が合わないのか。彼がRAW現像を行っている部屋の様子を訪ねてみて原因が分かった。彼の一連の作業から「カラーマッチング」(文字通り、色と色を合わせること)の概念が抜けていたのだ。

 こんなにも写真を愛し、撮影も上級者である彼が、なぜそこまで考えが及ばなかったのか。それはフィルム時代の習慣の名残りがあるからだと思う。

 思い出してほしい。写真にこだわりを持つあなたは、街のDPE屋さんのプリントに飽きたらず「プロラボ」というところにポジフィルムを持ち込んだ経験があるだろう。ビュアーでポジを見ながら「ポジの色に忠実に」という注文をつけてプリントをお願いする。果たして上がってきたプリントはイメージ通りの色だったはずだ。

 なぜこんなことが可能なのか。それはプロラボの店頭が、いわば「カラーマッチング」されていた状態だったからなのだ。大手プロラボの堀内カラー(HCL)を例にとれば、受け渡しカウンターの横には選挙の時の記入台のような、両側を目隠ししたフィルムビュアーが5、6台並んでいる。ここでポジの色を確認するわけだが、あのビュアーはイルミックスI型という機種で、堀内カラーが独自に開発したものだ。色温度5000Kの蛍光ランプ光源と完全なホワイトが出る専用拡散板で構成されている。そして気付かないかもしれないが、プロラボの室内照明はすべて色温度5000Kの蛍光管が使われているのだ。もちろん、現像の現場でもまったく同じ環境が保たれているのはいうまでもない。

 出来上がったプリントの色を確認したい、といえば堀内カラーではカウンターの上にイルミックスI型を置いてくれる。そこにポジを置いてプリントと比較する。この時、ポジフィルムを透過する光とプリントに当たる室内照明はともに5000K。晴天の昼間の日光に近い色だ。この環境があってこそ初めて、色に関して担当者と意見交換ができるのだ。

 フィルムからのプリントの場合、この環境は現像所側が作ってくれていた。あまりに自然なので気にとめることもなく、当たり前のことになっていただろう。しかし、あなたが自室で、自前で満足のいくプリントをするためには、このプロラボの環境を自室に構築しなければならないということなのだ。

 デジタルカメラ、液晶ディスプレイ、プリンタにこだわるなら、同じように「カラーマッチング」にも投資をすべきだということを分かっていただけたと思う。

微妙な色の写真をどのようにディスプレイに表示し、印刷すればいいのか?

晴天の日陰での撮影。色の見え方はこの通りだが、この生地の本当の色ではない。素人ゆえ、顔が写っていないのはご勘弁を

 私事だが2011年、娘が成人式を迎えた。プロとしてはもちろん写真を撮ったわけだけれども、これが面白い(色再現が難しい)素材だったので、今回はカラーマッチングの例として使ってみたい。

 色が派手な振袖は嫌だという本人の希望で、ヴィンテージの着物を探して振袖に仕立て直してもらったようだ。もともとの色は深い「あずき色」。生地そのものに細かい花模様が織り込んであり、その上に「だいだい色」の菊が描かれている。所々に金糸の刺しゅうが施された凝った作りだ。さらにほんのりと薄く見えるだけだが、目立たないようにさまざまな植物が透かしのように描いてあるのも渋い意匠だ。

 ただ、かなり光沢のある絹織物なので、晴天下で撮影すると光ってしまい、全体に軽い感じになってしまう。そこで、この生地本来の色を再現すべく、撮影、液晶ディスプレイ表示、プリントのカラーマッチングに挑戦した。

 まず撮影は生地のテカりを極力抑え、細部の染めまで分かるように撮影をした。

こうやって見ると意外にモダンな感じもする。年を取っても使いまわせる着物だ

 これを液晶ディスプレイに表示するわけだが、今回はナナオから発売されたばかりの27型ワイドモデル「FlexScan SX2762W-HX」とカラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」のセットを例に見ていこう。特にEIZO EasyPIXはソフトウェアのバージョンが2.0にアップして選べる設定の範囲がかなり広がったようなので、使うのが楽しみだ。

27型ワイド液晶ディスプレイ「FlexScan SX2762W-HX」は、広視野角のIPSパネルを採用し、596.74×335.66ミリもの表示領域と2560×1440ドットの超高解像度を確保。おまけにナナオ得意の高画質化技術をこれでもかと詰め込んでいる。可動範囲の広いスタンド「FlexStand 2」や10ビット入力対応のMini DisplayPort端子を新採用したほか、独自の「輝度ドリフト補正機能」も強化し、電源オンから輝度が安定するまでの時間をさらに短縮した(写真=左)。カラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」は、2011年2月に公開された最新版のソフトウェア(ver.2.0)を導入することで、目標値(輝度、色温度、色再現域、ガンマ)を数値指定できる「キャリブレーション」モードが使えるようになった。色合いや明るさを目視で感覚的に調整可能なモードも健在だ(写真=右)

まずはカラーマッチングの下ごしらえ

5000Kの蛍光灯は家電量販店などで簡単に手に入る。「昼白色」の表示や型番の中の「N」の表示で区別できる。写真は今回使用した日立アプライアンスの「パラライト FPL13EX-N」

 さて、実際の作業前にやっておかなければならないことがある。液晶ディスプレイ周辺の環境作りだ。今回は僕がいつも使っている撮影スタジオ内での環境ではないので、外光のない夜に作業した。本当はこの状態で色評価用の高演色蛍光管下で作業するのがよいのだが、この蛍光管は一般には少々入手しづらい。そこで今回は写真の色評価に向いている家庭向けのランプとして、色温度5000Kで3波長形昼白色の蛍光灯を手元のスタンドに取り付け、この光源だけで作業を進め、プリントの色評価も行った。

 もう1つは使用しているフォトレタッチソフトとプリンタドライバのカラーマネージメントの確認だ。最近の「Adobe Photoshop CS」もしくは「Adobe Photoshop Elements」を使用していれば、自動的にOSに設定されたモニタープロファイルを読みに行くので安心だが、デジカメ付属の現像・画像調整ソフトを使っている場合は初期設定がsRGBのものがあるので、設定変更が必要だ。常にAdobe RGBで撮影している人は、そのままだと正しい色がでないことがあるので、注意しなければならない。

 プリンタドライバは常に最新のものをインストールしておくことと、プリントの際の設定を間違えないことだ。プリンタドライバにまかせて画像をプリントする場合、液晶ディスプレイで表示できる色域とプリンタが出力できる色域の差異やプリンタドライバによる自動色補正によって、色味の違いが出てしまうことが多い。

 ここはやはり業界標準のAdobe Photoshop CS5(高すぎると感じるなら、下位のAdobe Photoshop Elements 9でも十分だ)を導入して、Photoshop側のカラーマネジメントシステムをつかってプリントしたほうが安全だと思う(その際にプリンタ側の自動色補正機能をオフにすることを忘れずに)。Adobe Photoshop CSについてはプリント用紙別のICCプロファイルを登録すれば、画面上でプリント後の彩度の落ち方まで確認できて便利だ(Elementsは非対応)。

 こうしたカラーマッチングの下ごしらえについては、ユーザーの環境もそれぞれ違うので、細かく解説していくと切りがない。ナナオのWebサイトに詳しい解説があるので、環境構築の前に一度チェックしておくことをおすすめする。

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提供:株式会社ナナオ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2011年3月31日