「VAIO F(3D)」徹底検証(前編)――さすがに“4倍速フルHDの3D映像”は格が違った2DのBlu-rayも地デジも3D変換(2/4 ページ)

» 2011年03月23日 11時15分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]

4倍速駆動とLEDバックライト制御でクリアな3D立体視表示を実現

3D立体視の方式は、アクティブシャッター式のメガネを用いるフレームシーケンシャル方式だ。視聴可能範囲は距離が300センチ、角度が左60度、右60度、上45度、下30度。視聴推奨範囲は距離が60センチ、角度が90度(垂直)とされている

 3D立体視の方式としては、フレームシーケンシャル方式を採用している。ディスプレイに右目用の画面と左目用の画面を交互にすばやく表示しつつ、それと連動して3Dメガネの左右のレンズシャッターを交互に開閉することで、左目と右目に違う画面を映し、立体的に映像を見せる仕組みだ。

 メーカー製PCの3D立体視対応モデルには、偏光方式(ラインバイライン)を採用している製品も見られるが、1画面に右目用と左目用の2つの画像を合成表示しつつ、偏光メガネで左右の目に画像を分離する偏光方式に比べて、フレームシーケンシャル方式は縦の解像度を維持したまま立体視化できるため、精細さで優位に立ち、視聴可能な範囲が広いというメリットもある。

 もっとも、フレームシーケンシャル方式の3D立体視は、すでにNVIDIA 3D Vison対応のPC本体や液晶ディスプレイが多数出回っている。では、VAIO F(3D)は何が違うのか。それはフレームシーケンシャル方式を採用しながら、3D立体視のさらなる高画質を目指し、液晶テレビのBRAVIAブランドで培ったさまざまな技術が投入されていることだ。

 画質面での目玉が、4倍速駆動に対応した16型ワイド液晶ディスプレイ。フレームシーケンシャル方式では、高速に画面を書き換えることで左右の目それぞれに違った映像を交互に見せるのだが、そのために目に入る光量が通常より大きく減って暗くなってしまう弱点がある。また、チューニングによっては左右の映像が混ざって2重に見えてしまう「クロストーク」という現象も少なからず発生し、見づらさや目の疲れの原因になる。

 この新VAIO F(3D)では、4倍速(リフレッシュレート240Hz、つまり毎秒240コマ)で画面を書き換え、左目用と右目用の画像(毎秒120コマ)の間に黒い画面(毎秒120コマ)を挿入するとともにLEDバックライトを緻密に制御する。左右の映像が描かれているときには高輝度に発光して光量を確保し、黒が描かれてているときは逆にバックライトをオフにすることで目の残像をリセットし、クロストークを極限まで抑えた、明るくクリアな3D映像を実現している。

VAIO F(3D)が搭載する3D立体視機能の概要(製品情報ページから引用)。左が一般的な3D立体視対応PCでのフレームシーケンシャル方式(2倍速駆動)、右がVAIO F(3D)のフレームシーケンシャル方式(4倍速駆動)だ。4倍速駆動の液晶パネルに、黒挿入とLEDバックライト制御を組み合わせることで、クロストークを抑え、明るくクリアな3D映像が得られる

 詳細については明かされていないものの、液晶パネルの駆動方式に一般的なTN方式ではない、黒描画が高速な駆動方式を採用したのもポイントだ。応答速度はオン時で0.3ms、オフ時で3ms、全階調間で3mとされており、この立ち上がりの速さによって、毎秒120コマのすばやい黒挿入を実現している。

 この業界トップレベルという高速な応答速度に加えて、広い視野角を確保しているのもうれしい。液晶ディスプレイの開く角度は約125度までと、最近のノートPCとしてはあまり開かないほうだが、視野角が広いので、実用上はあまり不都合がないと思われる。

 表面には「VAIO Z」や新型「VAIO S」といったモバイルノートでも採用されているハーフグレア処理が施されており、光の拡散を抑えた締まりのある黒を表現しつつ、映り込みも最小限に低減している。特に3D立体視では外光の反射が画質を大きく損ねるが、この表面処理なら照明や自分の顔が暗いシーンで映り込むようなことはない。

 画面の表示解像度は1920×1080ドットに対応しており、フルHDの解像度で収録されているBlu-ray Disc/Blu-ray 3Dコンテンツも本来の解像度で楽しめる。色域については、クリエイティブ向け液晶ディスプレイのAdobe RGBカバー率100%とまではいかないが、sRGBカバー率は100%で、ノートPCの液晶ディスプレイとしては広いほうだ。

4倍速駆動に対応した高速応答/広視野角/低反射コート付きの16型フルHD液晶パネルを新たに採用した(写真=左)。VAIO独自の液晶ディスプレイグレードは、最高クラスの「VAIOディスプレイプレミアム」だ。液晶ディスプレイは約125度まで開く(写真=右)

 さて、実際に3DコンテンツをVAIO F(3D)で視聴してみると、ほかの3D立体視対応PCとの違いははっきり感じる。とにかくVAIO F(3D)で見る3D立体視映像は、クロストークがないクリアな表示で、色合いも整っており、フレームシーケンシャル方式特有の暗さもかなり抑えられ、目も疲れにくい。筆者としては、2倍速駆動(120Hz)のNVIDIA 3D Vision対応ディスプレイの場合でも、それだけ見ていたときには特にクロストークをはっきり意識することはなかったのだが、VAIO F(3D)を見てしまうと、明らかにグレードの違う画質と分かる。

 また、個人的に、3D立体視はある程度ディスプレイから距離を置いたほうがよりリアルに感じられるという印象がある。表面が光沢だったり視野角が狭かったりすると、そういう距離を置いた姿勢ではちょっと体勢を変えただけで映り込みが気になったり、色が変わったりしがちだが、広視野角とフレームシーケンシャル方式、ハーフグレア処理のおかげでそれほど神経質に液晶ディスプレイの角度を気にしなくて済むのもありがたい。2Dのテレビ映像なども同様に残像感のないクリアな表示と見やすさは特筆できる。

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