そういえば、auの3G定額データ通信はどう?──「Wi-Fi WALKER DATA05」の実力検証3Gポータブルルータレビュー(3/3 ページ)

» 2011年04月01日 17時24分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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サービスエリアは広大、送信速度の速さも魅力

 では気になる通信速度も検証しよう。

photo 平日3つの時間帯に東京・大田区のJR某駅前喫茶店で計測した通信速度

 本機はCDMA 1X EV-DO Rev.A対応で、下り最大3.1Mbps、上り最大1.8Mbpsで通信できる。少なくともこの値を見るだけでは、同じ3GのFOMAハイスピード(下り最大7.2Mbps/上り最大5.7Mbps)やイー・モバイルのDC-HSDPAサービス(下り最大42Mbps/上り最大5.7Mbps)に見劣りするが、実利用時にどのくらい安定した速度で通信できるかが重要だ。

 実通信速度の参考テストとして、計測は平日の朝(9時ごろ)、昼(13時ごろ)、夜(21時ごろ)に東京・大田区内の某JR駅前にある、基地局密度は高いが、トラフィックも相応にあると想定されるアンテナバー3/3本の喫茶店店内で行った。speed.rbbtoday.comで5回計測し、下り速度の値がよかった上位3回分をスコアとして採用した。

 結果は下りで最大3.29Mbps、上りで最大0.69Mbpsだった。下り3.29Mbpsの値は計測誤差と思うが、全体的に下り2Mbps弱を順当に記録したのには驚いた。上りは平均0.56Mbpsだったが、こちらは時間帯に関わらず値のブレが少ないのがポイントだ。もちろん電波環境にともなう使うエリアや用途によるが、これだけきちんと速度が出るならば一般的なモバイル利用においてかなり普通に使えると評価できる。


photo 下り速度が最も高速だった計測結果。下り3Mbpsを超えたのは1度だけだったが、2Mbps程度は普通に出る印象だ。理論最大値の3.1Mbpsに対してのこの実効速度はなかなかのものと言える
photo www.itmedia.co.jpへpingを実行した結果。RTTはほぼ100ms前後だ。ちなみに同日同場所で計測したFOMAネットワークでもほぼ同等の結果だった

 ちなみに、この計測結果には含んでいないが、筆者の都内行動圏内で散発的に計測した場合も上り0.5M〜0.7Mbpsほどの速度は最低限出ることも確認した。これは、2011年3月現在のFOMA網に対するメリットととらえられる。FOMAハイスピードは上り最大5.7Mbpsだが、実際に基地局側が対応している場所は意外に少ない。東京23区内ならともかく、例えば九州では本当に主要駅、空港周辺のみしか対応していなかったりするので、大半は上り最大384kbps止まりとなる。それに対して上り最大1.8MbpsとなるauのCDMA 1X EV-DO Rev.Aは、かなり広いエリアですでに展開済みである。

 体感値でも、筆者の行動範囲においてはWebサイト・Web系サービスはほとんどの場所で特にストレスは感じなかった。Flash広告などを多用するサイトなどでは一部その部分のみ表示が遅いなと思うシーンもあるが、普段使う、より高速な固定の光回線やWiMAXと比べたためにそう感じたのであり、それだけ実用レベルに収まっているということだ。

 移動中のスマートフォン利用も同じだ。データの途切れをほとんど感じない点は、基地局が密な3Gサービスならである。Webサイト表示のように細かいデータの送受信に影響のあるRTT(接続遅延時間)も、ITmediaのサイトに対して打ったPing値で100ms前後と、HSDPAエリアでのFOMAネットワークとほぼ同じだった。

photophoto YouTube動画:480p(左)と720p(右)再生時の無線LAN送受信状態。下り速度は細かく上下しているがほぼ途切れなくデータを受信しており、よりデータ量の多い720p動画は相応に下り速度も速いのが分かる

 なお、au(例えばau.NET利用時)もほかの3G通信事業者と同様に大容量・大量のファイル送受信、ストリーミング利用などに速度制限を施すこともあるとしている(参考:au.NETのサービス概要)。筆者自宅のFTPサーバーから100Mバイトほどのファイルを夜間にダウンロードしてみたが、速度は0.7〜0.8Mbps程度をコンスタントに維持していた。こちらは利用時のトラフィックなどの状況に左右されると思うが、ビジネスデータや静止画、ちょっとした動画の受信程度なら問題なさそうだ。

photophoto 「FileZilla」を用いて100Mバイトのファイルを受信中。おおむね0.8Mbps程度だ(画像=右)

現auケータイユーザー、そして「つながることを重視」するなら悪くない選択肢

photo

 本機およびauのデータ通信サービスは、ここ最近FOMA網やイー・モバイル網を用いるポータブルルータと比較するとあまり話題に上らなかった感はあるが、2011年3月現在で唯一となるauの3Gモジュール内蔵ポータブルルータとしてよくまとまっていると思う。

 無線LAN部分はIEEE802.11nやマルチSSIDに対応しない点など、他社ポータブルルータ競合製品も含めると若干足りない機能はあるが、PCやスマートフォン用として導入するのであれば困ることはない(少なくともモバイル環境で最大数Mbpsの3G回線経由で使う限り、IEEE802.11nであることにこだわる必要はさほどない)。

 本機を積極的に選ぶ理由があるのは、やはり既存のau携帯電話ユーザーだ。auユーザーであれば、料金プランの「WINシングル定額」を長期契約の縛りなしに、既存のauケータイ契約との「セット割」を適用することで月額料金から525円の割引があり、端末をシンプルプランで購入すれば月額最大で5460円+ISP費用に収まる計算になる。また、毎月の利用料金から最大13カ月間1050円割り引くキャンペーン「Wi-Fi WALKERデビュー割」が2011年5月31日まで延長されたので(当初は3月31日までだった)、このキャンペーンを適用すれば最大13カ月間、月額料金が4410円+ISP費用まで下がる。

 加えて、無線LANを搭載するWi-Fi WIN対応のauケータイと組み合わせると“よりおいしく”使える。Wi-Fi WINは、Eメール、EZweb、PCサイトブラウザ、アプリなどパケット通信のサービスも無線LAN経由で利用できるため、本機と併用するならば音声端末側の3Gパケット通信を一切しない使い方が可能だ(同時に、音声端末と本機のサービスエリアが同じであるのも大きなポイントである)。キャリアメールについては、1095円/月でメール送受信を無料とする「ガンガンメール」を併用することで、本機利用時もパケット通信料金を気にせずに音声端末で送受信できる。

 auのデータ通信端末としてはWiMAX内蔵の「HTC EVO WiMAX ISW11HT」も魅力的な機器の1つだが、Wi-Fi WALKER DATA05も悪くはない。新旧800MHz帯対応の3Gネットワークとともに「サービスエリアが広く、とにかくつながること」を重視しつつ、新生活用に定額モバイルデータ通信環境の追加導入を計画する「現auケータイユーザー」に絶妙にマッチする1台と思う。


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