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» 2011年04月08日 17時20分 UPDATE

やっぱエミュ:ゆめのこんぴゅーた「Pandora」でソフトウェアを動かそう! (1/2)

そろそろPandoraが届いた人も増えてきたはず(と信じたい)。連載第2回ではPandora上で動作するソフトウェアを紹介していく。さあ、いじるぜ。

[瓜生聖,ITmedia]

→・2年越しの希望:ぼくがかんがえた ゆめのこんぴゅーた 「Pandora」

そろそろ届いた人も増えたのではないでしょうか

og_pandora_000.jpg GP2Xの“魂の後継機”こと「Pandora」

 Pandoraが日本に上陸してから約2カ月。追加料金を支払うことで注文後7日で届くInstant Pandora(モノは同じ)が販売され、日本でもPandoraオーナーが少しずつ増えているようだ。今回はPandoraの中身についてより詳しく見ていくことにしよう。

 Pandoraの主要ストレージは、内蔵フラッシュメモリ(NANDメモリ)と2基のSDHCカードスロットだ。内蔵フラッシュメモリは、(開発途中で倍増されたとはいえ)512Mバイトしかなく、アプリケーションをインストールしていてはすぐに使い切ってしまう。また、Pandoraは小型Linux機であると同時にゲームコンソールとしての一面も持つ。ゲームコンソール同様、カートリッジを挿すようにプログラムを収めたSDHCカードを入れるだけで実行できるほうがいい。

og_pandora_001.jpg OpenPandoraはファーストバッチ4000台の出荷が完了していないが、Instant Pandoraのページから購入すれば1週間程度で到着する。ただし、499.99米ドル、309.99ポンド、364.99ユーロ(約40500円〜42000円)と、通常よりも割高価格

 この動作はアプリケーションを独自のファイル形式PNDで管理することで実現している。GP2Xの場合はSDカードを挿入後、エクスプローラのようにSDカードの中を探して実行した。拡張子こそ統一性があったものの、ユーティリティとゲームを区別するためのものでしかなかった。その点、PNDはかなり趣が異なる。

 PNDファイルはMac OS XのDMGファイルや、Puppy Linuxのパッケージフォーマットにヒントを得たPandora独自のファイル形式で、アプリケーションを構成するファイル・ディレクトリを1つのファイルにパッケージングしたものだ。

 その実体はISOもしくはSquashFSであり、メニューからアプリケーションの実行を選択すると、PNDファイルがループバックデバイスとして /mnt/pnd/[アプリケーション名] 以下にマウントされる。さらにこのディレクトリへの書き込みを可能にするため、SDHCカード上の pandora/appdata/[アプリケーション名] ディレクトリと合わせて /mnt/utmp/[アプリケーション名] ディレクトリにaufsでマウントされる。

 この仕組みによってアプリケーションからは、 /mnt/utmp/[アプリケーション] として見えるディレクトリに対し、書き込みは pandora/appdata/[アプリケーション名] に、読み込みは pandora/appdata/[アプリケーション名] 以下にファイルがあればそちらを、なければアーカイブ内のファイルを参照するという処理を実現している。

 PNDファイルの仕組みは、ファイルシステムとして閉じた状態で1ファイルパッケージ化できる、というメリットがあるものの、速度の面では不利なこともある。firmware-devメーリングリストではPXMLファイルの高機能化とパフォーマンスの向上について議論されており、非圧縮ZIP形式、圧縮ZIP形式、Cramfsなどを使ってのテストが行われている。

og_pandora_002.jpgog_pandora_003.jpgog_pandora_004.jpg Pandoraのディスク状況。NANDメモリの空き容量は120Mバイト弱だ(画面=左)。SDメモリーカード上のアプリケーション実行中は、マウントされているファイルシステムが増える(画面=中央)。マウント状況の詳細。squashfsは圧縮済みの読み込み専用ファイルシステム、aufsはLiveCDなどで利用されるunion mountの実装だ(画面=右)

コラム:Pandora狂想曲 第2章(1)

→ Pandora狂想曲 第1章

OpenPandoraに、我々が開発した未発表の最新プロセッサを使ってみないか」――テキサス・インスツルメンツ(以下、TI)からのメールは事態を大きく変えた。

 もちろん“未発表の最新プロセッサ”こと「OMAP3530」は、当時の現行プロセッサ「OMAP3430」よりも性能が向上しており、それによるメリットは小さくない。しかし、それ以上に、SoCベンダーからの申し入れが意味するところは大きかった。

 Craigたちが中国で2万ドルを費やして制作した試作機は、プロセッサに韓国Magic Eyes社のSoC、「MMSP2+」を使用していた。これはGP2Xに採用されていたMMSP2の後継モデルにあたる。“GP2Xキラー”となるマシンを目指していたCraigたちにとって、これはごく自然な選択に思えた。だが、それと同時にMMSP2の後継モデルであるからこそ、GP2Xキラーとしては不十分でもあった。

 最初の反対意見は、EvilDragonが管理するドイツの掲示板から挙がった。それは「MMSP2の設計には妥協が見られる」というものだ。「コプロセッサはスケールダウンされて本来の性能を出せないし、2D/3Dアクセラレータが共有メモリを利用する際にCPUをブロックしてしまい、性能を落とす。さらにSDメモリーカードインタフェースとメインメモリ間のDMAアクセスも実装されていない」。長い時間をかけて調査したという投稿者はそう訴えた。

 後継モデルであるMMSP2+を採用すればその一部は改善するものの、根本的な解決にはならない。つまり、「MMSP2+を採用したマシンは、GP2Xを大きく超えるものにはならない」ということだ。そして、ただのマイナーチェンジであれば、Craigたちが作るよりももっと安定性の高いものがGame Park社から販売されるだろう。結局、Craigたちはそのことを証明するためだけに2万ドルを費やしたようなものだった。

 このGP2Xキラー(企画段階ではGPQ3やGP3Xと呼ばれることもあった)は、商業的なしがらみや、技術を理解しない企業上層部から離れ、極端に趣味に走った「夢のマシン」を実現するプロジェクトのはずだ。そのためにはGP2Xからも離れて、プロセッサの選定から考えていく必要がある。

 事実、「GP2XキラーにGP2Xとの互換性は不可欠ではない」という判断もあった。なぜならGP2X自身、GP32との互換性がなかったにも関わらず、大ヒットとなった実績があったからだ。そもそも、Pandoraには“大ヒット”する必要さえなかった。本当に必要なのは、ユーザーが求めるアプリケーションをユーザー自身が容易に移植したり、開発できる機能と性能だ。

 GP2Xキラーへの要望を募った掲示板では、さまざまな意見が寄せられていた。800×480ドットの解像度を持つタッチスクリーン付きディスプレイ、独立したテレビ出力、Wi-Fi、キーボードとデジタルパッド、2D/3Dアクセラレーション、最適化されていないスーパーファミコンエミュレーターがGP2Xに最適化されたものよりも高速に動作すること、バッテリー駆動時間は10時間以上、GP2Xと同等サイズでGP2Xに比べてそれほど高価ではない価格設定――企業の検討会議なら鼻で笑われるような「夢」のオンパレードだ。それはGP2Xの「魂の後継機」がすでにGP2Xの延長線上にはないことを物語っていた。

 しかし、性能を求めれば消費電力は増え、設計も難しくなる。当然、バッテリー駆動時間は短くなり、機能をそろえれば確実に価格に跳ね返る。

 Magic Eyesの「MMSP2+」、FreeScaleの「i.MX31」、TIの「OMAP3430」……プロセッサの検討は続いていたものの、どれを選択するにしても、それぞれのSoCベンダーと取引のある企業に設計・製造を依頼せざるを得ない。そうでなければ最低でも2万〜3万個からの発注となる。当時Craigたちが予定していた生産台数である3000では遠く及ばない。

 そこに舞い込んできたTIからの申し出は、まさに渡りに船だった。


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