iPadシリーズは「単なるタブレット型のハードウェア」ではなく、iPadを通じて得られる新たな体験すべてを一体的に提案している。初代iPadの頃はまず大きなスクリーンに合わせて最適化されたiOSアプリが、iPad体験の魅力だった。あれから1年ほど経過し、今回のiPad 2では、ユーザーが得られるコンテンツ環境はさらに豊かに、楽しいものになっている。
とりわけ重要なのが、「iTunes Movie Store」の存在だろう。iPad 2では9.7インチのIPS液晶ディスプレイを搭載。その鮮やかさや表現力の高さを存分に味わえるのが、数々の映画コンテンツである。
周知のとおり、iTunes Movie Storeは2010年11月から日本でもスタートしており、多くの映画を購入またはレンタルできる。最近では最新の洋画はもちろん、邦画のラインアップも増加。720pのHDコンテンツや、レンタルに対応する作品も増えている。これらの映画コンテンツを、iTunes Movie Storeを通じて簡単に購入・ダウンロード。iPad 2に転送して楽しめるのだ。
これらの映画は、iPad 2本体のディスプレイで楽しむだけでなく、別売の「Digital AVアダプタ」を使うことでHDMI経由で、リビングのデジタルTVで大画面で楽しむことができる。今回のテストでも、iPad 2に転送した映画をリビングのTVに出力して子どもたちと楽しんだが、その映像クオリティの高さは圧巻の一言だった。HDで配信されている映画コンテンツであれば、Blu-ray Discで見るのに負けないくらい美しい。HDMI出力ならば、このようにリビングで家族みんなで映画を楽しめるだけでなく、出張先のホテルのTVでゆっくり映画鑑賞をするといったこともできるだろう。
iPad 2でデジタルTVに出力できるのは、映画だけではない。新たに搭載された「ビデオミラーリング機能」を使うことで、HDMI経由でiPad 2のディスプレイに映し出された画面をすべてデジタルTVやプロジェクタに出力できる。今回はいくつかのゲームアプリや電子書籍アプリも試してみたが、iPad 2で操作しながら、大画面で楽しむというスタイルは予想以上に家族で盛りあがった。
iPad 2では、メインのCPU性能が最高2倍、グラフィック性能が最高9倍と高速になっており、今後、家庭用の専用ゲーム機に負けないくらい高いクオリティのゲームやエンタテインメントアプリが登場するだろう。これが“HDMI経由でデジタルTVでも楽しめる”ことは、リビングルームでの楽しみ方も大きく変えそうだ。
iPad 2では従来以上に、多彩なコンテンツを多様なスタイルで楽しむことが可能になっている。コンテンツ利用環境の充実と、その楽しさを存分に引き出すための仕組みの存在が、iPad 2の大きな魅力なのである。
そして、内蔵カメラの搭載も今回の注目ポイントだろう。iPad 2のカメラは本体前面と背面の2カ所にあり、詳細なスペックは非公表だが、前者はVGAクオリティ、後者はHDクオリティと発表されている。
実際にiPad 2のカメラを試したが、その評価は「必要十分」といったところ。コンパクトデジカメの代わりも十分に務まる「iPhone 4」のメインカメラと比べたら物足りないのは確かだが、そもそもiPad 2のカメラに“専用デジカメに匹敵する性能”を求める人は少ないだろう。むしろ筆者は、iPad 2では”iPad 2らしいカメラの活用”を、ソフトウェアとの連携で実現している点を高く評価した。
その筆頭となるのが、FaceTimeだ。
これはAppleがiPhone 4の発売に合わせて開始したビデオ通話サービスであり、現在ではiPhone 4に加えて、最新のiPod TouchやMacでも利用可能になっている。iPad 2でもカメラ搭載にあわせて、FaceTimeに対応した。
今回は、iPad 2を自宅のリビングルームに置いておき、筆者が仕事で外出した先からiPhone 4でFaceTimeを利用してみた。家にいる子どもたちや妻とビデオ通話を楽しんだのだが、その使い勝手はとても良好だった。自宅は固定ブロードバンドによるWi-Fi環境、外出先ではソフトバンクWi-Fiをはじめとするホットスポットを使ったこともあり、ビデオ通話のクオリティはとても高く、音声や映像が途切れることなく家族との会話が楽しめた。iPad 2はスクリーンが大きく、PCやMacでSkypeのビデオチャットを使うよりも快適かつ気軽に利用できる。妻からは「(筆者が)出張の時にも顔を見ながら話せるから、固定電話の代わりにこれ(iPad 2とFaceTime)を使いたい」と言われたほどである。iPad 2でのFaceTimeは、“イエデン感覚”で使えるのだ。
FaceTime以外でのカメラ利用では、iMovieとの組み合わせが便利だった。詳しくは後述するが、iPad 2でのiMovie利用では、広い画面でHDの動画クリップを編集してホームムービーを作ることができる。この時に気軽にHD動画を撮影できるiPad 2の背面にあるメインカメラが活躍するのだ。
このようにiPad 2のカメラは、さまざまなソフトウェアからの活用でこそ真価を発揮する。今後はApple純正以外にも、iPad 2のカメラを活用するアプリが登場するだろう。
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