5月31日からのCOMPUTEX TAIPEI 2011のスタートに合わせ、米Intel主席副社長のショーン・マロニー(Sean Maloney)氏による基調講演が同会場で開催された。
2011年後半には22ナノメートルプロセスルールへの移行と、同技術を使った新CPU「Ivy Bridge」の発売を控えるIntelだが、この基調講演ではさらにその1年先にある「Haswell」についてのプレビューが行われている(Ivy BridgeとHaswellはいずれも開発コード名)。
2010年3月に同氏の脳卒中による長期の病気療養入りが伝えられて以来、Intel Architecture Group(IAG)部門のトップ不在が続いていたIntelでは、もう1人の共同トップであるダディ・パルムッター(Dadi Perlmutter)氏がその代わりを務めていた。
だが、現CEOのポール・オッテリーニ(Paul Otellini)氏の後継ともうわさされるマロニー氏の長期不在は、投資家らから見て同社の将来展望にもたらす影響も大きい。2010年には「2011年春にパートタイムでマロニー氏が復帰」と伝えられる一方で、外部からの招へいを含むCEO後継者探しが続いていた、といううわさが広く報じられていた。
病み上がり直後で元気とはいえない姿ながらも、COMPUTEXで技術ロードマップを示すという役目で復帰後初の公式の場に現れたマロニー氏の存在は、こうした周囲の不安をかき消す役割を果たしたことだろう。
現在のIntelは1つの岐路にさしかかりつつある状態だ。通常であれば22ナノメートルプロセスルールの導入と、それを使った新CPU発表を今年後半に控えているという従来のロードマップ通りの展開なのだが、現在はご存じのようにスマートフォンやタブレットの興隆によるモバイルデバイスが台頭するトレンドの転換点におり、Intelとしてもこれらトレンドを強く意識した戦略転換を迫られている状態だ。
具体的には、製造プロセスルールの進展とともに同社にはより多くのトランジスタを半導体のダイ上に詰め込む余地が与えられ、さらにアーキテクチャを改良するチャンスが到来する。これをパフォーマンスの大幅強化に割り当てることも可能だが、現在のトレンドでいえば、どちらかといえば省電力やモビリティの部分にフォーカスせざるを得ないという状況にある。
例えば、TAM(Total Addressable Market)という市場の可能性を示す指標があるが、この割合が数年後にはPCよりもスマートフォンのほうが高くなり、さらにタブレットの割合も高まるようになるという。つまり、Intelもこうしたトレンドに合わせた製品展開が必要になるのだ。
Netbook向けの「Cedar Trail」(開発コード名)や小型機器向けCPUのAtom Z670などはこうした市場をターゲットにしており、さらに製造プロセスルールが現行の45ナノメートル世代から32ナノメートルへと進んだ「Medfield」(開発コード名)では、Intel初となるスマートフォンでのCPU採用が実現することになる、と同社では説明している(「Windows 7ケータイ F-07C」のような例外的な端末は除外したうえで)。
これまでIntelでは、製造キャパシティや製造拠点展開における技術的問題、さらにCoreマイクロアーキテクチャの下位CPUとの社内競合というマーケティング的問題の2つの理由から、Atomへの最新製造プロセスルールや技術導入を控える傾向があったが、このMedfieldを皮切りにAtomへの最新製造プロセススルール導入のタイムラグを減らす戦略を加速させることになる。
さらに22ナノメートルプロセスルールの導入で、ARMらの競合製品と技術面で大きくリードする狙いがあるようだ。この辺りは2011年5月中旬にIntelが開催した投資家向け説明会の中で示した内容をフォローしたもので、改めてモバイル重視の姿勢を見せたものだといえる。
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