VOCALOID文化を盛り上げたい――ヤマハ、歌声合成ソフト「VOCALOID3」を発表よりリアルな歌声に

» 2011年06月08日 22時00分 公開
[池田憲弘,ITmedia]
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 ヤマハは6月8日、歌声合成ソフト「VOCALOID」の新バージョン「VOCALOID3」を発表した。本バージョンからは、楽曲制作ソフト「VOCALOID3 Editor」と歌声のデータベース「歌声ライブラリ」を別々に提供する。楽曲制作ソフト「VOCALOID3 Editor」を9月末に、対応する「歌声ライブラリ」は9月末以降に発売する予定だ。

 この製品は、歌詞とメロディーを入力するだけで楽曲のボーカルパートを制作できる歌声合成ソフトウェア「VOCALOID」の最新バージョンだ。「初音ミク」や「がくっぽいど」などが採用する「VOCALOID2」から5年ぶりのバージョンアップとなる。合成音を改良し、より自然な歌声に近づけるとともに、ユーザーインタフェースの改良を行い、ハードルが高いと思われがちな楽曲制作をより簡単に行えるようにしたことが本バージョンの特徴だ。

photophoto 研究開発センター所長の国本利文氏、「VOCALOID3」の開発の背景を語った(写真=左)。研究開発センター音声グループの劔持秀紀氏、「VOCALOID3」の仕様の解説を行った(写真=右)

 VOCALOID3では、合成アルゴリズムの改良し、従来VOCALOIDが苦手としていた「は行」や「ら行」などの音声を滑らかに発音することが可能となった。同様に、早口の合成音も改良された。発表会では、合成音の音程や音色がスムーズに変化することを示すデモを行った。

 楽曲制作ソフトの「VOCALOID3 Editor」のユーザーインタフェースを一新し、従来のピアノロール型のエディタ画面に加え、各トラックを管理しやすいトラックビュー画面を採用した。また、伴奏(オーディオトラック)再生機能も搭載し、合成した歌声と伴奏を同時に視聴できるなど、楽曲製作の効率を高める機能が追加された。「VST Host」機能も追加され、合成した歌声にリバーブなどのエフェクトを付加するなど、DAWがなくても一通りの楽曲制作が行える。なお「VOCALOID2」の歌声ライブラリは「VOCALOID3 Editor」で使用可能だ。

photophoto 発表会で行われたデモ。従来のピアノロール型のエディタ画面に加え、各トラックを管理しやすいトラックビュー画面を採用した

 従来の日本語と英語に加え、新たに中国語、韓国語、スペイン語にも対応する。各国語のライブラリを用意すれば歌声合成が可能になるという。また、ライセンス契約した個人・法人に対して、合成エンジンのAPIを公開する。これにより、新しい歌声合成ソフトウェアの開発が可能になった。対応OSはWindows XP/Vista/7だ。今後、iOSへの対応も予定しているという。

photo ヤマハ研究開発センター ネットビジネスグループの田邑元一氏

 発表会では、ヤマハ研究開発センター ネットビジネスグループの田邑元一氏がVOCALOIDの今後のビジネス展開を示した。今後、ヤマハはビジネスの領域を広げ、VOCALOIDの認知拡大とともにVOCALOID文化を積極的に盛り上げていくという。従来のソフトウェア関連ビジネスに加え、音楽コンテンツの販売や製作支援、グッズ販売などの分野にも積極的に参入していく構えだ。オンラインショップでの同人作品の取り扱いや、同人即売会への出店も行っていく。

 このVOCALOID3エンジンを用いて、韓国でも今秋に「Korean Vocaloid」が発売する予定だ。発表会には音声提供者であるキム・ダヒーさん(今夏韓国でデビュー予定のK-POPグループ「GLAM」のメンバー)が登場し「Korean Vocaloid」への意気込みを述べた。

photophotophoto 10代女性の約2割はボカロ曲をよく聞くというアンケート結果が示された(写真=左)。VOCALOIDの今後のビジネス展開(写真=中央)「Korean Vocaloid」の音声提供者であるキム・ダヒーさん(写真=右)

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