デジタルライフの中心は「クラウド」へ――アップルが目指すデジタルハブ戦略の第2章WWDC 2011基調講演リポート(4)(2/4 ページ)

» 2011年06月14日 18時30分 公開
[林信行,ITmedia]

3つの基本機能を根本から作り直した「iCloud」

コンタクト、カレンダー、メールの基本機能はすべてiCloud用に作りかえられた

 ここでジョブズ氏は、iCloudの機能を披露する。全部で9つだ。まずはMobileMeから引き継がれた「コンタクト」(連絡先)、「カレンダー」そして「メール」の機能から紹介が始まった。「我々はアーキテクチャをすべて変え、ゼロからiCloudのアプリケーションとして作り直した」。

 例えばコンタクトでは、iPhoneに新しい住所を追加すると、それは自動的にiCloudに送られ、そこからほかの機器に転送される。これまではMobileMe同期という機能を使って、複数のMac、複数のiOS機器間で(ユーザーが同期操作を行ったタイミングで)同期していたが、それらの機器に登録されている情報をどれも平等に扱おうとしていたため、機器ごとに異なるバージョンが混在してしまうことが多かった。また、Macで同期したときにどちらの連絡先を残すか問われて、ユーザーが1つ1つ判別する必要があったり、勝手に別の連絡先と認識されて、同じ連絡先情報の複製がどんどん増えてしまうなど、いろいろな問題が起きやすかった。

 しかしiCloudでは、常にクラウド上に置かれた情報が、すべての大元となる情報として位置付けられる。iPhoneに新たに追加された連絡先は、即座にiCloudに転送され、それがほかの機器にもプッシュされる。

カレンダーもiCloudを経由して同期される

 カレンダーも同様だ。iCloudのカレンダー機能では、カレンダー共有機能も提供予定だが、これも同じ仕組みを使って、共有カレンダーに何か予定を追加するとそれがクラウドを経由し、家族や同僚の機器にきちんとプッシュされ、逆でも同様のことが行われる。

 メールでは「@me.com」のアドレスを提供するほか、新規受信メールはすべての機器にプッシュされ、受信箱やフォルダはどの機器でも常に最新の状態に保たれる。

 「それから広告も入っていない」――ジョブズ氏はこれが重要なポイントだという人差し指を立てるジェスチャーをしながら、こう付け加えた。「我々は自分たち自身が使いたい製品を作っているのであり、そこに広告を入れようとは思わない」。

 これまでMobileMeは、これら3つの機能を核として年間99ドルで提供されていたが、これからは同様の機能を無料で提供する。ジョブズ氏がそう語ると場内からは歓喜の声が上がり、喝采が沸き起こった。

アプリも、本も、書類もクラウドで管理

App Storeで購入したアプリケーションもすべてのiOS機器で同期される

 「しかし我々はそこで立ち止まらなかった」――ジョブズ氏が紹介した4つ目の機能はApp Storeだ。新しいiCloudサービスを利用すると、これまでにiOS機器で買ったすべてのアプリケーションが「Purchased(購入済み)」という欄に一覧表示され、お金を再び払うことなく再インストールできるようになる。

 同様にこれから購入するアプリケーションに関しても、1つのデバイスでアプリケーションを購入すると、ほかの所有デバイスでも同時にダウンロードが始まる。iBooksで購入する本も同じだ。1つのデバイスで購入した本が、ほかの所有デバイスでも追加料金なしでダウンロードされるようになる。それどころか、iPadで書籍を途中まで読み、しおりを挟んでおけば、どのページにしおりを挟んだかの情報がすべての機器にプッシュされるため、後から電車の中でiPhoneで続きを読むといったことも可能になる。「とにかく、ちゃんと動くんだ」とジョブズ氏。

 iCloudには、さらにバックアップ機能も用意される。iOS 5では無線LANを使って、PCにデータを同期/バックアップすることも可能だが、これに加えて、PCをいっさい使いたくないという人にも、iCloudを使ったバックアップサービスが提供される。1日に1回、iPhoneなどの機器に登録された連絡先などの情報すべてがiCloud上にバックアップされるのだ。このため、万が一、iPhoneを新調しても、すぐに元の状態に戻すことができる。

 バックアップされるのは、購入した音楽、アプリケーションとiBooks、カメラロールに登録された写真とビデオ、機器設定、そしてアプリケーションのデータとなる。これまでiOS機器では、作成した書類やゲームの進捗状況などをバックアップする方法がなく、新たに機器を買うごとに最初から出直しだったので、アプリケーションデータのバックアップは個人的にも期待したいところだ。

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