これからは“片付けずにスキャン”を普及したい!――キヤノン「imageFORMULA DR-C125」開発秘話開発者インタビュー(2/3 ページ)

» 2011年06月16日 10時00分 公開
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苦労の末に完成した独自の2系統ペーパーパス

―― 原稿の搬送機構だけでなく、デザインとカラーリングも従来とかなり変わってますね。なぜ、このような外装にしたのでしょうか?

指田 デザイナーの狙いは“紙の流れを外から見てイメージできるようなフォルム”でした。よい製品にするためには避けて通れない道でしたが、実際に形にする設計としては、いろいろと厳しかったですね。

開発初期のデザインラフ。特徴的な用紙搬送をイメージさせるため、フロントトレイ周辺のデザインに試行錯誤が見られる

 具体的には、前例のないデザインなので、内部のパーツのレイアウトに苦労しました。ここは設計チームのメカ、電気、シーケンスなどの各担当者とじっくり煮詰めていきました。省スペースだけではなく、スキャナとしてのパフォーマンスも大事ですから、コーディネートは大変でした。

 もう1つ、ラウンド・スキャンによるUターンの搬送と、従来からあるストレートの搬送という2系統のペーパーパスを両立するのもチャレンジでしたね。特にUターンの搬送は最後に紙を押し上げていく必要があります。従来のような下方への排紙ならば、トレイにポンと落とせばよいのですが、上方への安定した排紙はなかなか難しかったです。排紙を上に押すこと自体はよいのですが、それがしっかりとトレイに載るかを検証しなければなりません。何しろ、今までにない搬送機構なので、ノウハウがないのです。それはもうトライ&エラーの繰り返しでした。

2系統のペーパーパスは、本体向かって右下のレバー操作で切り替える。レバーはカチッと上か下に入り、中途半端なところに止まって誤動作しないように作れられている

 細かいところでは、2系統のペーパーパスを切り替えることで、どうしても搬送経路に継ぎ目が生じてしまい、そこで紙が小さな音を立ててしまう問題がありました。ほんの小さな音ですが、通常は発生しないノイズですし、ラウンド・スキャンを搭載したことによってデメリットが生まれるのは何としても避けたかったので、ここも検証を重ねて気にならないレベルまで解消しました。こういった細部の問題を最後まで修正、チューニングしています。

―― そのギリギリまで追い込んだ設計で、最大30枚の給・排紙容量はかなりハードルが高いように思いました。DR-150では20枚でしたよね。

指田 DR-150はモバイル環境まで想定したコンパクトモデルでしたから、その容量でも納得できるでしょう。

 一方、DR-C125は卓上型のモデルなので、中には30枚を超えた給紙がしたいという方もいらっしゃると思います。ここはボディサイズとの兼ね合いですが、給紙容量を増やしてボディが大きくなってしまうと、DR-C125の特長が十分生かせません。全体的なバランスを考えると、このサイズで30枚給紙できれば、卓上スキャナとしてたいていのニーズはカバーできると考えています。

紙送りのミスを抑えることに特別なこだわり

一度に2枚の原稿が誤って搬送されてしまう重送が発生した場合、内部のリタードローラー(グレーの太いローラー)が逆回転して、重なった原稿を分離する

―― DR-C125で驚いたのは、この特殊な設計のボディに、重送を抑止するリタードローラー機構による「ダブらんスキャン」を詰め込んでいる点です。また、重送を検知する「超音波重送検知」も搭載していますよね。この価格帯で、しかもコンパクトサイズのモデルとしてはハイスペックですが、なぜこれらを採用したのでしょうか?

指田 重送の際に紙を分離する方式にはリタードローラー方式とパッド方式がありますが、我々が今までやってきた中ではリタード方式のほうが優れていて、安定性も高いです。パッド方式よりもコストや実装面積では不利になりますが、ここは無理してでも性能を優先しました。

 シートフィード方式のスキャナである以上、用紙搬送の正確さは最も大切にすべき点だと思いますし、後から搬送機構が特殊なので給紙が安定しないなどと言われるのは、設計者として心外ですからね。

 ちなみに超音波による重送検知は保険のようなもので、ダブらんスキャンの性能に不安があるわけではありません。どのような分離機構でも100%ではないので、最後の駄目押しに近い意味で入れています。なので、もしかしたら、1回も動作することなく製品寿命が来るかもしれないと思っています。

 しかし、ドキュメントスキャナはペーパーレス化のための道具なので、スキャンした原稿はすぐに捨ててしまう方も多いでしょう。原稿を捨ててしまってから、重送で1ページ分のデータが抜け落ちていたことに気付くというような事態もあり得ます。こうした致命的なトラブルはコストをかけても避けたいので、万全を期したということです。今後、ラウンド・スキャンの運用データが集まって、機構をより最適化できれば、違った形での提供があるかもしれません。

原稿を見たままの向きで給紙できる「見たままスキャン」の採用により、スキャン作業の手間を省いた

―― 給紙の機能では、ユーザーが原稿を見たままの向きで給紙できる「見たままスキャン」もユニークだと思いました。これはどういった発想から生まれたのでしょうか?

指田 ドキュメントスキャナに慣れてらっしゃる方は、原稿を裏返して逆さまにセットすることが日常的な動作として身についていると思いますが、それは自然な動きではないな、と個人的には感じていました。

 実際に自分でスキャンする場合、用紙をいちいち天地逆にしてセットするのが前々から面倒で不満でした。仕事柄、大量に文書をスキャンするわけですから、書類を手に持って眺めて、それをそのままの状態で給紙トレイに置けたら楽に違いない、と考えまして、今回はそれを実現しています。一度慣れてしまえば、この方向で給紙したほうが手軽だと思います。

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