ハイエンドモバイルの破壊と創造、そして――新型「VAIO Z」を徹底攻略する(後編)最先端“Z”を集中テスト(3/5 ページ)

» 2011年07月12日 17時30分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]

新生VAIO Zのパフォーマンスを明らかにする

 新生VAIO Zの実力はどれほどのものなのか。第3世代デュアルSSDの性能やドッキングステーション(Power Media Dock)接続時のパフォーマンスが気になるところだ。ここからは各種ベンチマークテストの結果を見ていこう。今回は標準仕様モデル(VPCZ219FJ/B)のほかに、VAIOオーナーメードのハイスペックモデル(VPCZ21AJ)も用意した。

 VPCZ21AJのスペックは、Core i7-2620M(2.7GHz/最大3.4GHz、3次キャッシュ4Mバイト)、8Gバイトメモリ、Intel HD Graphics 3000+AMD Radeon HD 6650M(Power Media Dock)、1920×1080ドット表示の13.1型ワイド液晶、512GバイトのデュアルSSD(256Gバイト×2/RAID 0)、64ビット版Windows 7 Professional(SP1)という最速に近いハイスペック構成だ。

 そのほか、テストによっては13.3型ワイド液晶とAMD Radeon HD 6630M 、光学ドライブを内蔵したオールインワンモバイルノートPC「VAIO S(SA)」の「VPCSA2AJ」、VAIO Z(Z1)の2010年春モデル「VPCZ11AFJ」のスコアも参考までに併記した(いずれもVAIOオーナーメードモデルのハイスペック構成)。

 なお、今回テストしたVPCZ219FJ/BとVPCZ21AJは発売前の試作機なので、実際の製品と一部異なる場合がある。

今回テスト結果を比較したVAIOノート
シリーズ名 VAIO Z 2011年夏モデル VAIO Z 2011年夏モデル VAIO S(SA) 2011年夏モデル VAIO Z (2010年春モデル)
モデル名 VPCZ219FJ/B VPCZ21AJ VPCSA2AJ VPCZ11AFJ
販売チャネル 店頭向け標準仕様モデル VAIOオーナーメードモデル VAIOオーナーメードモデル VAIOオーナーメードモデル
CPU Core i5-2410M (2.3GHz/最大2.9GHz) Core i7-2620M (2.7GHz/最大3.4GHz) Core i5-2520M (2.5GHz/最大3.2GHz) Core i7-620M (2.66GHz/最大3.33GHz)
CPU内蔵グラフィックス Intel HD Graphics 3000 Intel HD Graphics 3000 Intel HD Graphics 3000 Intel HD Graphics
外部GPU Radeon HD 6650M (1Gバイト) ※ドック Radeon HD 6650M (1Gバイト) ※ドック Radeon HD 6630M (1Gバイト) GeForce GT 330M (1Gバイト)
メモリ DDR3-1333 4Gバイト (2Gバイト×2) DDR3-1333 8Gバイト (4Gバイト×2) DDR3-1333 8Gバイト (4Gバイト オンボード+4Gバイト) DDR3-1066 4Gバイト (2Gバイト×2)
データストレージ 128GバイトSSD (64Gバイト×2、RAID 0) 512GバイトSSD (256Gバイト×2、RAID 0) 256GバイトSSD (64Gバイト×4、RAID 0) 256GバイトSSD (64Gバイト×4、RAID 0)
光学ドライブ DVDスーパーマルチ ※ドック Blu-ray Disc ※ドック Blu-ray Disc Blu-ray Disc
液晶 13.1型1600×900ドット 13.1型1920×1080ドット 13.3型1600×900ドット 13.1型1920×1080ドット
OS 64ビット版Windows 7 Home Premium (SP1) 64ビット版Windows 7 Ultimate (SP1) 64ビット版Windows 7 Ultimate (SP1) 64ビット版Windows 7 Home Premium
オフィススイート Office Home and Business 2010
発売時の実売価格 25万円前後 30万4800円 24万5300円 31万6800円

第3世代のデュアルSSDの性能はクアッドSSDを上回る

 まずSSDのパフォーマンスを確認しよう。新型VAIO ZのSSDはすべてデュアル搭載のRAID 0構成だ。標準仕様モデル(VPCZ219FJ/B)はSerial ATA 3Gbps対応の第2世代製品で容量が128Gバイト、VAIOオーナーメードモデル(VPCZ21AJ)はSerial ATA 6Gbps対応の第3世代製品で、容量が128G/256G/512Gバイトの3種類から選べる。

 今回は標準仕様モデル(VPCZ219FJ/B)の128GバイトデュアルSSD、VAIOオーナーメードモデル(VPCZ21AJ)の256G/512GバイトデュアルSSD、そしてVAIO S(SA)の256GバイトクアッドSSDとも比較してみた。256G/512GバイトデュアルSSDを搭載したVPCZ21AJのSSD以外のスペックは同様だ(上記の表を参照)。容量やそのほかのスペックに差があるため、厳密な比較ではないが、傾向はつかめるだろう。

CrystalDiskMark 3.0.1(1000Mバイト)のスコア

 第3世代デュアルSSDのメリットは歴然としている。第2世代のデュアルSSDに比べると、シーケンシャルやランダム512Kバイトのリード/ライトがそれぞれ2倍近くかそれ以上に高速化した。ランダム4Kバイトのリード/ライトも確実に高速になっているところをみると、単に高速なインタフェースに対応しただけでないSSDコントローラ自体の性能向上がうかがえる。

 同じ第3世代デュアルSSDの256Gバイトと512Gバイトの比較では、リード性能では少し256Gバイトのほうがよい傾向にある一方、シーケンシャルライトやランダム512Kバイトのライトでは512Gバイトのほうが速かった。特にシーケンシャルライトでは2.4倍以上の速さとなっている。全容量でテストする場合、容量が大きいほうがランダムアクセスの数値上で若干不利になる(アクセス範囲が広いため)のは必然なので、ランダム4Kバイトでの若干のスコア差は気にしなくてよいだろう。

 VAIO S(SA)のクアッドSSDに対して、第3世代デュアルSSDの512Gバイトは全項目で完全に上回るということはなかったが、RAIDで高速化できないランダム4Kバイトのスコアには世代の差が確実に出ている。

 また、詳しくは後述するが、実際の作業のシミュレーションをもとにしたより実践的なテストであるPCMark05とPCMark VantageのHDDスコアでもはっきり第2世代SSDよりも第3世代SSDを搭載したモデルのほうがよいスコアを出しており、総合的に見て「第3世代デュアルSSDは、従来のクアッドSSD以上のパフォーマンス」といっても構わないだろう。

モバイルノートPCとして最高レベルの基本性能を実証

 デュアルSSDの世代の差は、Windows 7標準の性能評価機能であるWindowsエクスペリエンスインデックスのプライマリハードディスクのサブスコアでも確認できる。VPCZ219FJ/Bは「7」であるのに対し、VPCZ21AJは「7.9」と最高スコアに到達した。

 システムの基本性能を調べるテストであるPCMark05とPCMark Vantageの結果はごらんの通り優秀だ。クアッドコアの第2世代Core iシリーズを搭載した一部のハイパフォーマンスノートPCには少し届かないものの、モバイルノートPCとしては最高級のパフォーマンスといって間違いない。無論、この薄さと軽さも考慮したら、抜群のパフォーマンスだ。

左から、Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア、PCMark05 1.2.0のスコア、PCMarkVantage 1.0.2.0 x64(1024×768)のスコア

 ただし、PCMark05のGraphicsスコアでは、ドックの接続時と非接続時でほとんど変わらない結果となった。下に示したGraphics Test Suitesの内訳(VPCZ219FJ/B)を見ると、3D系のテストではドック装着時のほうが高いスコアをマークしている一方、Graphics Memoryのテストではドック接続時のほうが大きくスコアを落としているのが分かる。

PCMark05/Graphics Test Suites(VPCZ219FJ/B)
テスト項目 ドックなし ドックあり 単位
Transparent Windows 680.6 621.6 Windows/s
Graphics Memory - 64 lines 742.8 230.8 FPS
Graphics Memory - 128 lines 669.7 227.1 FPS
WMV Video Playback 53.7 29.9 FPS
3D - Fill Rate Multi-Texturing 4625.1 11019.0 MTexels/s
3D - Polygon Throughput Multiple Lights 20.7 82.4 MTriangles/s
3D - Pixel Shader 193.4 229.4 FPS
3D - Vertex Shader 71.1 113.6 MVertices/s

 このテストはGPUの性能というよりもバスの性能を計測するテストで、メインメモリからグラフィックスメモリへデータを連続して転送するという内容だ。そのため、GPU切り替えの仕組みや、Light Peak技術でドックを外付けしたことによる帯域不足の影響が出たのだろう。

 レビューの前編でも触れたが、新型VAIO ZのLight Peak技術によるドック接続インタフェースの帯域は、PCI Express 2.0(5GT/s)でいえばx2相当(送受信でそれぞれ最大10Gbps)であり、通常GPUを接続するx16とはかなり差がある。

 ちなみに、同じようにGPU切り替えの仕組みを採用したNVIDIA Optimus Technology搭載ノートPCなどでも、Graphics Memoryのスコアは振るわない製品が多い。

 一方、PCMark Vantageでは傾向が異なり、こちらのGamingにおいては順当にドック接続時のほうがスコアを大きく伸ばした。

グラフィックステストではドック接続の影響も

 グラフィックスのパフォーマンスをより詳しく調べるため、総合的な3D描画性能を計測する3DMark06や、各種ゲームタイトルのベンチマークテストも走らせてみた。スコアは以下にまとめた通りだ。

左から、3DMark06 1.1.0(1366×768)のスコア、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコア、FINAL FANTASY XIV Official Benchmarkのスコア

左がストリートファイターIVベンチマーク(1280×720ドット/フルスクリーン)のスコア、右がColinMcRae:DiRT2 Demoのスコア

 まずは3DMark06だが、ドック接続時にスコアが大きく向上し、Radeon HD 6630M(1Gバイト)内蔵のVAIO S(SA)を完全に上回るスコアをマークした。

 FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3では、ドック接続時のほうが大幅にスコアが上がっているものの、ワンランク下のGPUを内蔵しているVAIO S(SA)に少し劣るスコアとなった。ストリートファイターIVベンチマークの低負荷設定(1280×720ドット)でもやはり少し低い。そして、ColinMcRae:DiRT2 Demoでは大きく差を付けられてしまった。

 パフォーマンス低下の主な原因が、外部GPUの描画結果を内蔵GPUのグラフィックスメモリを経由して利用するというGPU切り替えの仕組み上のものなのか、Light Peakの帯域で頭打ちになっているのかは分からないが、Radeon HD 6650M(1Gバイト)のフルパフォーマンスが出せないアプリケーションもある、ということは覚えておきたい。

 ちなみに、一部のテストではドックから直接映像を出力した場合も計測してみた。この場合は内蔵GPUの出力を使わず、外部GPUから直接出力されるためだ。結果は、ストリートファイターIVベンチマーク(高負荷設定)のみ17%ほどスコアがよくなったが、ColinMcRae:DiRT2 DemoやFINAL FANTASY XIV Official Benchmarkではほとんど変わらなかった。これらについてはLight Peakによる帯域の影響が大きそうだ。

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