このようにLionは、コンピューティングの未来の方向性をちょっと変え、iPadなどのポストPC機器時代のパソコンのあるべき姿を模索する非常にコンセプチュアルで奥が深いOSだ。それでいて、見た目はこれまでの「Snow Leopard」とあまり変わりがなく簡単に操作でき、しかもこれまで少しわずらわしく思っていた操作を快適にしてくれる。その上で、我々の作業の仕方や創作の仕方にも大きな変化をもたらすであろうOS――まさに未来を先取りした素晴らしいOSに仕上がっている。
大胆にOSの根本の仕組み部分にもメスを入れて作り替えているため、もしかしたら、これまでにインストールした常駐型ソフトと互換性の問題が生じることもあるかもしれない(筆者の場合は、どうもAirDisplayというアプリケーションが原因で、ちょっとしたトラブルに見舞われた)。また、Rosettaという技術が取り除かれたため、PowerPC用につくられたアプリケーションは、アイコンの上に×マークが表示され、利用ができなくなる。古いソフトをアップデートしないまま使い続けている人は、その点でも注意が必要だ。
アップルはこうしたソフトの互換性に関する情報を、日本時間の7月21日には、Webサイトにてリストで公開するようだ。実務上どうしてもRosettaのアプリケーション、Lionと相性が悪いアプリケーションを使わないといけない人はしょうがないが、そうでない人には、ぜひともこの未来のOSを体験してほしい。
もし、それほど作業環境をカスタマイズしていない人は、クリーンインストール(まっさらな状態からのインストール)をしたほうが、より快適にLionのメリットを味わえるかもしれない。もっと理想的なのは、あらかじめLionがインストールされたMacを購入し、そこから再スタートを切ることだろう。
筆者もメインマシンをLionにアップグレードするかたわらで、Lionをクリーンインストールしたマシンも触って比べているが、やはり余計なソフトが入っていないクリーンインストールのほうが圧倒的に快適だ。
それでは、この待望のLionはどうやって手に入れればいいのか。とても簡単だ。Lionにアップグレードする必要条件は、すでにMac OS X Snow Leopardがインストールされていること。この条件さえ整っていれば、わざわざ台風の中、外に出かける必要もない。
まずはiPhoto、iMovieなどのアプリケーションも、Lionの恩恵を受けるには最新版にしておく必要があるので、これらをSnow Leopardの「ソフトウェアアップデート」機能で最新の状態に更新しておく。
さらにアップルがSnow Leopard用に配布する「移行アシスタント」というソフトを入手し、こちらもあらかじめ実行しておく(執筆時点で筆者は入手していないので、どのような役割を果たすかは不明だ)。
ここまで準備が整ったらMac App Storeを起動し、OS X Lionのバナーをクリックして、2600円と書かれた部分をクリックして購入ボタンを押せば、すぐにダウンロードが始まり、インストールがスタートする。
そう、OS X Lionは、App Store経由でアップデートできる画期的なOSなのだ。万が一、システムが破損した場合でも、再びMac App Store経由で再ダウンロードができるので、心配性な人もOS入りのディスクを旅行先に持って行く必要がなくなる。
ダウンロードには少し時間がかかるが、インストールをしかけてしばらく放置しておけば、後は全自動でインストールが完了し、あなたのMacの画面に未来への扉が開かれることになる。
なお、ブロードバンド環境のない人はアップル直営店にてLionをダウンロードするサービスを提供するようだ。また8月後半には、Lionが入ったUSBメモリ(税込み6100円)も提供される(こちらも、事前にMac OS X Snow Leopardにアップデートしておかないと利用できない)。
OS X Lionは、アポロ11号が月に着陸したのと同じ7月20日の21時30分、世界123カ国に降り立った。ここからコンピューティングの新しい未来が広がることに、今はワクワクしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.