とっても安い新型「Mac mini」はどこまで速くなったのか新旧モデルを比較(2/2 ページ)

» 2011年08月05日 11時59分 公開
[後藤治(撮影:矢野渉),ITmedia]
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Sandy Bridgeで処理性能を格段に向上

 今回試用した評価機は、CPUにデュアルコアのCore i5-2415M(2.3GHz)を採用した下位モデル「MC815J/A」だ。旧モデルからCPUクロックは100MHz下がったが、同時処理可能なスレッド数は4に倍増し、Turbo Boost時は最大2.9GHzで動作する。3年前にリリースされたCore 2 Duo P8600と比べれば世代が違うわけで、パフォーマンスの大幅な向上が期待できる。なお、今回は比較対象として、旧Mac miniに加え、同じくSandy Bridge世代になったMacBook Airも並べている。

今回比較した機種
型番 新型Mac mini(MC815J/A) 旧型Mac mini(MC270J/A) 新型11インチ(MC968J/A) 新型13インチ(MC965J/A)
CPU 2.3GHz Core i5 2.4GHz Core 2 Duo 1.6GHz Core i5 1.7GHz Core i5
コア/スレッド 2/4 2/2 2/4 2/4
CPU TDP 35W(GPU含む) 25W 17W(GPU含む) 17W(GPU含む)
メモリ 2Gバイト(1333MHz DDR3) 2Gバイト(1066MHz DDR3) 2Gバイト(1333MHz DDR3) 4Gバイト(1333MHz DDR3)
グラフィックス Intel HD Graphics 3000 NVIDIA GeForce 320M Intel HD Graphics 3000 Intel HD Graphics 3000
ストレージ 500GB HDD 320GB HDD 64GB SSD 128GB SSD

 まずはOS X Lion環境で、CINEBENCH R10とCINEBENCH R11.5によるレンダリングと、iTunesを使ってエンコードに要した時間を測定した。

 CINEBENCH R10のMultiple CPUスコアは8712で、旧モデルに比べて約1.6倍の性能向上が見られた。新旧ともにデュアルコアCPUを採用し、クロックは旧モデルのほうが高いが、Core i5-2415MがサポートするHyper-Threadingによる差が現れている。一方、OpenGLのスコアは、新型の5211に対して4827とほとんど差はない。CINEBENCH R11.5も同様の傾向で、CPUのスコアで1.9倍弱の向上が見られたのに対し、OpenGLはほとんど変わらない結果だった。

 iTunesによるエンコード時間の実測値も見ていこう。再生時間10分のApple LosslessファイルをAACへ変換する際に要した時間は、旧モデルの20.4秒に対して12.6秒。再生時間1分の動画を「iPod/iPhone用」に変換する時間も73.6秒から57.4秒と改善されている。Sandy Bridge世代のシステムを採用したことにより、CPUを使った処理を大幅に短縮できそうだ。

CINEBENCH R10(画面=左)。CINEBENCH 11.5(画面=中央)。iTunesエンコードテスト(画面=右)

Windowsマシンとしての実力は?

CPU-Zの画面。CPUはCore i5-2415Mとなっている

 続いてMac miniにWindows 7をインストールし、定番ベンチマークテストを実施した。PCMark05、PCMark Vantage、3DMark06、3DMark Vantage、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3、FINAL FANTASY XIV Official Benchmarkの結果を新旧モデルで比較している。

 まずは、Windowsエクスペリエンスインデックスの結果を見よう。CPUのスコアは6.9と旧モデルに比べて0.9ポイントも上昇し、そのほかのスコアも軒並み上回っている。旧モデルでWindows 7を使用したときも問題なく利用できたが、当然ながら新モデルも快適にWindows 7を利用できる性能を備えている。

新モデル「MC815J/A」(画面=左)と旧モデル「MC270J/A」(画面=右)でWindowsエクスペリエンスインデックスを実行した結果

 PCMark05は、特にCPUとメモリのスコアが大きく向上し、旧モデルと比較して、CPUは約1.4倍、メモリは約1.9倍のスコアとなった。アップルのいう「(旧モデルに比べて)最大2倍高速化」というたい文句は、上位モデルとの比較と思われるが、下位モデルで比べても明確な性能差が見てとれる。ちなみに、TDPが17ワットのMacBook Airと比べても良好な結果を残しているが、CPUクロックほどの差はないようだ。PCMark Vantageの結果も同様の傾向を示し、総合的に見て1.3倍ほど向上しているのが分かる。ただ、こちらはストレージの性能が強く影響するため、SSDを採用するMacBook Airのスコアが飛び抜けている。

 DirectX 9.0c世代の3D描画性能テストである3DMark06では、逆にGeForce 320Mを搭載する旧モデルが逆転した。とはいえ、新モデルのCPUに内蔵されるIntel HD Graphics 3000との差がそれほどあるわけではない。また、CPUのスコアを個別に見ると、旧モデルの2121に対して新モデルは3137と大きく上回っている。

 3DMark VantageやFINAL FANTASYの公式ベンチマークも同様の傾向を示しており、グラフィックス性能に関してはわずかに旧モデルのほうが上のようだ。もっとも、両モデルともに3Dゲームが快適に動くわけでもなく、Mac miniの位置付けからして、このあたりの性能差がユーザー体験に与える影響はほとんどないと思われる。それでも「グラフィックス性能は少しでも高いほうがいい」と考える人は、AMD Radeon HD 6630Mを内蔵する上位モデルを選ぶといいだろう。

PCMark05(画面=左)とPCMark Vantage(画面=右)の結果

3DMark06(画面=左)と3DMarkVantage(画面=右)の結果

FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3(画面=左)とFINAL FANTASY XIV Official Benchmark(画面=右)の結果


 以上、新旧Mac miniを比較しながら、5万2800円で購入できる下位モデルを見てきた。テレビサイドのAVマシンや自室に置く省スペースPCとして、必要十分以上の性能と機能を備えているという印象は、2010年発売の旧モデルと変わらないものの、最新アーキテクチャに刷新したことで、ますます魅力的なマシンに仕上がっている。今後増えていくと思われるThunderbolt対応製品を利用できるのもポイントだろう。

 SuperDriveを省いた点は賛否両論あるが(個人的には、AirはともかくデスクトップのMac miniでは時期尚早だと思う)、すでに光学ドライブを搭載するPCを持っていれば、ほとんどのケースでリモートディスクを利用できるし、アップル自体もiTunes StoreやMac App Storeといった光学ドライブを必要としないサービスを築きつつある。

 MacBook Airが8万4800円という驚異的な価格に引き下げられたことで、エントリー機としてはMac miniと競合してしまう部分もあるが、現在はIPSパネルを採用した23型クラスのフルHD液晶も非常に安価になっており、Mac miniとあわせて購入しても8万4800円以内に収まるはずだ。持ち運ぶ必要がまったくないのであれば、5万2800円で購入できるMac miniは「初めてのOS X Lionマシン」にうってつけのモデルといえる。

「MacBook Air」をApple Storeで購入する
8万4800円から購入可能になったスリムノート。

「Mac mini」をApple Storeで購入する
Lion搭載。価格は5万2800円〜。


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