DOXboxのドキュメントは、wikiにまとめられてる。ここの記述によると、DOSBoxで実現する仮想PC(正確には、DOSBoxはx86エミュレータの上でDOSを動かしている)に実装するCPUは、インテルの80286、Intel 386、Intel 486に相当し、リアルモードとプロテクトモードをサポートする。実際に、DOS環境でCPUの種類をチェックするユーティリティ「CHKCPU」を、aDosBoxを導入したGalaxy S(NTTドコモのSC-02B、シングルコアARM Cortex A8を1GHzで駆動)で走らせたところ、Cyrixの「Cx486DLC リアルモード」として認識された。
DOSBoxの環境ではCPUの動作クロックはDOSBoxが用意する「CPU Cycle」で変更できる。ただ、性能に制約のあるAndroidデバイスでCPU Cycleを上げすぎると、動きの多い描画の“コマ落ち”や音声の音飛びが発生する。逆に、DOS時代の想定よりデバイスの動作クロックが速すぎる場合は、CPU Cycleの値を下げることもある。CPUを速くしたいけれどコマ落ちが激しいときは、DOSBoxが用意する「Frameskip」設定で意図的に描画するフレームを間引くことも可能だ。なお、DOSBoxでは、サウンドカードとしてSoundBlasterをエミュレートする。この使用するアドレスやIRQなどもSETコマンドで設定できる。
タッチパネル操作が前提で、物理キーボードを持たないモデルが圧倒的に多いAndroidデバイスで、DOSを使うときに困ってしまうのがキーボード操作が前提のユーザーインタフェースだ。DOS時代のゲームでもマウス操作を大幅に取り入れたタイトルは多いが、コマンドプロンプトではキーによる文字入力が必須になる。
aDosBoxもAnDOSBoxも、デバイスが用意するソフトウェアキーボードを利用するほか、ゲームで使えるソフトウェアゲームパッドを“自前で”用意する。ポインティングデバイスは、タッチパネルのスライドやタップで代用する。こちらでは、左クリックと右クリックの認識、マウスカーソルの移動速度などの設定が可能だ。aDosBoxでは、デバイスに搭載する加速度センサーも入力デバイスとして利用できる設定項目を備えている。
ここで紹介した、CPU CycleやFrameskipの設定、ソフトウェアキーボードやソフトウェアゲームパッドといった、DOSBoxを利用するためのメニューやソフトウェアインタフェース、設定項目として何を用意し、どれだけ使いやすいのかが、aDosBoxとAnDOSBoxの違いになる(それぞれのAndroidアプリケーションで設定できる項目は、すべてDOSBoxの設定ファイル“dosbox.conf”を編集することが可能だが)。
ゲームプレイにおいて、ソフトウェアキーボードでAlt、Ctrl、Shiftキーとの同時押しが利用できるAnDOSBoxが使いやすい、という意見も多いが、その一方で加速度センサーが利用でき、なんといっても無料のaDosBoxを支持するユーザーも少なくない(AnDOSBoxの有料化には、いろいろと意見もあるようだが、ここでは言及しない)。CPU CycleやFrameskip、ソフトウェアゲームパッドのボタンマッピングのメニューは両者で利用できる。ただし、ゲームパッドとしてのレイアウトは、6個のボタンが画面の上下に3個ずつ並ぶAnDOSBoxより、カーソルキーも備えたaDosBoxが使いやすい。
以上のように、ソフトウェアキーボードが前提のデバイスでは、すばやいキー動作が求められるアクション系のゲームは困難かもしれないが、ウォーゲームのような非リアルタイム制のタイトルなら、十分プレイが可能だ。
終戦まで戦い抜くまで相当の時間を要する「Pacific War」のような太平洋戦争全般を扱う戦略級のウォーゲームはもとより、1週間程度の作戦を再現する「Carrires at War」のような作戦級、1〜2時間の水上戦闘を扱う「Action Station!」といった戦術級でも、いざゲームを始めるにはまとまった時間が欲しい。それなのに、やたら忙しくなってしまった現代人がゲームのためにPCの前に座っているの時間を確保するのはまず難しい。通勤時間やちょっとした空き時間、寝る前のひとときにAndroidの携帯デバイスを懐からぬっと取り出して、ちまちまと戦い続けるのが、現代ウォーゲーマーの生きる道だ。
以上、Android携帯端末でDOSゲームを動かす話をしてきたが、「いまさら、DOSゲームでもないでしょう!」という声には、「DOS世代を超えるウォーゲームは、いまだなし!!」という答えを返してみたりする。
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