NECのマザーファクトリー「米沢事業場」、国内メーカーのPCが良品質である理由それなら、NECは「米沢モデル」ですね(2/3 ページ)

» 2011年09月28日 21時00分 公開
[岩城俊介,ITmedia]

トヨタ生産方式を取り入れた「パソコン版トヨタ生産方式」

 これを支える生産体制の仕組みがトヨタ自動車の生産方式をクルマよりライフサイクルの短いPC版に改変した「パソコン版トヨタ生産方式」にある。

 2000年当時、同社経営諮問委員会の一員として名を連ねていた張富士夫トヨタ自動車社長(当時)らのアドバイスを取り入れ、IT技術で武装した高効率のセル生産体制やRFIDかんばんシステム/ジャストインタイム(JIT)生産システムを構築した。組み立て、検査、梱包までを3人〜5人で完結する小規模のセルラインにより、作業の流れとリズムを重視し、無理とムダが生じない体制で生産性を上げる仕組みだ。

 「国内と海外生産、人件費単価は確かに違う。ただ、独自に工夫したセル方式でさまざまなロスをなくすことで生産効率が格段に上がり、結果、トータルコストは大きく下げられます。もちろん高品質を保ちつつ、市場のニーズに合わせた短納期も実現できます」(NECパーソナルコンピュータ プロセス改革推進部の若月新一統括マネージャ)

photophotophoto 組み立て、検査、梱包まで3〜5人(リレー方式と呼ぶ、製造需要などに応じて可変するスタイルも採用)で完結するセル生産方式でPCが製造される。少人数で責任を持つセル生産方式なだけに、1台1台が手際よく効率よく、かつ丁寧に製造できるのが大きな強みだ。ロゴやシール(Windows 7やCore i5など)の種類や位置が合っているかどうかをチェックする「自動外観検査機」。上に一眼レフカメラがあり、撮影して画像認識ツールでチェックする(写真=右)
photophotophoto RFIDによるかんばん(電子式チェックシートのようなもの)システムを採用するため、RFIDゲートを通るだけで搬入部品(のコンテナ)数を瞬時にカウントし(写真=右)、担当セルで必要な部品がどこにあり、それが何個必要かが点灯して示される(写真=中央)。なお、電子機器の敵である静電気を発生させないよう、湿度は45%以上に保たれる。万一下回ったら自動的に加湿器が作動する(写真=右)
photophotophoto 担当セルで1台を組み上げ、梱包し(写真=左)、搬送地域別にまとめられ(写真=中央)、階下の搬出口より30分サイクルで順次出荷される。床の白線内がコンテナ1つに入る量。「たまったら積む。わかりやすいですよね。工場はIT武装していますが、要はこれでよいという部分は意外にアナログスタイルなところもあります。もちろん30分サイクルでちょうど出荷するよう、裏側でIT技術はガンガン働いています」と若月統括マネージャー(写真=右)

 NEC米沢事業場は、月に30万台もPCを生産する総合拠点・PC工場にしてはかなり小さな印象だ。それは長期に渡り構築してきた生産システムにより、製造時間の効率化で短縮させつつ、製造した製品が工場にとどまること──在庫がほとんどないためという。

 部材は、RFIDでその情報が一元管理されている。生産セルラインに設置されたアンテナの近くに生産指示が記録されたRFIDカードを置くだけで、必要数の部品(ネジやシールなども含む)や行程の生産指示内容の詳細が作業モニターに表示され、ラインに付いた作業スタッフは迷うことなく(イコール ロスなく)作業できる。各ラインや仕入れ部門それぞれで消費した部材を消費した分だけそれぞれが仕入れる“かんばん方式”により、部材の過剰な在庫を抱えずに済む。同社はこれを30分サイクルで調達処理を行っている。

 また、セルラインの担当人数を調整するリレー方式と呼ぶフォーメーションも製造需要数が日々変動するPCを効率よく製造するのに合致するスタイルであり、海外サプライヤーより仕入れる部材コストもLenovoグループのワールドワイド調達力(イコール 低コストでの仕入れ)により、今後じわじわ効果が出てくるものと思われる。

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