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» 2011年10月06日 18時30分 UPDATE

オフィス機器購入ガイド:ビジネスプリンタの選び方――“省電力”で“安い”インクジェットプリンタ編 (1/3)

全国的な節電意識の高まりにより、オフィス環境でも注目を集めているのが消費電力の低さでページプリンタを上回るインクジェットプリンタだ。まずはビジネス利用に向いたインクジェットプリンタの条件から考えてみたい。

[小川夏樹,ITmedia]

→特集:2011年秋冬のビジネスプリンタ

→前回記事:ビジネスプリンタの選び方――“安いのに多機能”がうれしい複合機編

ビジネス向けのインクジェットプリンタとは?

 これまではSOHO/SMB向けのページプリンタ/複合機を取り上げてきた。これらは印刷方式がレーザーもしくはLEDの製品で、現状においてビジネスプリンタの主流といえる。

 さて今回は視点を変えて、インクジェット方式のビジネス向けプリンタをチェックしたい。インクジェット方式は個人/家庭向けのプリンタ/複合機で標準的な印刷方式だ。一般家庭において、年賀状などのはがき印刷や、高品位な写真印刷、そしてWebページの印刷と、さまざまな用途で使われている。

 もちろん、こうした個人/家庭向けのモデルをビジネスに転用するという手もあるが、昨今はビジネス向けに開発されたインクジェットプリンタも増えてきた。それでは、ビジネス向けのインクジェットプリンタは、一体何が違うのだろうか。

最大のメリットは低消費電力

 レーザー/LED方式のページプリンタでも省電力化が進んでいるが、印刷の工程でレーザーやLEDによって印刷イメージをドラムに投影したり定着器を高温にしてトナーを融解させて用紙に定着させるといった処理が必要だ。こうした処理を行っているときの消費電力は1000ワットに上ることもある。

 これに対してインクジェットプリンタの消費電力は、印刷時でも十数〜三十数ワット程度と圧倒的に省電力だ。大量印刷時の印刷速度や給紙容量ではレーザー/LED方式のページプリンタが優位に立つが、声高に節電が叫ばれるようになった最近では、低消費電力なインクジェット方式が魅力を大きく高めているといえる。

普通紙印刷の品質が高い顔料インクを積極的に採用

tm_1107_office5_01.jpg 顔料インクは染料インクに比べて、用紙上で染み込みにくく、紙の表面に付着するため、にじみにくく、保存性が高い(画像はエプソン提供)

 ビジネス向けインクジェットプリンタでは、インクの種類(染料/顔料)にも注目したい。例えば、写真画質をウリにする個人/家庭向けインクジェットプリンタの主力製品を見ると、エプソンだったらインクの全色(6色)に染料インクを採用している。キヤノンは、染料カラーインクを搭載しつつ、それに染料黒インクと顔料黒インクの2つを搭載して用紙ごとに使い分ける、といった仕様だ。

 いずれにせよ、個人/家庭向けモデルでは光沢ある写真用紙に色鮮やかな画像を印刷するのに有利な染料インク採用製品が多い。しかし、ビジネス向けのインクジェットプリンタは、顔料インクの採用が前提となる。

 その理由は簡単。改善が進んでいるとはいえ、染料インクはにじみや水ぬれに弱いのだ。対する顔料インクはにじみが少なく、水ぬれにもめっぽう強い。にじみが少ないから、普通紙に印刷してもレーザー/LED方式に見劣りしないくっきりとした文字が打てるし、多少水にぬれたくらいではインクが染み出すこともない。印刷した文書にマーカーで線を引いてもインクがにじまないのも特徴だ。こうした点を考慮すると、普通紙への高品位で高耐久な印刷が求められるビジネスシーンでは、顔料インクを採用したインクジェットプリンタが優位に立つ。

 こうしたビジネス向けインクジェットプリンタは、カラーも黒も全色顔料インクという製品が少なくないが、中にはテキスト印刷専用の顔料黒インクを搭載し、ほかの色が染料インクといった製品も見られる。この場合、モノクロ文書はよいとして、カラーで印刷した場合はにじみが生じやすい点に注意したい。ただし、染料カラーインクによって、写真用紙へのフォトプリントも高品位にこなせることで、幅広いシーンでの活用を提案している機種もある。

給紙容量は控えめな製品が多いが、大容量給紙が可能なものも

tm_1107_office5_02.jpg ビジネス向けインクジェットプリンタでも、大容量の給紙に対応した製品が徐々に増えている。写真は、250枚給紙できる前面カセットを標準で2段備えたエプソンの「PX-1200」

 オフィスでの高速・大量印刷という点では、ページプリンタに比べて、ビジネス向けインクジェットプリンタは不利になる。

 印刷速度は高速なものも出てきているが、もう1つ注意したいのが給紙枚数だ。給紙機構が個人/家庭向けモデルと同様、給紙枚数が少ない後部トレイしかない製品もあり、ページプリンタ並にA4用紙を500枚程度も給紙カセットにセットできる製品となると、数えるほどしかない。

 とはいえ、最近のモデルでは給紙機構を強化した製品も増えつつあり、給紙カセットを複数段設けたり、給紙カセット以外にも多目的トレイを設けるなどして給紙可能な用紙種別と枚数を強化しているものも見られる。

 製品選びの際には、プリンタの使用環境において、どれくらいのボリュームを毎日印刷するのか、複数の用紙サイズ/種類を同時にセットできることが必要かどうかを考慮すべきだろう。

インクカートリッジ1個あたりの印刷可能枚数

tm_1107_office5_03.jpg 大容量インクカートリッジを用意した製品もある。写真はエプソンのICBK90L(ブラック)で、後述の「PX-B700」に対応する

 レーザーやLED方式のページプリンタとは異なり、インクジェットプリンタではインクカートリッジ1本で印刷できる枚数がそれほど多くない点も覚えておきたい。

 多くの製品ではA4用紙で200ページ前後印刷するとインクが空になってしまうだろう。A4用紙で500ページ以上の印刷が可能な大容量インクカートリッジを搭載したモデルもあるが、全体的には印刷可能なページ数がまだまだ少ない傾向にある。

 レーザー/LEDプリンタでは1000枚単位での印刷を想定しているため、200枚程度印刷する度にインク交換の手間がかかってしまうのは少々面倒かもしれない。ただし、インクカートリッジの単価はページプリンタのトナーに比べてかなり安価なので、印刷枚数が多くない環境ではそのメリットも得られるだろう。

 もしオプションとして大容量インクカートリッジが用意されているのであれば、それをセットすることでインク交換の回数が減り、印刷1枚あたりのインクコストも低減できることは覚えておきたい。


 最後に、特集の第1回にも掲載したが、印刷方式の違いと特徴を下表にまとめた。

印刷方式の違い
印刷方式 レーザー/LED方式 インクジェット方式
メリット 印刷速度が速い(特に大量部数)
普通紙文書の印刷品質が高い
給紙容量が多い
消耗品の交換頻度が低い
ランニングコストは比較的低い
本体の導入コストが低い
消耗品の単価が安く、入手しやすい
設置面積が小さい
静粛性が高い
消費電力が低い
専用紙への写真印刷が高画質

 以上を踏まえてビジネス向けのインクジェットプリンタをピックアップしたので、カテゴリー(A4単機能/複合機、A3単機能/複合機)とメーカーごとに分類して紹介しよう。今回はA4/A3単機能機、次回はA4/A3複合機を紹介する。

安価なインクジェットの導入コストに注目

 さて、本特集での機種選出ポイントを確認しておこう。今回のインクジェットプリンタでも、過去のページプリンタと同様、以下の3点に該当する注目機種を取り上げる。

1. SOHO/SMB向けの製品であること

2. 実売価格が10万円を切ること

3. 2010年以降に発表されていること



 もっとも、インクジェットプリンタはレーザー/LEDプリンタと比較して、本体価格が安価に設定されていることに注目したい。例えば、最上位クラスですら「実売価格が10万円を切ること」を余裕でクリアするモデルばかりだ。

 導入コストに注目すると、ビジネス向けインクジェットプリンタはページプリンタを圧倒する安さといえる(ランニングコストでは不利になるが)。日常業務で印刷枚数がそう多くなければ、導入コストが低いインクジェットプリンタを真っ先に考えるというのもアリだ。

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