“Ultrabook”注目モデルの思わぬ実力とは?――「ZENBOOK」徹底検証(後編)性能、発熱、騒音、駆動時間を比較(4/5 ページ)

» 2011年11月16日 00時00分 公開
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動作時のボディ表面温度は?

 薄型軽量のアルミボディにハイスペックを詰め込んだZENBOOKでは、動作時の発熱やファンノイズも重要なチェックポイントだ。

 UX21E-KX128とUX31E-RY256の放熱機構はほとんど共通化されている。CPUとチップセットの発熱をヒートパイプで接続した薄型ファンによって放熱する仕組みだ。デザインの美しさを保つためからか、通風口は液晶ヒンジ下部の目立たない場所にあり、ここで吸気と排気を行う。さらにUX31E-RY256では、底面の奥に吸気口を設け、放熱を助けている。熱伝導率の高いアルミボディも放熱面ではプラスに働くだろう。

 ただし、いずれも薄型ボディでエアフローのための空間が狭いうえ、排気口にヒンジが重なっているため、高負荷時にきちんと熱を逃がせるのかが気になるところだ。また、高負荷時にアルミボディがどれだけ熱を帯びるのかも確認しておきたい。

UX21E-KX128(写真=左)とUX31E-RY256(写真=右)の通風口。どちらも液晶ヒンジの下部へ隠れるように、通風口が用意されている。横1列に並んだ細かいスリットで吸気と排気を行う

UX21E-KX128(写真=左)とUX31E-RY256(写真=右)の底面。UX31E-RY256のみ、ボディの奥に吸気口が設けられている。UX21E-KX128の両側面にあるスリットは、ステレオスピーカーだ

UX21E-KX128(写真=左)とUX31E-RY256(写真=中央)の内部構造。いずれも大部分がリチウムポリマーバッテリーで占められている。基板はキーボードの奥にまとめられており、CPUとチップセットの発熱をヒートパイプで接続した薄型ファンによって放熱する仕組みだ。なお、底面のネジは一般的なものではなく、ヘックスローブを採用する(写真=右)。保証対象外の行為だが、T5のヘックスローブドライバーで開けることができた

 ここでは2機種のZENBOOKを樹脂製のデスクに離して設置し、ボディ各部で最も高温になる場所の表面温度を放射温度計で計測してみた。計測したのは、Windows 7の起動から30分間アイドル状態で放置した場合と、YouTubeで480pの動画を30分間再生し続けた場合、そしてシステムに高い負荷がかかる3DMark Vantage(Entry設定)を30分間実行した場合の3パターンだ。

 2機種にはACアダプタをつなぎ、電源プランはPower4Gear High Performanceにセットし、液晶ディスプレイの輝度は最大、無線LAN機能はオンに統一している。テスト時の室温は約22度だった。

 テスト結果は似た傾向だ。アイドル時や低負荷時は通風口付近が少し発熱する程度で、操作時に手が触れるパームレストやタッチパッドは低い温度で保たれていた。高負荷の状態が続くと、通風口付近を中心に温度が上昇し、キーボードの上部もかなり発熱するのが気になったが、それでもパームレストやタッチパッドは比較的クールで快適だ。これらの下に内蔵されているのはバッテリーパックで、CPUなどの熱源から遠いため、発熱を感じにくい。

 2機種の比較では、ボディが小さく、放熱のためのスペースが狭いUX21E-KX128のほうがアイドル時や低負荷時は全体に熱を帯びやすかった。しかし、高負荷時では放熱設計に余裕があるはずのUX31E-RY256のほうが高温になってしまった。この理由については、UX31E-RY256のほうが、ファンが高速回転しにくいことが関係しているようだ(詳細は後述)。

起動後30分間アイドル状態にした場合のボディ表面温度(グラフ=左)。YouTubeで480p動画を30分間再生し続けた低負荷時のボディ表面温度(グラフ=中央)。3DMark Vantage/Entryを30分間実行し続けた高負荷時のボディ表面温度(グラフ=右)

騒音レベルは発熱にも関係

 発熱テストと同時に、動作時の騒音レベルも調べてみた。騒音計のマイクは本体の手前5センチと近い位置に設置した。室温は約22度、環境騒音は約28デシベルで、周囲の雑音がほとんど聞こえない静かな環境で計測している。計測したのは、アイドル時、YouTubeでの480p動画再生時、3DMark Vantage CPU Test実行時、3DMark Vantage Graphics Test実行時の4パターンだ。

動作時の騒音レベル

 テスト結果は低負荷時と高負荷時ではっきり傾向が分かれた。アイドル時はファンが回転せず(測定不能)、低負荷時でも耳をすましてファンのかすかな回転音が聞こえる程度だ。

 そこからシステムへの負荷を高めていくと、ファンの回転数が段階的に上がり、ピーク時にはUX21E-KX128で43.2デシベル、UX31E-RY256で37.2デシベルを記録した。この高速回転時には、ファンの風切り音にキーンという高い音がかすかに混じり、特にUX21E-KX128では気になった。

 ただし、全体的にUX21E-KX128のほうがファンが勢いよく回る半面、高負荷時では熱が急激に上がることはなかった。UX31E-RY256はファンノイズが大きくない代わりに、高負荷時に熱がこもりやすい印象だ。前述の通り、UX31E-RY256は発熱によりパフォーマンスが抑えられる傾向も散見され、薄型軽量モバイルノートPCで性能、放熱、騒音のバランスを取ることの難しさがかいま見られる。

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